3-14 スキャンダル
2019年11月30日公開分 三話目。
3-12 神様のようなもの2から公開
携帯電話が鳴り、担当さんは電話に出た。ヨンミュージックで担当さんと打ち合わせの最中だ。
「本当ですか!? 分かりました直ぐに行きます」
なにやら相当に慌てているけど。
「名無しさん、週刊誌が名無しさんのスキャンダルをインターネットサイト及び雑誌掲載するとの事前の通知が来ました。なのでこれから部長と対策会議に入ります。名無しさんも同席願えますか?」
「え? はっはい。分かりました」
スキャンダルなんて全然身に覚えが無いんですけど、一体何があったんだろう。どきどきしながら会議室に入り、担当さんと副担当の高橋さん、ヨンミュージックの部長さんで状況把握から始める。
「部長、高橋さん、分かっていると思いますが真面目にお願いしますよ」
「当たり前だろ真面目にやるって、なぁ」
「真面目に決まっているじゃないですか。なんか普段真面目じゃないみたいで」
「いや、なら良いんですけど」
「三股疑惑を掛けられています。先ずはこの写真を見て下さい」
どうやら三股疑惑が出たらしい、これは全然根も葉も無い事なので大丈夫な気がするけど、どうしてそんな事になったのやら。部長さんが写真を見せてきた、女性の顔には目線が入っているがそれを見ると、神様、佐々木さん、清子さんの三人が同じ日に来た時のものらしい。
玄関前で呼び鈴を鳴らす佐々木さん、そして部屋に入る様子。清子さんが慌てて家に入る様子、清子さんが帰る様子、佐々木さんが私に返されている様子、神様の顔のアップ写真、なるほどこれを見たら一人が来ているところに、偶々別の二人と出くわしたと…。
「で、どうなんですか? これは本当の事ですか?」
部長さんが心配に確認してきた。
「えっとですね。まず三股はしていません。全くの誤解です。三人が偶々同じ日に来たのは偶然です。三人ともお付き合いしていません。あえっと、この時点では、です。一人は私の秘書で佐々木さんです、(担当さんは)ご存知ですよね?」
最後は担当さんの方を見て話を振った。
「あっそうですね。佐々木さんですね。体形からみても、っぽいですね」
なかなかのあれだからね。
「もう一人は叔母の清子さんですね。そちらもご存知ですよね」
「あーそうですね。佐藤(清子)さんですね、それっぽい、そう見えますね」
「この二人とはお付き合いしていませんし、前日会社の集まりの後、飲みに行って泥酔しちゃって。連絡が取れなかったから心配して来てくれただけで全然そんな関係じゃありません」
「あとの一人はどうなんですか? お付き合いしているんですか?」
「はい…その、今は同棲しています…」
「この女性とですか…。これはまずいですね。実はまだ写真がありまして、こちらです」
部長さんが出した写真には裸に紐で歩く姿、そして部屋に入る姿が映っている。なにやってんだよ神様!
「ご自身に問題が無くてもお付き合いしている人が公然ワイセツのような事をした場合イメージがですね、本人じゃ無くても流石にこれは不味いですね。同棲している人がこういう事しているのを認めていると思われてしまう可能性があります」
「すっすみません。まさかこんな格好で歩いて部屋にやってくるとか思っていなくてですね」
「付き合ってどれ位なんですか?」
「えーと、この前の日曜日からですかね? いつから知り合い? えーと一年前に位に一度会ったというか、私は相手の顔見てなかったのでほぼ初対面というか」
「何か要領を得ないというか、色々と疑問に思う事があるのですが。この前の日曜日と言えば名無しさんの会社の地引網の翌日ですよね? という事はこの写真が撮られた日からお付き合いを始めたという事ですか? そうですか…。この人に合鍵を持たせていたんですか? 持ってない、泥酔してたから鍵を閉めていたか覚えてないけど、起きたらこの人が布団に入っていて、この姿で寝てたと。
もしそれが本当なら不法侵入ですよね? 本当にそうなんですか? そんな変な人が、恰好見ただけで超ヤバいと思われる人が尋ねて来て一緒に暮らします?
帰るところが無いから置いて欲しいと言われたから? うーん、本当に? もしそれが本当なら名無しさんには非は無さそうだし、知らなかったと言えば何とかなりそうな気もしますね。でも不用心過ぎます、もう少し自覚を持って行動して欲しいですね」
担当さんが言う通り不用心と言えば不用心だろう。神様じゃなかったら追い出していたと思います。
「名無しさんの事を疑う訳では無いのですが、相手側にも確認したいです。一方的に話を聞いて実は違っていましたとなったら、非常に不味いので。こういうのは正確に把握した上で行動しないと」
担当さんのいう事はもっともな話です。多分神様は清子さんと一緒に居るはず。清子さんには直ぐに打ち明けており、神様の服や日用品等を用意して貰ったり、世間話に付き合ってもらっていたりしている。清子さんに電話して、これから事務所まで神様と一緒に来てもらう事になった。
「佐藤(清子)さんも一緒に来るのですか? 佐藤さんにその時の話を聞いても大丈夫ですか? それは裏付けが更に出来て良かったです。佐々木さんにもこれから電話しますけど良いですね?」
電話会議を使って佐々木さんにヒアリングすることになった、私も同席はするけど発言を許されない限り話せない、口裏合わせが出来ない様にするためだ。
「出来るだけ正直にお願いしますね。例え名無しさんに不利な話であっても出来るだけ問題が無いように考えるので、正直に全て語ってください。まずどのような状況だったか教えて下さい」
「はい。先日地引網の後に私は二次会で失礼したんですけど、鈴木さんは三次会、四次会と参加されたみたいで。あっ同じ会社の方のラインにその時の様子が投稿されていたので参加している事は分かりました。
で、その日は休みだと知っていたので、洗濯物も溜まっていて辛いと仰っていたので、電話しても全然出てくれないですし、心配でもあったので、安否確認とお手伝いをしてあげようと思って部屋を訪ねました。
事前に何度か電話やラインで連絡をしたんですけど、全然応答が無くて心配になって。そして鈴木さんの家で呼び鈴を押しても反応が無くて。そんなとき中から悲鳴、女性の悲鳴が聞こえまして」
「え? 悲鳴ですか?」
担当さんや部長さんらが私を見てる。そんな話聞いてないんですけど、というような顔をしている。確かに話して無かったですね…。
「で中に入ると、ほぼ全裸に近い恰好をした女性が、ひも状の服? というか何というか、まあ、その人を後ろから無理矢理抱きしめるというか、痛い痛いと女性が痛がっていまして。何とか女性を助けないと思って腕を解こうとしたんですが、全然びくともしなくて」
「ほー、そんな恰好をした人を後ろから無理矢理抱きしめて、女性が痛がっているのに離さなかったと。解こうとしたけどそれでも抱きしめ続けたと…」
担当さんらの視線が痛いです。違うんです。そうじゃないんです。ちゃんと理由はあるんです。
「そしたら鈴木さんの叔母さんが入って来て、同様に女性を解放させようとしてくれたんですけど、それでも鈴木さんが全然離してくれなくて」
「はぁ」
いやいやいやいや、そんな目で見ないで下さい。皆が私をジト目で見ている。誤解です、誤解なんです。
「で、何とか女性を解放した後に話を聞くと、その女性は鈴木さんの嫁だと。で鈴木さんは無理やり女性をそのチョメチョメする事が好きで、そのような嗜好に合わせて演技していたそうです。そういう系の漫画を沢山お持ちのようで、その一部をその嫁と言っていた方が見せてくれました。確かに無理矢理やるシチュエーションでした。あっ鈴木さんはこんなのが良いんだ、へえーと思いました」
「…」
いやいやいやいや、そんな皆さん気まずそうに目を背けないで、逆に何か言って下さい。もう恥ずかしくて死にそうです。
「んっんっ。えーと名無しさん出会ったばっかりの方が嫁ですか? そんな状況なのにそんな趣味に合わせたプレイをするんですか? おかしく無いですか? 本当はもっと親密な付き合いが以前からあったのでは?」
一旦マイクをオフにした状態で担当さんが問いかけて来た。しかし、神様と伝えても信用して貰えるかどうか。神様は秘密にしなくて良いと許可をいただいているけど、それとその話を信じて貰えるかはまた別の話だし。
しかし沈黙をしていては怪しまれるだけだ。何かいい嘘、なんとか誤魔化す方法無いだろうか…。
「えーとですね。その場ではその趣味嗜好を否定しませんでしたが、本当に直接会ったのはあの場が初めてです…」
「初めて会ったばかりなのに、そんな高度…、特殊、うん、特殊なプレイを出来るものなのですか? やっぱり違和感がありますね」
いやいや求めてねーから。私はそんなプレイを依頼していないんです、その時は地球のために頑張っただけで特殊な変態プレイをしていた訳では無いんです。
「繰り返しになりますが、その場では否定しませんでしたが、二人が入って来た時に何とかこの場を収めないといけないと思い、その女性の方の発言に乗っかっただけで、決して特殊なプレイをしていた訳ではないです」
「とりあえず一旦特殊なプレイの話は置いておくとして、でもその方とイチャイチャというか、性的な関係を持とうとしてたと捉えて良いですか?」
「えーと、はい」
とりあえず、肯定した方が無難かな?
「他の二人が入って来た時に、そのプレイを中断しても良かったのでは?」
「…」
確かに普通なら止めるよな、どうしよう…。でももう肯定しちゃったし、もうこうなったら行ける所まで行くしかない! 俺も男だ!
「えーとですね、そのですね、我慢出来なかったんです」
「「「えええ?」」」
「ずっと、その、性的な交渉をですね、して無くてですね、そんな時に綺麗な女性が裸に近い恰好で来てくれて、その好みのプレイをしてくれると言ってくれたから、たかが外れてしまってですね、もう興奮して我を忘れてしまって。
しかも佐々木さんが止めてくれたことで、逆にこう盛り上がって来ちゃってですね、このままやっちゃいたいなーって、それはそれでいいなーって」
もうだめだー、恥ずかしい、死にたい、しかし納得して貰えそうな話が思いつかなかったから仕方がない、仕方は無いけど、もう無理死にたい…。
「はぁ、名無しさんってその草食系的な感じな人だったと思ったんですけど、そんな一面もあったんですね。部長はどうですかね?」
「うーん、私は逆に責めらる方が好きだな」
「「「えええ!?」」」
「何言ってるですか!」
副担当が思わず腰を少し浮かせて、隣にいた部長の腕を軽く叩いた。
「びっくりしましたよ、何をカミングアウトしているんですか。そうじゃなくて名無しさんの話が信用できそうかって話ですよ」
「不自然な点は幾つか感じるよ。ただそうだな、私は名無しさんが嘘をつくような人じゃ無いと信じたい。とりあえず三股ではない事を確認しようか、それが一つ。
仮に深い関係だったとしよう、その嫁という方と。今も同棲しているんだよね? 服は持っていなかったのかな? そしたらその恰好で来たという事に結び付くと思う。名無しさんが思いつかなかったとしても、多分周りが信じてくれないと思う。だから真実はどうであれ、その関係性が薄いから名無しさんに罪が無いという方向での世論操作は難しいと思う」
「分かりました。高橋さん(副担当)は何かある?」
「部長確認したい事があるのですけど、ちょっと良いですか? さっき叩いてしまった件ですけど」
「ああいいよ気にして無いから」
「力加減はあんな感じで良かったですか?」
「いやもっと強めでよろしく」
「了解しました」
ツッコミてー! いや今そんな事言っている場合じゃないだろう、って私もツッコンでいる場合じゃない。
「あの二人ともふざけないで貰えますか?」
流石の担当さんもイラッと来ている様だ。
「違うよ。名無しさんが恥ずかしい思いをしているから、一人だけだと可哀想だからそういう話をしたまでだよ。ねー名無しさん恥ずかしかったでしょ」
「はぁ。お気遣いありがとうございます」
「そうですよ、場を少し和ませるかなと思って、名無しさんの事を思ってですよ?」
副担当も気を使ってくれたようだ。しかし使う方向を間違えていると思う。
「すみません、名無しさん。二人とも良くああやってじゃれ合うんですよ。まったく」
呆れている担当さんは二人を放置して話を進める事にしたようだ。マイクをオンにして再度佐々木さんに確認を行う。
「えーと佐々木さんお待たせしました。失礼な確認になってしまい申し訳ございませんが、佐々木さんは名無しさんとお付き合いというか男女としての関係をお持ちですか? 正直にお願いします」
「いえ、鈴木さんとはマネージャーとして、秘書としての関係です。男女としての関係は…ありません」
その後幾つかの確認を行ってから電話会議は終了した。とりあえず三股疑惑のうち、一股は消えただろう。ただそれ以上の心の傷を負ってしまった。




