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天華夢想 男は新たな世界で世界一を目指す  作者: 鮪愛好家
連鎖する決闘
9/14

戦いの後、そして黒歴史

ここから新章突入です。

◇松江城 城内


ククリからもらった権能で大内軍を全滅させてから、その残党狩りを行った。

水龍の被害が殆どなかった城下町には、大内軍の戦闘要員は殆ど残っていなかった。

残っていた者も、既に戦意を喪失していた為に、すぐに投降してくれた。


残党狩りを終えてから、城下町の住人には尼子家の勝利と、臨時作業員募集の告知を城下町の住民へ行う。

取り敢えずの後処理を終えた、俺たち尼子家の面々は松江城の城内にいた。


城内を軽く確認したが、建物の中は水浸しの上に破損も酷かった。

なので外に陣幕を張り、簡易陣地を作成した。


今はその陣内で今後の行動指針を伝える会議を行っている。

会議には尼子家、それに今回集まってくれた旧尼子家の残党だった家の面々。

最後に新たに傘下に入った京極家の代表者として、決闘での京極家副将、若宮わかみや 勝義まさよしがここに居る。


「京極家が転封てんぽうですか?」


「ああ。これから尼子家は、京極家の領土になっていた宍道湖南方の高瀬城に暫定の本拠地を置く。これは次の決闘相手の三刀屋家に最も近く、今後の戦略的にも有用な城だから選んだ。異論は認めん。」


今回の決闘で吸収した京極家の領土は、一度解体して再編するという説明を行った。

再編後は、今回活躍した家臣に領地を任せる。

要は皆で引っ越しだ。

今回は暫定のモノではあるが、京極家の人間は基本的に全員移転。

この松江城を中心とした形の、転封になると説明した。


「高瀬城の京極軍は解体後に再編。半分を松江によこす。今後京極家はここ、松江を中心に復興と防衛を中心に行ってもらう。」


「それは、あんまりにございます!」


現在、皆で松江城に居るのだが、城の状態は正直言って使い物になる状態じゃない。

あっちこっち崩れているから防衛戦は不可。

更には水浸しで復興作業は困難。

気持ち的には城ごと捨てたくなるが、今後毛利家に対する最前線の拠点となるこの城は、なんとかしないといけない。


だが、現在の尼子家は深刻な人材と人手不足の状況。

他のやる事が山積み。松江の復興までやるのは無理筋だ。


だから今回の罰則を与える意味も込めて、京極家にやらせる。

そう伝えたのだが、当然の様に反発した。


「お話は分かります。しかし我らに京極の地を離れ、その上ここに来いとは、あんまりにございます。」


必死な表情で反対する副将さん。

それに対する尼子家の視線は冷ややかだ。


「裏切って領地を奪いここに尼子家を追い込んだ家は何処だ?」

「それは、戦事での話にございます。」


戦争だから仕方ないと。なるほど。

だがな……


「決闘で負けたのに大内家に与して尼子家攻撃の口実を与えた家が何で反発できる?どうしてこの城が水浸しになる必要があったのか、それを俺に教えてもらえるか?」


俺の言葉に言葉を詰まらせる。

実は今回の決闘における大内家の保険が京極家自身であったからだ。


決闘中に哨戒中をしていた尼子の人間が、京極家の別働部隊を発見。

大内軍撃退後にその報告を聞いて、該当する部隊を回収、詰問。

決闘場に残した副将に確認したら観念して吐いた。

決闘敗北時は京極のこの部隊が尼子傘下の兵として大内に攻撃する予定だったそうだ。

あまりに予想通り過ぎてちょっとは捻れよと思ったのは内緒だ。


「お前達京極家を取り潰して全て解体しないのは、単に決闘の約定が有るからだ。不満なら京極の名を捨てるか?今度は約定と一緒に尼子家を裏切って戦うか?」

「それは……」


出来ないだろうな。

裏切ればこちらも困るが、やれば現在所属している京極の人間は、今後二度と武家として生きる事は出来なくなる。

少なくともこちらのいう事を聞いていれば、武家としての京極家は残る。

こちらの要請も厳しい物だが、無理を言っている訳ではない。


「悪いが尼子家は、約定が有っても京極家の人間の事が全く信用出来ない。」

「……」

「失った信頼を取り戻すのは大変な事だ。今回は罰則も含めた転封となるが、何も今後の京極の繁栄を否定する事は無い。我らは今後の行動で、お前達の誠意を見せよと言っている。」

「はい。それはもちろんわかりますが……」


まあボロボロの城をなんとかしろ。

戦争でズタズタの領地を治めろっていわれば嫌だろうな。

この後に、他の京極家の者に説明するのも大変だろうしな。

絶対に反発する。


「この地で京極家の者達に、毛利に対する捨て石になれと言っている訳ではない。今後二月は毛利からの侵攻は無いと確約してやる。だがその後、間違いなくこの地は最前線になる。そこでの功績を認めぬ程、尼子家は狭量ではない。」

「時間を作るから、この地で我らが武功を挙げられるほどに立て直せと。」

「その通りだ。」

「ここでの功績はお認め頂けると。」

「もちろんだ。」


ちゃんと功績を挙げればアメはやると伝える。

目を閉じて黙考する副将若宮。


「承知しました。この松江の代官。そして防衛の任、しかと承りました。」

「宜しく頼む。」


ようやく若宮氏が話を受ける。

残りの京極家の説明とか、復興の実務とか面倒そうなことはそっちで頑張ってくれ。


そこからの会議の内容は、この地に残る者の選抜。

この地で行う事が、今すぐに必要な作業の確認。

その後の移動における日程と準備の確認だ。


高瀬城への移動開始は、二日後に決まる。

本日の会議は解散となる。


これから俺はこの地で俺しか出来ない仕事をやる事になる。

憂鬱だ……



◇夜 松江城 城内


夜の松江城の一画に、人影が二つ。


その人影の傍には、誰も着用していない大鎧が大量に並べられている。

今回の戦いで戦死した兵たちの物だ。


ここに置かれた大鎧は、強固な金剛力によって守られていた為、殆ど損傷していない。

戦士たちの死因は大量の水に飲み込まれ、水の中に閉じ込められた事による溺死だ。

水龍を戻した後に現場に残され、回収された大鎧がここに有る。


その鎧の一つに人影が近づく。

人影は大鎧の様子を確認するように眺めている。


『我が力、闇夜を切り裂く。』


男性が合言葉を大鎧に向けて呟くと、大鎧はその重厚な姿を崩す。

崩れてバラけた装甲は、男性へと向かう。

数瞬で男は全身に、漆黒の漆が塗られている大鎧をその身に纏う。

大鎧を纏った男は、鎧の調子を確かめる。


「いかがですか?」

「問題ない。次だ。」


傍で控えていた晴香さんに声を掛けられ、言葉を返す俺。

そう、この中二病全開なやり取りは、回収した大鎧の合言葉と、大鎧の破損状態の確認だ。


『納刀』


解除用の合言葉で着ていた大鎧を脱ぐ。

次は隣の大鎧に向かう。


『ククちゃん、頼む。』

『まってなぁ、そのコはなぁ……我が力、風の如く やわぁ』


『我が力、風の如く』


先程の隣に置いて有った大鎧を身に纏う。

後ろに居る晴香さんは、手に持っている台帳に書き込みをしている。

書いている内容は大鎧の銘、合言葉、損傷状況だ。

鎧の状態を確認する為、軽く体を動かして確認する。


「いかがですか?」

「右脚部に軽度の損傷があるな。移動は問題無いが、戦闘は不安が残る。」

「かしこまりました。」


素早く書き込む尼子さん。

それを横目に隣に移動してククリと神様通信をする俺。

日中は死体と並んだこの大鎧たちの回収をしていた。


総重量100キロ越えの大鎧は、纏っていた装着者が死ぬと、勝手に脱げて只の鎧に戻る。

戻るのだが、この大鎧は普通にはバラけてくれない。

誰も着ていなくても、何故か人型で待機状態だ。

バラすには、専門の職人が必要だ。


つまり回収するためには、


一、大鎧を着用して移動する。

二、職人を用意してばらした鎧を運び、組み直す。

三、人間の形を取って座った体制の大鎧、つまり100キロ越えの金属の塊をそのまま運ぶ。


このどれかを選ぶことになる。

今回は回収待ちの大鎧の数が多かったので、俺が千鳥を着て運んだ。


普通の人間が運ぶには重すぎるし、地面は水浸しで台車の使用は不可。

それに大量の死体の移動や、崩れた城の建材も多量にあったので人手が足りなかった。

城まで大鎧を運ぶのは、なかなか大変だった。


『このコは 我が忠誠 戦場いくさばを駆ける やなぁ。』

『ありがとう。』


『我が忠誠 戦場を駆ける』


大量の溺死体の横を通って鎧を運ぶのは精神的にきつかった。

晴香さんにやらせるわけにもいかないから一人で頑張ったけど。


ただ、それとは別にこの作業は精神を削る。

何これ?

この合言葉のシステム、誰が考えたか知らんけど只の中二病語録になってるよね?

晴香さんが記入している台帳は完成したら黒歴史ノートにしか見えないだろ!


『ククッ……んん。 金剛力士よ 我に加護を与えたまえ やねぇ……プッ』

『笑うな。』


『金剛力士よ 我に加護を与えたまえ』


ああ、精神が削られる。

あと28体もある。


全部やると神様通信で力がすっからかんになるので、一日で半分の16体を確認する予定だ。

合言葉を教えてくれるククリには感謝している。

しているが、俺をネタに実に楽しそうに協力してくれる姿勢には文句を言いたい。


これ明日もやるんだよなぁ……

はあ……


『この身の力を炎に変えて』

『クククッ……難儀やなぁ。』


長い戦いが続く。

『わが小説に ブクマと評価を与えたまえ!』

一輝さんの厨二が見たい。続きが読みたいという方は是非ともお願いします。



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