表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/13

12 シアも欲しい

誤字・脱字報告ありがとうございます。

こんな風に直すんだ、と、感心してしまいました。

 アリアの足輪をはずして、魔力を解放して、シロがこれを制御する。

あっけないほど簡単にできたことにシアは衝撃を受けていた。

私の幼少時代の努力はなんだったのか、アリアを処分されないように隠し守ってきた日々は毎日が怖かった。

あの力が公になり、危険と判断されれば確実に【流される】。

【流す】【流される】【流せ】これはサムソでは【殺す】【殺される】【殺せ】という意味になる。

サムソの民は墓を持たない。王都ならば海へ、ブラスト村ならば浄化の森にある湖に水葬される。

罪人は薬を処方され、深く眠ったまま浄化の湖に沈められる。処刑人とて人だ。首をはねるなどの

残虐は行為を繰り返していれば心を病んでしまう。

女王国になった時に殺してから流すのではなく、永遠の眠りにつかせるというやりかたがとられるようになった。罪人は3回に分けて毒薬を与えられる。

最初は軽い薬、気が大きくなり罪状を自分から話し始める。

2度目は眠りにつく薬、眠くて眠くてたまらず気力を奪う。

最後は2度と目覚めぬ薬、これが投与されればもう目覚めることはない。

重りをつけた衣装を着せられ、海へ湖へ沈められる。

意識がないままそのまま永遠の眠りにつくのだった。

浄化の湖は特別な分解力があり、遺体も汚物もゴミもすべてゆっくりとではあるが溶かして分解し無に返す。

浄化の湖の水はブラスト村で生活を助ける為にも使われている。

この水には酵素が含まれており、分解すればするほど酵素は濃くなっていく。

濃さを見る目安は色だ。ごく薄い黄色のうちは洗濯に使われる。1日つけ置きすればたいていの汚れは落ちるので、清水でゆすいで乾かせばいい。もう少し濃くなってくると緑がかってくるのでこのあたりの濃さではコルタの葉の葉脈を取り出すのに使われる。2日ほどつけ置くとやわらかな部分が分解されて葉脈だけが残る。

清水ですすいで乾かせば、コルタの葉はふわりとやわらかな布のように使えるので、そのまま重ねてトイレに使うし食器を洗って拭いたり、掃除の雑巾に、重ねて縫っておむつにもなる。

洗濯もできるので軽い汚れのものは洗って使われる。

とれないほど汚れたものは下水に流される。

下水の最後には浄化の池もしくは湖があり分解されてきれいになった水は海に戻っていく。


とりとめのない思考に捕らわれてぼんやりしてしまったシアにアリアが声をかけた。


「ごはんだよ、スープができた」


「どしたの、ぼんやりして」


「ああ、シロのような精霊が私もほしいなと思っていたんだ。」


考えてはなかったことが言葉になってでてきた。


シアはああそうだ、わたしにもシロのような存在がいれば力の御しやすくなる。

そうだ自分の精霊が欲しい。切実に思った。

シアはアリアの今の状況がうらやましいのだと気がつく。


「シロに聞いてみよう、答えてくれるかわからないが」


豪華ではないが、心のこもった夕食はシアをなごませる。

野菜を煮込んだスープとパンと果物、今日はりんごがシロ用にも用意されている。


「シロ、聞きたいことがあるんだが、いいかな」


食事のついでを装って尋ねてみる。

シロは器用に四つ切のりんごをしゃりしゃりと前足でつかんでかじっている。

口をもぐもぐしながら頷いた。


「精霊、いやシロのような存在を私もそばにおきたいのだが可能だろうか」


シロは少し考えているように見える。

口の中のリンゴを飲み込むと答えた。


「うむ、我がなぜアリアのもとにきたのかと考えてみると可能かもしれん、

まず潤沢な魔力の持ち主であることが絶対条件だがそれは、問題ないだろう。

しかしなぜひかれたかというと、心からの叫びに呼ばれたな」


口調が学者風になっている。

器用なやつだと思ったがそこには追及せず、聞いてみる。


「心からの叫びとはどういうことだろう」


「ふむ、助けて、わたしを助けてという呼びかけがほんとうに切実で心ひかれたな」


それはそうだろう、5才の子供がだれもいない森にばされて心細くないわけはない。

助けを必死に求めただろう。


「私も欲しい、切実に欲しい。森で呼べば答えてくれるのだろうか」


「それはどうかわからない。他にもいるとは思うが呼びかけに答えるかどうかはわからない。

幼子ほどの切実は気持ちをもてるのかな?」


「心から願えば答えてくれる精霊がいるかもしれないということかな」


「わからん、そんなもの好きがあまたいるとは思わんほうがいいと思うがな」


「森に行って願ってみよう。得られるものならばぜひ欲しい」


「まあやってみるのもいいさ、二人くらいなら我でもめんどうみられるぞ。

アリアの魔力はシアの魔力もかなり混ざっているからできると思うぞ」


混ざっている? そんなことは考えたことはなかったがめんどうをみるうちに

混ざっていても不思議はないが。


「どのくらいかな?パーセントであらわされるのかな」


「ふむ、難しいな常に変動しているしシアのほうにもアリアの魔力が入っているから。

もともと二人の魔力で我は育ったといえる。

心を明け渡して我に魔力を送ってみるがいいさ、預かってやろう。

渡すときは二人の魔力が混ざったままになるが、それでもよければ」


アリアはとてもうれしそうに笑った。


「シアとおそろいなのうれしい」


いや、おそろいというと意味がかなり違うが。


「二人の魔力を備蓄して、欲しい時にはもらえる、そう思っていいのかな」


「まあそういうことだな、少しよこせ、試してみよう」


夕食を食べ終わり、食器を洗って片付けるとアリアがいつもレース編みをしている

テーブルに移動した。

アリアお手製のお茶を入れて、シアとアリアは向かいあわせに座る。

いつもの席に落ち着くとシロがシアのひざに飛び乗った。


「いつも抑えている魔力を開放するがいいぞ、吸収する。」


シロがとても尊大に言った。

シアは常に魔力を抑えている。今は無意識にやるほど慣れているが幼少時はとても苦労した。

心と体の緊張を解いていく。

開放は久しぶりだなと思いながら。

体の中を光が駆け抜けるような感覚に襲われる。

火花が散るように魔力が飛び交い体中に広がる。

ふと楽になった。シロが吸収している。

瞬時に効果は表れた。

魔力を抑えるための緊張から解き放たれる。

生まれてから腕輪で大人になってからは自分で、抑えていた魔力が落ち着いていく初めての感覚。

膝の上のシロを見ると少し大きくなり、青みがかった白の毛並みが赤が入ったのか紫になっている。

白い毛並みの先端部分が淡い紫に色づき、不思議な色合いになっている。


「半分ほど吸収した、もう少しいくか?」


「大丈夫なのか?気分が悪くなったりしないのか?」


「心配してくれるのか、問題ない、アリアに比べれば自分でコントロール出来ている分楽だな。」


「そうなのか、今くらいで調整してくれると助かる。

返してほしい時はそう言えばいいのかな」


「そうだな、パーセントでいくか、50パーセント、80パーセント、150パーセント

そんな感じでどうだ?」


「150パーセントとは、今の魔力に上乗せすることもできるのか?」


「ふむ、出来るぞ。もともと本人の魔力を預かるだけだから魔力過多の弊害はないと思うぞ」


それはびっくりだ。

多い魔力を預かってくれるだけではなく、多量に欲しい時は返してくれる。

しかも上乗せも可能とは便利すぎる。

しかし気づく。

ますます化け物になるな。

これはおおやけには出来ない。

完全な危険物の誕生だ。


「アリアこのことは二人だけの秘密だよ」


会話を見守っていたアリアに言う。


「おそろいは内緒なのね」


そんな可愛らしい話ではないのだが、まあ間違いではない。

そしてもうひとつの問題にも気がついた。

シアのいる所にシロが必須、アリアにとってコントローラのシロは必須。

つまりは常にアリアとシロを連れ歩かなければこのやりかたは成立しない。

王都へアリアを連れて行きお披露目というか女王家に挨拶をと思っていたが

ずっと連れ歩くのは無理がある。

新な問題にシアは頭を抱えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ