プロローグ
どうしても転生モノが書きたくなって書きました。
どうぞ生暖かい目でよろしくお願いいたします。
俺の名は天童 一輝
俺にはずっと追いかけた夢があった。
世界一だ。
男なら、誰でも一度は夢見た事があるだろう。
男なら、誰でも一度は目指したことあるだろう。
俺も、もちろん目指した。
誰もが途中で、他人との才能の差に諦める。
誰もが何処かで、敗北を知って足を止める。
俺は諦めなかった。
負けた時でも、ずっと走り続けた。
皆が俺の夢を笑ったが、気にしなかった。
世界一になる為に。
小学生の頃、足が速い者はヒーローだった。俺はひたすら走り込み、体を鍛えた。(全然足りない)
中学生の頃、学校は試験の結果を発表し、トップは皆から賞賛された。分かりやすい目標だ。俺は学問に打ち込み、成績はトップを維持し続けた。(全く足りない)
高校生の頃、今後の進路を考えた。金が……それも大金が必要だと気付いた。俺は必要な経済学を学び、経済情報を収集し、株と投資に手を出し、金を増やした。(まだまだ足りない)
大学生の頃、国内で最難関と言われる大学に入学した後、大学活動の一環で成功している卒業生達の話を聞く。パイプの重要性に気付き、コネクション作りに励んだ。(これでも足りない)
卒業後、自身の会社を立ち上げる。今迄蓄えた財産を使い、自身が積み上げたコネクションを最大限生かした。ワンマン経営であったが、10年掛けて日本有数の会社にした。(それでも足りない)
俺の作った会社はそこから海外進出。更に10年掛けて、他の会社の吸収合併を繰り返し、巨大に膨らみ続け、その名を世界に轟かせていった。
世界一の夢までもう少し。
手が届くところまで来ていた。
もうちょっとだ。
それでも何かが足りなかった。
俺の乗っている飛行機が墜落している。
ずっと感じていた何かが(足りない)という想い。
何かが欠落している。
飢餓感にも似たそれが何だったのかは結局分からなかった。
こうして40年を越えて走り続けた天童一輝の人生は、あっけなく幕を閉じた。
暗闇の中にいた。
水の中を漂うような感覚だ。
何かがオレを呼んでいる。
気付くと目の前に大きく輝く光の塊があった。
光が俺に話しかける。
「ようやっと気付いたなぁ。一輝はん。今回はもう少しだったのに、残念だったなぁ。」
(ダレだこいつ?ナレナレしい。)
「冷たいわぁ。うちと一輝はんの仲やろうに。」
(ダレダ?すまんがよくミエン。)
「まあ今生の一輝はんとは、会うた事はないんやけどねぇ。」
(誰だよ!?ふざけた奴だな。)
「そろそろ頭、はっきりしたかぇ?」
(言われて気付く。そうだな。今ははっきりしてる。)
「そいじゃあ要件をさくりとねぇ、一輝はん、別の世界で世界一、やり直してみいひん?」
(……っ!?)
その言葉は正直言って、嬉しかった。
死んでもやり直す事が出来るなんて、考えた事も無かった。
「そやろねぇ。普通は死んだらそこでしまい。まっさらやわぁ。」
(では何故?美味い話には裏がある。普通は警戒するぞ?)
「うちのお願い。聞いてもらう為やんなぁ」
(願い?)
この謎の存在からの話をまとめるとこうだ。
この謎の存在は、ククリという名前だそうだ。
ククちゃんと呼ぶように言われた。
俺に分かりやすく言うなら、いわゆる神様みたいな存在だそうだ。
別の世界では魔法や超能力のような、超常的な力が存在している。
それらの力の源がこれら神様達の存在なのだそうだ。
世界に必要な力を循環させて、再度自分の元へと力を集める為には、魂を持つ存在からの信仰と魂の契約が必要だそうだ。
俺の事を送ろうとする世界では、より多くの信仰が欲しい神々の代理戦争を人間がやってる真っ最中。
現在自分の信仰者が奪いつくされそうになっていると。
ククリからのお願いを聞けば、その分に応じて対価をくれるそうだ。
その世界へ俺を送るのは、ククリからのお願いという形にして、まず一つ。
送った世界で、自分の信仰者を救ってもらいたいのというのが一つ。
今回の窮地を救った者達を導いて、信者を増やしてもらいたいというのが一つ。
この三つのお願いを聞いてもらう為の対価に、三つの超常的な力、『権能』をくれるそうだ。
断るならこのままサヨナラしてそれで終わりと言われた。
終わりというのは天童 一輝も終わるという事だ。
夢をかなえる前に死んで、本来はそこで終わりだったのにまたやり直せる。
別の世界で『世界一になる』夢をまた目指すことが出来る。
この内容で、俺に断る要素が無い。
「やってくれるのかぇ?」
(ああ、やる。確認したいのだが、『権能』はその世界に行ってから選べるのか?
「出来るなぁ。地上に降りたらうちと話せなくなるけどなぁ。」
(それなら『権能』の一つを使って、今後もククリと話すように出来るか?)
「……」
(……ククちゃんと話すようにする事は出来るか?)
「くくく、ほんまに一輝はん、分かってるなぁ。出来るよぉ。いつでもうちと話せるようにしたるわぁ。」
(ならそれで頼む。『権能』は後で必要な物を頼む。)
「わかったわぁ。連絡いつでも待っとるえ?」
(ああ。決まったら連絡する。)
「そいじゃあ、気張ってなぁ。次は夢の先が見れるとええなぁ。」
(ありがとう、ククリ。)
気にせんでええよ?
最後に、そう聞こえた気がした。
ククリの光が広がって行く。
光が俺の体を包み込んでいくと、意識が消えていく。
こうして天童 一輝は別の世界で世界一を目指す事になった。
書き溜めた分が無くなるまでは毎日更新の予定です。