3-4 旅番組3
2019年9月28日公開分 四話目。
3-1 告白2 清子さん雅美さん2 から公開。
ロケバスの最後尾の席は少し豪華になっており、何故か羽口さんが真ん中に座っている。私はどう対処して良いのか分からないのでスタッフと同じ場所に座って横浜に向かう。今回の練習は撮影テストも含めて行うので家庭用みたいなカメラで撮影もするらしい。
横浜からみなとみらい線に乗って直ぐに隣の新高島で降りる、新高島駅は初めて利用したんだけど、物凄くオシャレというか近未来っぽいと感じだ。なるほどねぇぶらり旅だと普段は行かない場所に行くから新しい発見があるな、そして地上にでる。
「何もねー!」
そう、駅前に商店街どころか家が無い、一応建物は有るけど何も立っていない土地の方が多い。ちなみにこのツッコミはセリフです。そしてその一言を言ったらまた電車に乗る、なんじゃそりゃ。
みなとみらい駅に着く。この駅も物凄くオシャレでただの駅とは思えない。キングスクエア方面に向い、とても長いエスカレーターに乗って地下一階から二階まで昇る。やっぱ絵的にもこのエスカレーターは撮影するよな。
キングスクエアは何度も来たことが有る、昔デートで来たこともあった。みなとみらいはお洒落場所が多い、買い物したり、大道芸を観たり、食べ歩きしたり、随分前の話だけど懐かしいな。途中途中で撮影に関する確認をしながら見て回る。
若い頃に比べると建物が増えている、しばらく来ないとこんなに変わるんだな。みなとみらい辺りは景色を見るだけでも結構絵になると思う、そして歩きながら馬車道駅に向かう。
万国橋通りを馬車道駅に向かって歩いていると、マスクをした羽口さんが交差点の角に立っているのが分かった。多分ここが羽口さんがゲストとして登場するポイントなんだろう、この辺は私の台本に無い部分になる。
「名無しさん、どう感触は掴めたかしら? それは良かったわね。私は来る必要も無かったけど初めてなんでしょ? なので練習に付きあってあげるわ。私はここで合流するから驚いてね。で、そこのたい焼き屋でたい焼きを食べて、そしたらその先にお団子屋があるのでお団子を食べます。じゃあ早速練習しましょう」
羽口さんのマネージャーらしき人がたい焼きを羽口さんに差し出す。そして羽口さんが食べた振りをする。
「あっあつ、ほふほふ。うん、美味しい。たい焼きって皮とアンだけでとてもシンプルなんだけど、
それだけにこのアン、もう一口、うん、丁寧に裏ごしされていて、しかも甘すぎず、そしてこの皮との相性が凄く良いわね。皮は少し薄いんだけど、だから甘すぎないアンとのバランスが良いわ」
全然食べないのにコメントしているよ、何で食べずに味が分かるんだよ…。
「はい、じゃあ次は名無しさんの番ね」
先ほどのたい焼きを渡された、私は食べても良いのだろうか? 周囲を見渡す。
「貴方は食べて良いわよ、食べなきゃコメント出来ないでしょ」
いや羽口さんコメントしてたじゃん、まあ私は食べなきゃコメントできないけどさ。そして熱々のたい焼きをほふほふしながらいただく。
「……」
うん、たい焼きだよ。たい焼き以外の何物でもない。普通のたい焼きで普通に美味しいだけだよ。さっきのコメントの後に何を言えば良いんだろう。どうやらコメントが出来ないのが分かったようでプロデューサーから助けが入る。
「名無し、そこは適当な事言っちゃって良いですよ。北海道産の小豆と小麦を使っているので、北海道の大地が目に浮かびます。とか、名無しに味のコメントなんて期待して無いですから」
ひでぇ。いや確かにグルメレポートなんて難しいから有難いんですけど。
「呼び捨てかよ! って言わないと駄目よ」
そして羽口さんに駄目だしされた。周りもうんうん頷いている。ディレクターのはフリだったのか、練習のためにワザとやってたんだよね。いやそうだとは思ったけど、まだうまく切り出せない。
次の団子屋に向かう、この店は支店だけど本店は江戸時代から営業しているとのこと。本店は鎌倉にあるらしい。そして店員のお婆さんと簡単な打ち合わせをしている。
お団子を食べれるかどうかはクイズに答えられるかどうかで、それに羽口さんが答えるらしい。そして正解する事になっているので、お婆さんは正解と言ってお団子を差し出す。これって演出なのだろうか…。
「普段は天然やっているけど、やっぱ分かっているのに分からないふりして間違えるとかキツイわよね。もう天然やめて普通にしようかしら。プロデューサー別に良いわよね?」
えー、そういえば全然ボケてない。プロデューサーは何とか天然キャラをお願いしているが、聞く耳持たないって感じで取り合わない。そして羽口さんの出番の部分(私の練習の付き合い)が終わったのでタクシーで帰っていった。なんだろう、ちょっとトゲトゲしているかと思ったけど、優しい部分もあるからツンデレ? みたいな感じの人なのかも。
そして撮影の段取りをしながら、馬車道駅、日本大通り駅、元町中華街駅などを巡り、山下公園からベイブリッジ方面に向かって歩く。といってもベイブリッジを歩いて渡れないし、山下方面側の橋の麓は一般人が入れるような場所じゃない。
こんな場所初めて歩く、だるま船が多数停泊しているのが見えたり、倉庫が見えたりして港なんだなと実感した。横浜港っていうけど港らしさを感じた事はほとんどなかったからな。
「はい。はいはい。あっ続けておいて」
プロデューサーは電話が掛って来たのか少し離れた場所で立ちながら話している。
私の前をカメラマンが撮影しながら後ろ向きに歩いている、危ないけど良く出来るな。前からおばさんの乗った自転車が来てカメラマンと接触しそうになった。そしてふらついて私の方に来たので避けると、背中に当たった感触とガシャンという音。
おばさんは何事も無く走り去ったけど、振り返った先にはガラの悪い男性が二人いて、花瓶らしきものが落ちて割れている。
「おいおい、何してくれてるの? 大事なものが壊れちまっただろう、どうしてくれるんだ! ああ!」
ガラの悪い二人組の内、一人が不機嫌になりながら迫って来た。カメラで撮影しているから、脅迫じみた事を言えば、警察に相談するのが良いだろう。
それよりもカメラマンが心配だから離れるように、手を下の方でガラの悪い人たちに見えない様に、しっしと振る。するとカメラマンは少し離れた場所で、気が付かれないように撮影を続けている。
「おいおい駄目だよ次郎ちゃんそんな言い方したら。ぶつかったのはお互い様だろ、ごめんね怪我なかった? それは良かった。ただね、こちらも大事な花瓶が壊れちゃったからね、このまま何も無しって訳にはいかないんだよね。仮に50%互いに責任があったんだから、なんの詫びも無しにてのはちょっとね」
もう一人のガラの悪い人がいう事も一理ある、そんなに高くないものならお詫びしても良いかも知れない。
「こちらも不注意でした、申し訳ありません」
「あーあー、この花瓶は三十京の価値はあるんだよなあ。困ったなあ」
絶対に嘘だ。三十京もする花瓶をこんな風に、こんな場所で持ち歩く訳がない。ていうか京なんて金持ってる人いねーよ(兆の上の数の単位)、もうちょっと現実的な値段でたかれよ。
「そんな事をいったらこの人も困っちまうだろ。ただ誠意を見せてくれればいいんだよ誠意をさ」
そして手を差し出して、手の平をクイクイとカムカムみたいな感じで折り曲げた。
「あのそれはお金を渡せば良いという事でしょうか?」
「おいおいそんな事は言ってねーだろ。誠意を見せろと言ったんだよ」
お金を出せと言ったら脅迫に当たるのかもしれない、だから明確に口に出さないんだな。
「あーもうじれったいな。分かんねーのかよ、握手だよ握手」
「へ?」
そう言って二人と握手をすると物凄く喜んでいる。
「お前さんあれだろ、名無し(仮)さんだろ? ファンなんだよ」
「はあ、ありがとうございます」
「オイオイ、これで済んだとは思わねーだろな」
そして次郎ちゃんと呼ばれた男は服を脱ぎ始めた。そしてシャツをもう一人に渡すと背中を見せて言う。
「このTシャツにサインしてくれよ」
「服に書いちゃって良いの?」
「是非頼むよ」
そういうと、もう一人がマジックを出したので、サインをしてあげるとメッチャ喜んでいる。
「お互い気を付けて歩こうな」
「はいそうですね。ところで三十京の花瓶壊れちゃったんですけど大丈夫ですか?」
「仕方がないさ。あー三十京ジンバブエドル位の価値があったんだけどな」
「どこの貨幣だよ! というか、それ日本円だと幾らなの?」
「百円くらい?」
「やっす!」
ガラの悪い二人と手を振って別れて最終目的地に向かう。
「いや、人は見かけとは違いますね。何かあれば警察に電話しようと思って見てましたが何もなくて良かったです」
プロデューサやカメラマンを巻き込まないで済んだので、離れていてくれて助かった。別に私なら殴られても多分ノーダメージだし、包丁みたいなもので刺されても、多分今なら刺さらないと思う。それより他の人に被害が行く方が困るからね。
「で、明日の撮影時に、ここに伝説の屋台が来ます。既に店舗を構えているので普段はここで作らないんですけど、特別に来てもらいます。出されたものを食べたところでエンディングですね」
はぁ、もう全然ぶらり旅じゃないよね。こんなものなのかな芸能界って。




