3-33 対決
2020年9月27日公開分 五話目。
3-29 エマとシャルロッテから公開
「茜ちゃん、悪いけど一緒には行動出来ない。法律うんぬんではなく、神様を殺した事は許せないよ」
「目を覚まして! 名無しさん、私が一番名無しさんを愛しているわ。絶対、絶対!! ぜーーたーーい、幸せにしてあげる、うふふ」
自然と首を横に振っていた。到底受け入れられる話じゃない。
「ふーん」
そして神様の亡骸を見るマスクちゃん。動き出すのを見て、直ぐにマスクちゃんの前に割り込み両手を広げて行く手を阻んだ。すかさずマスクちゃんが私に抱き着く。
「ああーーー。やっと、一緒に成れた。うふふふふふふふ」
ぞわぞわと寒気を感じたが、とりあえずこの状態であればこれ以上の被害は出ないであろう。あとは警察が来たら取り押さえて一緒に警察に行こう。
「ずいぶんな事になっているわね」
声のする方を見ると清子さんが物凄い形相で立っている。
「あれ? 清子さん、お久しぶりです」
私に抱き着いたまま、顔だけちらっと向けて挨拶するマスクちゃん。
「そうねお久しぶり、ただ、神様を殺すってのは良くないわね。ちょっと、いえ凄く、もの凄く許せないわね」
そう言ってファイティングポーズを取った。
「待ってください! 格闘家が素人に攻撃したら不味いです。この状態ならこれ以上悪さは出来ないのでしばらくこのまま…」
マスクちゃんが私から離れて、清子さんに向きなおした。
「手出しは不要よ一郎。力を手に入れて調子に乗っている様だし、この子のためにも、ちょっと教育してあげるだけよ」
「へぇー教育ね。実は前から名無しさんと馴れ馴れしいのが気に喰わなかったのよね。雅美のお母さんだから手加減はしてあげるわ。でも強くなりすぎちゃったから、ぶっ殺しちゃったらごめんなさいね。というか痛くならないように一瞬で殺してあげるわ」
「怪我をさせないように手加減をお願いします」
「分かってるわよ」
清子さんの返事にマスクちゃんが吹き出した。
「ぷぷぷ。名無しさんは私に言ったのよ? そんな事も分からないの? 最近再ブレイクしたから調子に乗っちゃったー? クソビッチと一緒に曲を出したり、フィギュアになってご神体とか言われたり、雑誌の表紙になったりしたから調子に乗っちゃったのかなー? なのかなー?」
話していると思ったら、一瞬で間合いを詰めて清子さんに殴りかかるマスクちゃん。しかし、その手首をつかみながら腕の下をくぐる様に入るとマスクちゃんの後ろに回った。膝の後ろを蹴ると体勢が崩れ、手首を上にあげつつ距離を取るとさらに体勢が崩れて地面にひれ伏した。肩の上に片膝を乗せたまま、腕を捻りあげる。
「痛い痛い痛い痛い! ギブギブ、ギブです」
マスクちゃんが直ぐにキブアップした。しかしさらに締め上げる清子さん。
「痛い痛い痛い痛い! 本当にごめんなさい。もうしません、許してください。骨が折れちゃう! 死んじゃう! ごめんなさーい」
少し力を緩めたようだ。でもいつでも力が入れられるように油断せずに気合を入れているのが、はたから見ても分かる。
「これどうするの? 私がいつまでも締め続ける訳にもいかないわよね?」
警察に渡したとしても、警官に暴力を振るわれる可能性だってある。
「そうですね。どうしましょうか」
「もう大人しくします。なので離してください。痛いよー痛い、痛いー、うえーん、ううう」
可哀そうに思ったのか、手を放して立ち上がる清子さん。ゆっくりと立ち上がり、締め上げられた肩をゆっくりと廻したりして様子を確かめているマスクちゃん。
「本当にすみませんでした」
頭を下げてから、ファイティングポーズを取るマスクちゃん。素人目に見ても構えがさまになっている。
「馬鹿ね信じるなんて。元格闘家かも知れないけど、勇者に歯向かうなんて愚かよねー。スキルポイントが有ればスキルを覚えて強くなれちゃうんだよ? 知ってた? それじゃ死ねよババぁ」
思いっきり踏み込み、力を込めた右ストレート。しかし手刀で弾きつつ、横に周って膝蹴りを脇腹に叩き込む清子さん。
「くっ」
姿勢を崩したように見えたが、すかさず後ろ回し蹴り、いや後ろ回し踵落としを繰り出すマスクちゃん。体をそらして避け、軸足にローキックを叩き込むとマスクちゃんの姿勢が崩れる。ボディーと脇腹にワン、ツー、背中に、スリー、フォーと連続して殴る。マスクちゃんが大ぶりの左フックを放つとバックステップで距離を取った清子さん。ブンという物凄い音がなるほどのフックだった。
「全然効いてないよ? 勇者と対決するには力不足じゃないの? ぷぷぷ」
「そりゃそうよ手加減してあげているんだから。本気を出したら死んじゃうわよ?」
「ふんっ。強がっちゃって」
そう言って、落ちていた警棒を素早く拾い上げて、清子さんに殴り掛かる。
「ほらほら、避けているだけじゃ勝てないわよ」
力いっぱい警棒を振り回しながら煽るマスクちゃん。それを無言でかわしていく清子さん。空振りして警棒が壁にあたると、壁の破片が周囲に飛び散り、警棒が若干曲がった。
「口ほどにも無いわね、実力を出してみなさいよ、ほら、ほら、ほーらー」
警棒を持つことで優位に立ち、余裕が出てきて、舐めプ(なめたプレイ)なマスクちゃん。
大きく上から振り下ろした警棒を必要最低限の動きで避けて、左掌底を顎の先端に撃ち込む。ガクっと、顔が下がったところに、連続して拳を数えるのが馬鹿らしくなるほど、全身に叩き込んでいく。百裂拳ってこんな感じだろうか、でも蹴りも入れているから拳ではないな、それに多分百じゃないな、千裂拳かも。こえーな清子さん。
鑑定で確認するとHPはまだまだ大丈夫の様だけど、念のためマスクちゃんに回復をかけてあげる。防戦一方のマスクちゃんを上に放り投げると、落ちてくるところを連続で殴り、地面に足がつかない状態で攻撃し続ける。空中コンボって本当にあるんだな。HPはまだまだ大丈夫っぽい、流石LV100の勇者だけある。あっ空中コンポが終わった。
「ギブです! ギブ! 本当にごめんなさい」
戦意を喪失して両手を顔の前に広げながら、叩き込まれる拳を防いでいる。持っていた警棒も当然手放している。ただ正確には、へなちょこガードを潜り抜けて、バシバシと良いのが入っている。
「ごめんなさーい。もうしません。すみません。反省しています」
本当に泣き出したマスクちゃん。手を止めた清子さんが私にチラッと視線を送ったので頷く。すると再び殴り始める清子さん。
「止めてあげて!」
間に入って強制的にブレークさせる。なんでまた殴りだしたの? 普通あれはもういいよね? のサインだと思うんですけど。マスクちゃんが怯えたように私の後ろに隠れて泣いている。
「しかしどうするのこれ?」
清子さんが再度扱いについて尋ねてくるが、どうしたものかなと。
「とりあえず、これを使うのじゃ」
紐を差し出されたので、それを清子さんに渡し、マスクちゃんを縛りあげよう、でもこの紐だと耐久度は低そうだなって、おい!
「あれ! 神様、なんで生きているんですか? だってそこに死体があるのに、えっ? 神様って二人いるの? てか何で全裸やねん!」
「新しいボディーじゃ。ボディーは入れ物に過ぎん、ん? というよりも分体? まぁこんな事で死んでおったら数京年も生きとらんのじゃ」
「そりゃそうだ、じゃないよ! 凄く心配したんですよ」
神様を正面からぎゅっと抱きしめる。生きてて本当に良かった。しかし神様は無表情で反応が無い、あれ? もしかして殺されて怒っているの? いや違うな、顔を延ばしたりしているので、作り立てのボディーなんだろう。
「というか服を着てください。えっ紐? これが服だったんかい! まともな服を着てきてください」
すると自分の死体に向かって歩き出して、おもむろに服を脱がし始める。
「いやいやいや、それはそれで不味いでしょ! 大体死体が裸になっちゃうじゃん。転移して着替えてきて下さい」
神様が一度消えて、ジーンズにTシャツというラフな格好で返ってきた。ノーブラだな、何がとは言えないけど見えてるし。
「さて、こやつも一応勇者じゃから、これも戦いに連れていくかの? 放置しても暴走したら誰も止められんじゃろうし。結果的になかなかのLVになったみたいだしの」
「はい行きます! 調子に乗ってゴメンナサイ。神様に従います。何でもします。だから助けて下さい」
一度手を挙げてから物凄い深いお辞儀をしたマスクちゃん。清子さんが相当怖い様だ。クソビッチと言っていた神様に保護を求める。
「あら? 貴方も私達と一緒に行くの? じゃあゆっくりと教育出来るわねー」
「え”? え”?」
清子さんの発言に驚き、私や神様の顔を交互に見て、清子さんの発言について確認を取ろうとしているマスクちゃん。
「清子さんもアメリカで契約関係他、色々なサポートをしてくれているので、一緒に行動していますよ。神様と一緒に曲を出しているって自分でも言ってたでしょ」
「ええーー。ああーー、えーと、外泊とか両親に許可を取らないと分からないかなー?」
「多分直ぐに許可は下りるわよ。こんな事をしでかしたんだもの。私達と一緒にいる方が人として学べる事があると思うわ。一般人じゃ貴方を注意出来ないでしょうしね」
マスクちゃんががっくりと崩れ落ちた。
人を殴ったり、蹴ったりしちゃだめだよ。フィクションですからね。
清子さん容赦ないですけど、あんまり責めないでください。一応手加減してますから。
何で清子さん強いの? なんでだろうね、フシギダネー。
単純なお笑いシリーズ コーヒーショップで久しぶりにあった人と会話してみた
https://ncode.syosetu.com/n4241gm/
という短編を先日公開しています。
単純なお笑いシリーズは、人を笑わせるのを目的とした短い話です。
小説ではないかもですが、ぜひ読んで下さい。
騙されたと思って、読んでみて。




