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天華夢想 男は新たな世界で世界一を目指す  作者: 鮪愛好家
尼子家の窮地を救え!
8/14

決闘の後 エピローグ

ここ迄が導入編です。


合流地点の山へ向かう。


晴香さんと、護衛の人が見えた。

俺の役目は討ち漏らしの処理と、大内の伏兵がいた場合の処理。

それに合わせて権能使用中の晴香さんの護衛だ。


晴香さんの荒身国行が蒼く発光している。


ダアアアアァァァン!!


後ろから凄まじい音が聞こえて、走りながら頭を後ろに向ける。

特大の水で出来た龍が松江城を大内軍ごと飲み込む。

ククリに出来ると聞いてはいたが、凄まじいな。

権能一個を使い捨にして、惜しみなく使うとこうなるのか。


権能二つを使って尼子家最大の危機をまず乗り切る。

その為に情報収集し、権能の使い所を二つに分けた。


一つは決闘に勝つ為。

大鎧の武者との戦いに特化させた権能。

これは今後も使用していける物を考慮して、ククリと作った。


一つは大内軍の動きを止める為。

京極が負ければ何かしら理由を付けて大内軍が攻めて来るのは分かっていた。

それを封じる手も権能に頼らず実行しているが、すこし弱い。

それに京極の領地を手にすると、この松江を取られたままにする事は、今後の戦略的に厳しかった。

今後も大内に手を出され続けない様に、ここで一気に叩く事にした。

松江を取り返す。

大内の予想を覆す為に、ここで神の権能を使い捨てる。


その効果がこれだ。

こんなの乱発出来たら世界も簡単に取れるだろうな。

使い捨てたからもう無理だけど……残念だ。


晴香さんの近くまで行き、護衛に加わる。

暫く龍が松江城に滞在しているのは、相手の兵士を確実に溺死させる為だ。

なるべく装備品を傷の少ない状態で回収する。


特に大鎧はありったけ欲しい。

現状大鎧の修復作業が必要な物ばかり山積みになっているので、すぐに使える物が欲しいのだ。

大鎧は合言葉が分からないと只の重たい鎧だ。

通常は回収しても使えないから、戦闘後に金銭と交換で元の家に返還されるそうだ。

だが、大内の戦力を戻すことなんて出来ん。

だから奪う。

ククリに聞けば合言葉を教えてくれるそうなので、大鎧回収は今回の戦闘の最大の戦果といえる。


水龍が宍道湖に戻る。

それに合わせて、事前に松江城周囲を包囲した尼子兵と、その協力者たちで生き残りの確認を行う。

前回の敗戦後に身を隠していた、尼子家に付いていた残党の方々だ。

事前交渉の成果だ。


生き残りの確認が終わったら、住民には尼子家の想いを聞き届けたククリ様のお力で大内軍を打倒したと触れ回る。

ある程度落ち着いたところで死体の処理、装備品の回収を行う人材の募集を行う流れだ。


これからが本当に大変だ。

それでも、今回勝利したことは間違いないだろう。

正に全員で成し遂げた勝利だ。

俺は権能を使い終えた晴香さんに近づき、正面に立つ。


「お疲れ様。晴香さん。」

「一輝様。」

「大内軍総勢一千人以上を討ち取ったね。見事だ。」

「いえ。ククリ様と御使い様のおかげです。」


そう言って少し笑うが、笑顔に影が見える。

何だろう、モヤっとする。

何故勝利を喜ばないのだろう?

以前にも感じた感覚だ。


「今回の水龍の計は晴香さんがいないと出来ない物だった。」

「……?」

「忘れたのか?今回ククリ様から下賜された権能は、尼子の権能である水操作を元に作成し、その荒身国行を介して発動するものだ。」


いまいち分かっていない様子の晴香さんの目をしっかりと見て告げる。

理解していない様子の彼女を見ていると、胸がざわつく。


「俺が献策して皆で決めて準備し、ククリ様が力を与え、晴香さんがそれを為した。つまりは……」

「つまりは?」

「ククリ様と、それを信じた皆の勝利だ。」

「皆の勝利……」


そう言って護衛してくれている家臣の皆を見る晴香さん。

家臣の皆も目が合うと、しっかりと頷き返す。


「私たち皆の勝利。」

「そうだ。誰かが欠けても、どれかが足りなくても今回の勝利は無かった。それは誇るべきことだ。」

「全員がこの勝利を誇れと。」

「その通りだ。謙遜は美徳だ。だが、しっかりと役割を果たした者が、人のおかげだとソレを誇らずにいては、周りの者が誇れなくなってしまうではないか。」

「おっしゃる通りかと。」

「なので……やり直し!」

「ええ!?」


俺は一度晴香さんから離れ、振り向く。

ゆっくりと近づき、晴香さんの正面に立つ。

大太刀の剣先を地に突き立て、柄に両手を置いて仰々しく立つ。


「ククリ様から力を授かり、その力で一千を超える大内軍を倒すとは。見事だ!」


俺の言葉を受けて、姿勢を正した晴香さんが答える。

さっきと違い、良い表情だ。


「ありがとうございます。無事、お役目を成し遂げました!」

「うむ。今後もその才を十全に振るい、尼子家を盛り上げるがよい!」

「ははっ!」


二人でお芝居を終えて笑う。

良い笑顔だ。

周りの護衛達も良い笑顔だ。


ああ、ここに来て彼女も、そして()()やっと理解した。

成し遂げて、言葉にしてからやっとだ。


きっと先程の彼女の表情は前世の俺と一緒だったのだ。

彼女は今迄、尼子家の未来を一人で目指し、一人で背負っていた。

今回の勝利が、降って湧いた他人事の様に感じていたのだろう。


前世で俺が一人で努力をしても、一人で勝利しても感じる事が出来なかった足りなさ。

一度死んでからでないと、味わう事の出来なかった勝利の共有という感覚。


全員みんなで一つの目標に向かって、

全員みんなで努力して初めて生まれる喜び。


一人きりの勝利、前世いままでのそれは、只の自己満足だった。


きっと勝利とは、喜びを分かち合う物で無いと駄目なのだ。

世界一を為し、それを皆で喜んだらどれ程なのだろうか?


「よし!今から松江の城下町迄、勝利の凱旋だ!」

「「「おお!!」」」


俺の夢、世界一を目指すのは変わらないが、新たな目標ゆめが出来た。


今度は、皆で世界一になってみせる。

俺たちの戦いはこれからだ!

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