3-15 スキャンダル2
2019年11月30日公開分 四話目。
3-12 神様のようなもの2から公開
自分の会社の上司に現状を電話で説明している。三股などしていない、悪い事はしていないと。そしてノックの音が聞こえて、清子さん達が到着したと告げられた。
「あれ!?」「ええ?」「うぉ」
担当さん達が驚いた声を出している。電話の途中だから切り上げられないけど気になる。入って来た神様を見ると。
「ぅぉーーおお?」
今朝見た時よりも滅茶苦茶綺麗になっている。元から美人だったけど服装や髪形でこんなにも変わるものなのか。なんだろうお姫様というか、高貴な雰囲気が漂いつつ、世界で活躍するような一流女優やモデルのような洗練された服装。さぞかし高いんだろうけど全然服に負けていない。清子さんも美人だけど流石に神様と比較したら負けちゃうね。
「あっあっあの、結婚して下さい」
「はい? っておい、部長は既に結婚しているでしょ!」
部長の突飛な発言に副担当が思いっきり背中をどついていた。
「ああすまん、あまりの美しさについ取り乱して。あの愛人になってください」
バシンと今度は副担当に頭を叩かれていた。
「今は名無しさんと同棲しているんだから、本人の目の前でそいう事を言っては駄目でしょ。別途しましょう、別途に」
いや、それも駄目だと思うけど。電話を終わらせてこちらの会話に参加する。
「すみませんうちの二人が。それにしてもお美しいですね。これなら名無しさんの言っている事が分かりますよ。泊めて欲しいって言われた泊めちゃうかも知れません」
担当さんが入って来た神様達に謝罪の声を掛けたあと、今度は私に小さな声で語り掛けて来た。
「逆に良くその、あんなことをお願いしたなと、名無しさんのメンタルが凄いですね。肉食何てレベルじゃないですよね。なんだろう既存の言葉では表現できないですね。あんな事をこの方にお願い出来るなんて、ある意味勇者ですよね、性の勇者だ」
正解です。はい勇者ですけど、変態プレイを神様にお願いするような非常識な人間ではありません。そして会議室で確認が始まった。
「えーと日本語は分かりますか? お名前をお聞かせいただいても良いでしょうか?」
「日本語は分かるのじゃ。名前なんて無いのじゃ」
「ええ? 名前が無い?」
担当さんが困ったようにこちらを見たので、助け船を出す。
「匿名希望という事じゃないでしょうか? 実は私も名前は教えて貰っていません」
「えええ? 名前も知らない人を家に泊めているのですか? 流石に(性の)勇者だけありますね、すごいな。あっじゃあ匿名希望という事で。
大変失礼な事を色々と確認する事になりますが、名無しさんの今後が掛かっているので、正直にお願いします」
「うむ」
「紐っぽい服で名無しさんの部屋を訪れました? なるほど、お認めになる訳ですね。 名無しさんと直接会ったのはこの時が初めてですか? これも同意すると。部屋の鍵は持っていた? 持っていない、開いていたと。仮にですが、開いてなかったら留守にしていたら、その恰好でどうするつもりだったのですか?」
「別に開くまで家の前で待つのじゃ」
その回答に若干担当さんが引いている。
「えーと、深夜というか早朝というか部屋に入ったら名無しさんはベットに寝ていたんですよね? そのベットに潜り込んだ? 潜り込んだと。
ちなみにですが、それは不法侵入? というか何らかの法律違反になると思いますが、その辺はどうにお考えですか?」
「別に何とも思ってないのじゃ」
「はぁ。それでは、あの紐状の服装で外を歩く事も法律違反になる可能性がありますが、その辺も?」
「法に従うつもりは無いのじゃ」
「えらく正直と言いますか、開き直りと言いますか、名無しさん、なかなか凄い方ですね」
「はい。凄い方だと思っています」
神様だからね。
「えーと、後何を聴くんでしたっけ?」
担当さんが面食らって、少し混乱しているようだ。周囲の人に助けを求める。
「現在同棲しているのですか?」
部長が代わりに質問を再開した。その間に担当さんはお茶を飲んで落ち着きを取り戻そうとしているようだ。
「うむ一緒に住んでいるのじゃ」
「私と一緒に住みませんかっがはっ」
部長の誘いに、副担当が思いっきり頭を引っぱたいたので、語尾がおかしくなってた。
「お断りじゃ、我はこやつが良いのじゃ」
そう言って私を指す神様。よせやい照れるじゃないか。てれっ。
「すみません、部長がアホな事を。で、現在名無しさんの部屋に住んでいるようですが、何故一緒に住んでいるのでしょうか? その理由といいますか」
「一緒に住んでいた方がこれからする事に都合が良いのじゃ。それと住む場所が無いからの。こやつの家から出ていくとなると行く当てが無いのじゃ」
「大体話は合ってますね…。えーとですね芸能界というか芸能人はスキャンダルがあると猛烈に叩かれるというか非難される可能性がありまして。貴方は問題無いかも知れませんが名無しさんに、あるいは私達の事務所やTV局、CMのスポンサー等、数多くの方に多大な迷惑、場合によっては多額の違約金が掛かる可能性があります。なので行動は慎重にして欲しいです」
「……」
その後、清子さんにも裏を取って大体の確認が出来た。これなら記事が公開されても何とか回避出来そうというのが、皆の意見だった。そしてネットに三股疑惑のネタが投稿されて、ヤホーニュースでも目立つ場所に、リアルタイム検索で話題のキーワードにも載ってしまった。事務所や会社にも確認の電話が相次いでいる。
「じゃあ移動しますか」
近くに二百人は入れる会場を確保し、臨時の記者会見を行う事になっている。喋るのは得意じゃ無いけど大丈夫だろうか。会場には多くの報道陣が来ており、会場に入りきらない様子。結構詰めているんだけど、それでも入れないって改めて芸能界って凄いと思う。
「はいお待たせいたしました。これから記者会見を開きます。繰り返しお願いとなりますが生中継はしないようにお願いします。一般の方の情報が含まれますので、放送や記事にする際には一般の方に影響が出ない様にご配慮をお願い致します」
そして記者会見が始まった。まずは三股ではないことの説明を行い、裸の女性とは面識が無かったが、困っているとの事なのでその女性を家に泊めてあげている事を伝えるとフラッシュが数多く焚かれた。
「それでは質問に移りたいと思います。名乗ってから質問をお願いします。では、はい、貴方どうぞ」
最初に指名するのは今回のネタを上げた週刊誌だ。最初に指名するのは特ダネを見つけたボーナスみたいなものだろうか?
「週刊誇張です。三股ではない事はとりあえず置いておくとして、この裸に紐状の服を着た方と同棲しているんですよね? 露出プレイする人を家に置いておくという事は、名無しさんもその行為をご存知で認めているんじゃ無いんですか?」
「いえ、認めていません。そんな恰好で外を歩いていたのは今回の事で初めて知りました」
これは嘘じゃない。てっきり直接部屋の中に直接転移してきたと思ったので。
「本当ですか? 数時間家の前で張り込みをしていましたが、その方は部屋から出て来ていません。そして部屋に入る時に服などを持っているようには見えませんでした。
仮に面識が無い事が本当だとして、別の場所から裸で歩いて来た、つまり服が無い事に気が付くんじゃないですか?」
「いえ。気が付きませんでした。普通そんな恰好で外を歩きませんよね? 特に服の存在を確認しませんでした。私のYシャツを着ていたので、それはそれで有りだなと思って。そっちには気が回りませんでした」
「「ええ?」」「「おおぉお?」」
会場内がざわつき、フラッシュが多く焚かれる。ぐおおおーー、恥ずかしい。なんて言い訳だよ…。
「初めて会った人を、不法侵入してきた人と一緒に住んでいるというのはちょっと信じられないんですけど。社会常識的に、私としては非常に理解しがたいです。何か盗まれたり、あるいは命や怪我、そういう危険性もちょっと考えれば思いつくのでは?」
「まず困っているとの事だったので泊めてあげる事にしました。それにもの凄く美人だったので、これは泊めたら良い事が出来るんじゃないかと下心もありました。仮に盗まれてしまってもその分稼げばいいかなと思ってました」
「うぁぁ」「ぇぇぇ」「ぉぃぉぃ」「肉食だな」「ゲスっぽいな」
会場内が引き気味にざわつき、フラッシュが数多く焚かれる。もうだめ、死にたい…。鑑定で羞恥心を見ると353! 過去最高値だよ! というか上限が知りたい、てっきり最初は100位が上限かと思ったけど全然100なんて平気で超えて来るし、あれか? スーパー野菜人やギアセカンドとか、そういう感じで上限を超えたって事か?
「質問を変えます。今ネット上で多くの名無しさんに関する報告が上がっていますが、名無しさんには他にもお付き合いしている女性がいるんじゃないですか? 例えば横浜で今回の方とは異なる女性の方と飲んでいたのが目撃されています。病院で外国の方と親密にしているとの情報もあります」
ガヤガヤと場内がざわつく。
「その話を聞いて思いつく人は居ますが二人とも友人です。私は異性の友人を持つことも出来ないのですか?」
若干、世間の無責任なものいいにイラッとしてしまった。
「その横浜周辺での行動を映した動画がインターネットにアップされていますがご存知ですか? その方はネット上で結構叩かれていますけど」
再び会場がざわつき、フラッシュが炊かれる。慌てて教えて貰ったキーワードで検索を行うと、中村さんが私を後ろから蹴っている、酔っぱらいに絡まれた時の動画が公開されていた。そして後ろから蹴っている女性に対して、批判というか炎上状態になっている。これはまずい、中村さんが可哀想だ。
「まず彼女に非はありません。ネットで彼女の事を叩くのは止めて下さい、報道各社は、変に煽らないようにお願いします」
「しかしですね、酔っぱらいに殴られている時に後ろから蹴ったりしますか? それに名無しさんもイラッと来ているじゃないですか。この女性とはどういう関係なんですか?」
「先ほども伝えたように友人です」
「酔っぱらいに絡まれている時に、後ろから蹴りを入れる、それが友人という存在ですか? それが友人なら辞書の修正が必要だと思いますが」
コイツ、もの凄くイライラする、煽ってくるな。怒らせようとしているんだとしたら成功だよ、くそっ。
「えーとあの時、彼女は私がマゾだと勘違いしていまして、蹴ったら喜ぶと思って、善意でしてくれた事です。勘違いから出た行為ではありますが善意でしてくれていました。
それに私は鍛えているのであの程度の蹴りは何の問題もありません。私にダメージを与えたいなら棍棒で思いっきりフルスイングでもしない限り、いやそれでも微塵もダメージなど入りませんよ」
「「えええ?」」「いくらなんでも」「ぷぷっ」「あほな」
場内が失笑気味でざわつく。いや本当にそうなんですけど。ちょっとダメージの話は余計だったかな、あの程度の蹴りは問題じゃ無いと言いたかったんだけど。
「この女性については他にもありまして、名無しさんが自分の都合だけでヤルだけヤッテ、都合が良い女扱いをしていたという、これは裏取りをしている情報ですよ。本当に友人なんですか?」
フラッシュが炊かれる、一体どれくらい変な情報が世の中に出ているのか…。なんだか凄く怖くなった。そしてイライラする気持ち湧いてくる、本当の事など知りもしないくせに好き勝手言いやがって。




