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天華夢想 男は新たな世界で世界一を目指す  作者: 鮪愛好家
連鎖する決闘
13/14

高瀬城と鬼の力

新キャラのアズキちゃん紹介回です。

宍道湖北西 丘陵


高瀬城へ向かう行軍中に、出会った小鬼のアズキ。

結局アズキは食事後に朝までぐっすり眠ってしまい、客将として雇う事になったと説明出来たのは翌朝になってからだ。


「ショッカク?」


翌朝の早朝、日が昇ると同時に起きたアズキに、尼子家の客将になった事を伝えるが、全然わかってない様子だ。


「お客さん待遇の武将……うん。通じないな。」


言ってる途中で伝わっていない表情が見える。

少し悩んで言葉を選ぶ。


「俺が頼んだ時にアズキが戦ってくれれば、毎日飯が食える」

「ホントカ!タタカウノハ スキダ!」

「そうか。ちゃんと飯が毎日出るからな。」

「メシモ スキダ!」

「それは良かった。」


アズキはとても喜んでいた。

すこし騙したような罪悪感に囚われてしまったのは、俺の心が汚れているせいだろう。

これ以上難しくすると、アズキに通じないから仕方ないのだ。


「ああ。それとこれを額に巻いてくれ。」

「コレヲカ?ナンデダ?」


アズキに、紺色の鉢巻きを手渡す。

鬼の角を隠すために、中央部分を広くて分厚くなるように縫い直した鉢巻きだ。


「どうやら人間はアズキの角を見て怖がっているみたいなんだ。だからこれで角を隠してくれ。」

「ソウナノカ……ワカッタ。」


そう言って、鉢巻きを巻こうとするが、うまく出来ない。

なのでやり方を教えて、今回は俺が巻いてやる。


「これでよしっと。とりあえず俺たちの所にいる間は、これを必ず付けててくれ。今度部屋をアズキにやるから、部屋の中では付けなくてもいい。でも、それまでは我慢だ。それと付け方は今度練習しよう。」

「アア レンシュウハ ダイジダ。」


アズキの頭の角は、鉢巻きでしっかりと隠れている。

こうして見れば人間の子供と変わらないな。


「良し。飯食うぞ。」

「ヤッター!」


そんな形で説明し、さっさと朝食をとって支度をし、本日の行軍を開始する。

アズキは馬に乗れないので徒歩だ。

俺から離れない様にだけ指示する。

昼過ぎには高瀬城に辿り着く事が出来た。


城下町をを通って高瀬城に向かう。

こちらのを見る城下町の人間達の目には、若干の不安が見えるが、無関心な者も多い。

尼子家の受け入れは、特に問題はなさそうだ。


住民たちにとっては、昨年迄はこの町も尼子家の領土だったのだ。また戻って来たのか位の感覚なのだろう。

冷めているが、気持ちはわかる。


そんな町の光景を見ながら、高瀬城に入る。


中に居た京極家の面々は、一応こちらに従う姿勢を見せている。

しかし不満が思いっきり態度にも表れていた為、「不満が有るなら絶縁状を渡すからいつでも言え」と伝えてからは、表面上はおとなしい。

いつか爆発しそうだし、対策を考えておかないとな。


高瀬城に駐留していた兵力は総数約600名。

取り敢えず、兵力の半数300名を3日後に松江城へ移動する事を伝える。

残りは高瀬城に100名を残して、各地に分散させる。

反乱分子を固めるとかありえないからな。

細かい処理は晴香さんと尼子家の家臣団に任せて、別行動をとる。


◇高瀬城 訓練場


アズキと一緒に、高瀬城の外にある訓練場へ向かう。

アズキの戦闘能力の確認だ。


「アズキ、武器は何を使える?」

「アマリ ツカッタコト ナイナ。」


そういって拳で殴る仕草を見せるアズキ。

これまでは格闘戦が主体だったようだ。


「じゃあいろいろ試してみるか」

「マカセロ。」


そんな訳で、修練場に置いて有る武器を片っ端から試させる。

どれもいまいちだったが、斧と棍棒がしっくり来るそうだ。

重さがある武器を振るのが良いらしい。

ただ刃が立てられないから斧は無理そうだ。


しかし棍棒とは……やはり鬼だからか?

取り敢えず武器は、本人が使いやすいと思う物が良いだろう。


次は、大鎧を使えるかの確認を行う。

今回最も重要な所だ。


準備させていた大鎧から一つを選ばせる。

黒の漆塗りの大鎧が気に入ったようだ。


「よし、では早速大鎧を着てみよう。」

「オウ キテミヨウ。」


気合十分なようだ。

表情がやる気に満ちている。


「それじゃあ、アズキ。その刀を持ったまま力を込めて、『我が力、闇夜を切り裂く。』と唱えるんだ。」

「ワカッタ 『ワガチカラ ヤミヨヲ キリサク』。」


刀を持ったアズキに向かって、漆黒の漆塗りの装甲がバラけて跳んでいく。

数瞬で大鎧は、アズキの小さな体を包み込む。

鎧を纏ったアズキは、確かめる様に体を動かす。


「アハッ アハハハハ スゴイ スゴイゾ カズキ!」


凄く嬉しそうだ。

大鎧を着てはしゃぎ回っている。

動くのは問題なさそうだな。


「それじゃあ試しに鎧を使って、戦ってみよう。」

「アア! ソウダナ ヤロウ スグヤロウ!」


やる気満々でちょっと怖い。

さすが音に聞こえる戦闘民族さん。新しい力を試したくてしょうがないようだ。

俺も大鎧千鳥を着用して、二人で修練場の中央に立って向かい合う。


「それじゃあアズキ、まずは好きなように俺に向かって攻撃してくれ。」

「ワカッタ イクゾォ!」


ギィン!ドン!


っ!?早っ!重!

踏み出し、加速して上段から振り下ろしてきたアズキの刀を千鳥が自動で受け流したようだ。


アズキから振り下ろされた大太刀。

その刃の下にある地面がえぐれている。

凄い威力だ。


「アハハハハッ! スゴイ! スゴイナ カズキ!」


ギィン! キィン! ガイン! 


右下からの振り上げ。

左上段からの振り下ろし。

左中段横払い。


アズキから尋常じゃない速度で繰り出される攻撃を千鳥が捌く。

重く、早い。以前戦った京極武者達の大鎧とは比較にならない。


アズキからの猛攻を捌けているのは、京極家との決闘前に、ククリにお願いして新たに得た『権能』のおかげだ。

新たな権能は、大鎧込みで使用するパソコンのようなモノにしてもらった。


千鳥に搭載された権能の機構を使用して、レーダーとセンサーを発生させるソフトを(ククリが)作って搭載した。

このセンサーから相手の動きを読みとって、俺の体の電気信号を権能が勝手に送り、千鳥と連動。最適な行動を取って大鎧が動くように(ククリが)した。


大鎧の戦闘は、通常の人間ではありえない力と速度で動くモノを、人間の反射神経と判断力で行っている。

それを現代の知識と権能の応用で、ほぼ全自動で勝手に動いて戦うロボットにした。

ククリと相談の結果、これがコストと運用のバランスが最も良かったからだ。


「アハハハハッ スゴイゾ ナゼ フセガレテル? アハハ!」


アズキの大鎧からの猛攻が止まらない。

だが、戦闘中に漆黒の大鎧が変化し始める。

文字通りの変化だ。


大鎧の装甲表面に、赤い線がいくつも浮き出る。

まるで血管が浮き出たかのようだ。

赤い線は、明滅している。血管が脈打つかのようだ。


キィン!


アズキの持つ、大太刀の刃が折れてしまう。

刃も立てず、無理に振り回した結果だ。


「アハハ オレタナ カズキィ!」


残った刀の柄部分を俺に投げつけて来る。

それを避けた俺に拳で殴り掛かる。

先程よりも動きが早くなっている。


ガン ガガガガガガ ドン!


殴る殴る殴る。

アズキは拳で殴り続けて、最後に右足で蹴りを入れて来る。

全て腕などで防いでいる為、まともに喰らってはいないが、最後の蹴りの衝撃で吹っ飛ぶ。


「アハァ トトガ マダハヤイト イッテタ ヨロイノ チカラ スゴイゾ!」


アズキが吹っ飛ばした俺に追いついて、また殴り始める。

大鎧を着た武者たちの速度は速いが、それを圧倒的に上回る速さだ。

というか待て!お父さんがまだ早いって言ってたのか!? 


ゴッ ガン! ガガガッ ドン!


吹っ飛ばした俺に追いつき、殴って吹っ飛ばし、また追いついてを繰り返すアズキ。

それをやられている側の俺は、ボールの様に吹っ飛ばされ続けている。


恐らく俺の権能が、吹き飛ばされないと力が受け流せないと判断しているのだろう。

音と衝撃の割にはダメージはほとんど無い。


「アハハハ ドウシタ カズキ ナニモシナイノカ?」

「そうか?じゃあ反撃を入れるから気を付けろよ?」


今迄許可していなかった権能の攻撃機能。

それをを許可した状態に切り替える。

調子に乗り始めて、俺に向かって真っ直ぐ進んでくるアズキ。

非殺傷での許可なので、千鳥は使用しない大太刀を放って手放す。

千鳥に追いつき、右拳を繰り出すアズキ。


ガッ ゴッ ガァン!


右拳を防がれ、左拳からのラッシュに入ろうとしたアズキ。

そこに俺の千鳥がカウンターで、左拳を顔面に叩き込む。

一撃を入れた後、素早く後ろに下がり距離を取る。

今迄攻撃を繰り返し続けてきたアズキの動きが、ここで初めて止まる。


「……アハァ スゴイ スゴイ! スゴイ!!」


が、それも一時の事。

スグにこっちに向かって駆け出し、攻撃を再開する。

左拳、右足からの下段蹴り、そのまま回って上段からの蹴り下ろしを放つアズキ。

最後の蹴り下ろしに合わせて、カウンターで右拳を顔面に入れる千鳥。

そのまま腕を振りぬいて、アズキを地面に叩きつける。


「アハハッ ハァ ヤッパリ ツヨイ……イィ イイヨォ カズキィ……」


何もなかったように立ち上がり、攻撃を再開するアズキ。

アズキの呼吸に合わせて、脈打つ様に赤い線が明滅する赤黒い鎧。

いつのまにか手足の装甲が形状を変化させ、獣の爪ように形を変えている。

最早その姿は武者の鎧では無い。

まるで鋼鉄で出来た、獣の様だ。


「ガァ! マダマダ イクゾ!」


右上段からかぎ爪のように右手を振り下ろすアズキ。

先程よりも速度の早いそれを左手で払って、自身の右膝を胴に打ち込む千鳥。

体がくの字に曲がるアズキ。すかさず右拳を顔面に叩き込む。

容赦ないな、この権能。

非殺傷に設定して有る筈なのに、反撃に容赦が見られない。


「ガアァァァ!」


よろけたアズキは、受けた衝撃を踏ん張って止まり、右手の爪を横薙ぎに振るう。

それを千鳥は、後ろに下がって避ける。


アズキは俺を追って、左手の爪を上から振り下ろしてくる。

振り下ろしたアズキの左腕を左手で払い除け、上段蹴りを顔面に叩き込む千鳥。

左方向へと吹っ飛ばす。

アズキは暫く地面を転がるがスグに立ち上がり、こちらに向かって駆け出そうとする。


「ガアァ! マダマダアァア……ア?」


が、それは叶わない。


バカァァアン。


アズキの大鎧の上半身装甲部分が大きな音を立てて、弾ける。

一瞬俺の蹴りが大鎧を壊したのかとも思ったが、どうやら違うようだ。

大鎧が砕けていく様は、まるで限界を超えて自壊しているかのようだ。


「アァ……ア?」


アズキが自分の砕けた鎧を見て困惑する。

自身の両腕を上げて見やる。

両腕の装甲にも、大きな亀裂が入っていた。

両足にもだ。

亀裂の入った装甲はボロボロと崩れ、剥がれ落ちていく。


「……ナンデ?」


アズキの嘆きは鎧に届かない。

やがて装甲の大半が剥がれ落ち、アズキの小柄な全身が露わになる。

ゆっくりと前に倒れるアズキ。

そのままうつ伏せに倒れる。


起き上がらない。


……おいおい!マジか!


『納刀』


千鳥を脱いで、アズキに駆け寄る。

体を抱き上げる。


スゥ……スゥ……


無事だ。脈も息もある。

どうやら、疲れて寝てしまっただけのようだ。

良かった。


パチ……パチパチパチ


突然修練場に拍手が鳴り出す。

周りを見ると、いつの間にか大量の兵たちが見ていた。

戦いに夢中になっていて、気付かなかった。

殆どが京極の兵たちだ。


拍手はやがて大きな音になって修練場を包み込む。

なんというか、恥ずかしい。


鳴り止まない拍手の中、アズキを抱えて修練場を後にする。


アズキちゃんかわいい。と思って下さった方。

是非ともブクマと評価をお願いします。

よろしくお願いいたします。

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