3-12 神様のようなもの2
2019年11月30日公開分 一話目。
3-12 神様のようなもの2から公開
神様は丹田の前で気を溜めるような恰好をしている。止めて欲しいがあまりしつこくお願いしたら印象を悪くするかも、これ以上は厳しいかな。
しかし、もう五分位経つけど魔法を放つような気配がしない。いや攻撃しないで欲しいからこれで良いんだけど何で攻撃に時間が掛かるのだろうか? 魔法とか魔法名を唱えれば発動するんじゃないの? 特に詠唱みたいな事をしているようにも見えないし、なんだろう嫌な予感しかしない。
「あのー攻撃をしないでいただけると大変ありがたいのですが、それはそれとして、随分と攻撃準備に時間が掛かっているように見えるのですが…」
「うむ、攻撃魔法は得意では無いのじゃ」
なるほど攻撃魔法が得意じゃないから時間が掛かるのかそうかそうか。
更に五分位経ったけど全然魔法を発動しない、いつ魔法が発動されるんだろう? 落ち着いて色々考えてみる、あっ!
「かっか神様神様。あの、魔法をここで発動したらアメリカに届く前に部屋の壁に当たって、被害が出たりしないでしょうか?」
「大丈夫じゃ、アメリカ上空で発動するのでここには被害が出ないのじゃ」
良かった。いや良くない、もし被害が出てしまったらアメリカの人に申し訳が無い。…そういえばどんな魔法を使うんだろうか? 物凄く強力な魔法を使われてしまったら、それこそ被害が大きくなのるでは?
「む? ファイヤーボールという低位の魔法を放つ予定じゃ」
良かったでかい魔法じゃなさそうだ。じゃあ何でこんなに時間が掛かるのだろう? もしかしてファイヤボールを一億個放つとかじゃないよね?
「放つのは一個だけじゃ」
良かった一個だった。じゃあ何でこんなに時間が必要なの? 違和感しかない、低位の魔法を一個唱えるだけならこんなに時間が掛かる訳がない。質問が遠回しだったのかも、もっと具体的に影響を聞いた方が良いな。
「どれ位の威力かと? うむ正確な事は言えないのじゃがだいたいの被害で良ければ話すのじゃ。
直接的な被害で三、四個の州が無くなり、爆発の衝撃で周囲の州は壊滅的な被害が出て誰一人として生きられないのじゃ。跡地は抉られマントルと繋がり溶岩が噴き出し、発動の衝撃で地球の周回軌道が変わって灼熱の期間と極寒の期間が訪れるようになるのじゃ」
「止めて下さい! 被害が出るかも知れないどころの話じゃなくて、被害しか出ないじゃないですか!!」
「安心するのじゃ、巻き上がる粉塵や破片、というかそもそも発動の衝撃は地震や津波となり、直ぐに人類は壊滅的なダメージを受けるので周回軌道が変わっても既に人類の大半は死んでいるのじゃ」
「安心出来ねーよ! どこに安心できる要素があるんだよ!」
こいつが魔族なんじゃ? ピンポーン、さっきから呼び鈴が何度か鳴っているがそれどころじゃない。
「この両手を前に突き出したら、魔法が発動なのじゃ」
そういうと神様は両手をゆっくりと前に出そうとする。駄目だ人類が滅んでしまう! 神様を後ろから両手で抱きしめて手を前に出させない様にする。神様は手を出そうともぞもぞと動くが力いっぱい抱きしめて阻止する。
「痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い! 痛いのじゃ! 止めるのじゃ!」
だって止めたら人類が滅ぶよ! しかし神様の痛がる声を聴いて怯み、少しだけ力を緩めてしまう。慌てて再度まさぐって手を前に出させない様にしっかりと抱きしめる、ほどほどの加減で。
「きゃああ!」
悲鳴が聞こえた方を見ると佐々木さん! 何でここに佐々木さんが居るんだよ!
「女性に乱暴しないでください! その手を放してください! 鈴木さん最低です!!」
いやそういう訳にはいかないんです。手を離したら人類が滅ぶんです。佐々木さんが私の手を解こうとするが普通の人間が高LV勇者に敵う訳が無い。
「どうしたの! 大丈夫!? って一郎何しているの!」
清子さんまで部屋に来た。違うんですー理由が有るんです。
「直ぐにその女性から離れなさい。さあ早く」
そう言って手を解こうとするが、やはり清子さんでも解ける訳が無い。地球の命運が掛かっているからここは譲れない。
「冗談じゃ!」
「はい?」
「冗談なのじゃ!」
「言って良い冗談と悪い冗談があるでしょ!!」
「良いからその女性を放しさい」
神様を離して少し距離を置く。清子さんが神様を庇うように洗面所の方に連れていった。そして私を睨み続ける佐々木さん。なんて言い訳をしよう…。
「実はあの人は神様で、アメリカにいる金属鎧殺人鬼は魔王で、それを倒すために一撃で地球が滅ぶような魔法を使おうとしてて、手を前に出すとそれが発動すると言ったので、命に代えても止めるのが自分、実は勇者なので、それが勇者の務めと思い抱きしめて阻止していました」
と言ったら絶対頭がおかしい人と思われるだろうな。しばらくすると清子さんと神様が戻って来た。神様は私のYシャツを着ており、それはそれで有りだと思った。いやいや違う違う、この場をどう納めるべきか。
「ところであなた達はどちら様ですか? 何故一郎の部屋に居るのかしら? というか外国の方? 日本語は分かる?」
清子さんが佐々木さんと神様に問いかける。
「私は鈴木さんの秘書でマネージャーみたいなものです。逆に貴方は誰ですか?」
「私は一郎の叔母です。洗濯でもしてあげようかと思って、ついでに昨日からラインの返信が遅いのにも気になったし、悲鳴が聞こえたから慌てて入ってきたらこの状況でね。という事で一郎説明して貰える?」
「我が説明するのじゃ」
「いやいやいやいやいや」
止めようとしたら清子さんに睨まれてしまって、その場に留まる事しか出来なかった。しかし神様は私を見て軽くうなずく。おっ流石神様、ここを無難に切り抜ける方法があるのですね? 私が頷くと再度頷いてくれた。
「我はこやつの嫁なのじゃ」
「「「嫁!?」」」
私を含めた全員がびっくり、二人が私を見るけど私も知らないですよ。慌てて首を横に振ろうかと思ったけど、ここで首を振ったら神様の芝居が破たんしてしまう。なんとか首を振らずに目線を下にずらしてしのぐ。
「嫁は良いとして、我? じゃ? って何。日本語は得意では無いの?」
清子さんが若干イラっとしています。いやその方神様なので落ち着いて下さい。そうすると神様が棚にある薄い本複数冊取り出してパラパラとめくり始める。たまたま開いた本は獣人系アニメの薄い本で、それを清子さんに渡した後に開いた薄い本はRPGゲーム系のやつ、それを佐々木さんに渡す、どちらも卑怯な手段でやっちゃう系の話。
「こいつの趣味でこのような話し方や格好をしているのじゃ、嫌がる振りも含めてプレイの一環なのじゃ」
いやいやいやいや勘弁して下さい。なんでこれが素晴らしい解決策みたいな事だと思ったんですか。二人は薄い本の内容をパラパラと見て、まるで汚物を見るかのような視線で、そんな視線で私を見ないで下さい、滅茶苦茶恥ずかしい、もう死にたい…。
「彼女さんが居たんですね鈴木さん。こんなプレイまでしちゃって。それならそうと始めから言ってくれれば良かったのに酷いです。そしたらこんな…こんな…」
そう言って肩を少し震わせている佐々木さん。恥ずかしい気持ちは一気に下がって、申し訳ない気持ちで一杯になる。
「あっいやっそのあっあっ…」
彼女じゃ無いんです。それにお付き合いしている人がいなかったのは事実で隠していた訳では無いんです。彼女が居たら諦めたのに、居ない風な感じを私が出していたからグイグイと押したのに、という事だよね? ごめんなさい。しかし上手く言い訳を思いつけないのでアウアウと言う事しか出来ない。
「こんな恰好で来ないで裸でくれば良かった!」
「お前も変態かよ! あっいやっすみません。言葉のあやで…」
キッと、きつい目になった佐々木さんに慌ててフォローを入れる。
「誤解しないで下さい!」
「いや本当すみません。申し訳ない」
「私ならこの上を行けます!」
「何自慢だよ!」
「ところであなた、何でそんなに死んだ…んっんっ、無表情なの?」
「うむ、これは無理矢理ヤラレタ後に見せる絶望の、心が死んでしまった表情なのじゃ。主の趣味で徹底して演じているのじゃ」
「はぁ」
呆れる清子さん。
「はぁ~とりあえず洗濯の人手は足りそうね、帰るわ一郎。ただプレイに熱中してても良いけど返事位はしなさいよね、心配するから。お邪魔様でした」
それ違うんです、誤解なんです。とは言え佐々木さんの前で神様の話をすることは出来ず、そのままプリプリとしながら出て行ってしまった。ごめんなさい後でちゃんと説明しますね。それよりも佐々木さんだよな帰って貰わないと。
「本当にごめんなさい。今日の所は一旦お引き取りしていただいてもよろしいでしょうか?」
「いいえ。鈴木さん洗濯はしておくので、気にせず遠慮せずに続きをして下さい。決して覗いたり参加したりしませんから」
いや出来ねーよ、じゃなくてそもそもそんな事してませんよ。それにそれフリですよね? そして佐々木さんは無表情になって、まるで放心状態のように。
「そういう演技も要らないので。今日は大丈夫なんで。本当にごめんなさい」
「ええー? 結構いけてたと思うんですけど…」
そう言って再び放心状態を演じている。いやいや大丈夫ですと言って玄関に向かって誘導して、余りよろしくないけど背中を押しながら、そして謝罪を繰り返しながら出て行って貰った。はぁ~もう会社行きたくない。
部屋に戻ると神様がニコッっと少しだけ笑った。ドキッ、マジ可愛い。じゃない、神様にも帰って貰わないと、この神様には誤解が無いようにはっきりと言わないと駄目だな。ふぅーーーよし!
「神様非常に申し訳ないのですが、帰っていただけないでしょうか?」
「ん? 帰る場所なんて無いのじゃ。このままここに居るのじゃ」
「え?」




