3-1 告白2 清子さん雅美さん2
大変長い間お待たせいたしました。
2019年9月28日公開分一話目。
2-24 別れ から読み直してもらった方が、色々と思い出せると思うし、より一層楽しめると思うな。
一応前回までのあらすじ
シャルが亡くなったので復活スキルで復活させたら清子さんにバレて正直に話した。
清子さん:関係叔母。総合格闘技の元世界チャンピオン。
雅美さん:関係いとこ。清子さんの娘です。女子高生。茜さんとは中学からの友達。
茜さん:マスクちゃん。酔っぱらいを制止しようとして殴られた。デビュー前からのファン。
三章に入ったけど今までの続きです。歌手を目指すという目標は達成出来たかなと思うので三章にしました。
「これはお金の匂いがするわ」
え? 清子さんから意外な一言が出て驚く。てか、あなた金持ってんじゃん。それ以上稼がなくても良いんじゃ無いの。
「それよりその回復魔法や復活スキル、今後も他の誰かにも使うつもり? 止めておきなさい面倒な事になるわよ」
「どうしてですか? 人を助けるなんて良い事だと思うのですけど」
「一郎。この先この世界中全ての人を救えるの? 救えなかったら関係者から恨まれる可能性もあるわよ。例えば北海道で誰かが亡くなって一郎なら助けられたのに、でも来てくれなかった、見捨てた、ってね。
仮に北海道に移動したタイミングで沖縄で同じような事が起きたら? 医者とか警察とかなら有る程度限界があるのは理解出来ると思う。でもね世界の法則を無視したような超絶な事象、例えば死者を生き返らせる程の力があるなら、そんな限界なんてどうにかして突破できるはずと考える人も居ると思うわ」
「そんな馬鹿な話が…有り得る…のか?」
確かに自分一人で助けられる数は限られる。多くの助けられなかった人からは恨まれるかも知れない。あの人は助けたのに私は助けてくれなかったと。人のためになりたいのに人のために力を使えば恨まれる可能性がある。なんて馬鹿げた状況なんだよ…。
「なので一郎。回復や蘇生はしない事ね。恨みを買っても気に病まない、いや恨まれようとも力を行使するという覚悟が出来ない限り。
それと仮に生き返らせるとして移動すれば移動費が掛かるし、その間仕事が出来なくなるんだから当然報酬が必要になるわ。高ければ金持ちしか助けないのか、となるし、逆に安ければ依頼がひっきりなしに来るだろうし、まともな生活は出来なくなるわよ」
折角の能力なのに人の役に立てないと思うと、少し残念な気持ちになってきた。
「あーごめんね一郎。ただリスクを知った上で行動しないとと思っただけだから。それに仮に世界中の人を助けたら地球は人で溢れてしまうわよ」
確かに。地球上で誰も死ななかったら人口はどんどん増えて、環境破壊や資源の枯渇が起きるかも知れない。救わない事も地球という視点で見たら大事なのかも。
「でも意外というか、清子さんはこういうの反対されると思ってました」
「なんで? せっかくそういう能力があるなら使わなきゃ損じゃない。んー確かに格闘技の世界で活躍されたら面白くは無いわね。でも神様から貰った能力を私がどうのこうの言うのはおこがましいというか、筋違いよね。
それにもし使い方が間違ったら私では無くて神様が許さないでしょ。それこそ天罰とか与えられるじゃないの」
「天罰…なんか怖いですね。具体的にはどんなのですかね?」
「トラックに跳ね飛ばされて生死の境を彷徨うとか、階段から転げ落ちて骨折するとか?」
「いやそれどっちも経験済みだよ!! じゃない、トラックはスキルを貰う前だから関係無いし。階段はスキルを取得した後…え?」
「ちょっと何本気にしているのよ冗談よ冗談。どっちも経験済みだからというツッコミがあるかなと思って言っただけなんだから、まったく一郎はビビり過ぎない?」
慌てて訂正をしてくる清子さん。すみません私がチキンだから気を使わせてしまって。
「ん? 本当に天罰が下るとしたらどんなのかって? んー雷に打たれるとか天罰っぽくない? しかも連続して何回も直撃するとか。あるいはスキルを取り上げられて使えなくなったりとかね」
確かに雷を何度も受けるなんてことは滅多にないし、空から落ちてくると言うのも何か天罰っぽい。スキルを取り上げるとか、ライブで歌っている最中にスキルを取り上げられたら? え? どっどうしよう。
「少し落ち着いて一郎たとえ話でしょ。それに力を取り上げるならもっと早く取り上げるんじゃないの? 神様なんだから有る程度先を見通せるんじゃなくて? 天罰を与えるのだとしたら、力を失っていてもおかしくないわよ。まだ取り上げられていないって事は、まだ大丈夫って事じゃないかしら」
天罰が下るかもと考え始めたらちょっとだけパニクってた。私を諭すように語り掛けくれる清子さん。きっと自分一人でこんな事に気が付いたら悶々と悩んだと思う。清子さんに知って貰って良かった、気持ちが大分楽になったな。
「で、お金儲けの話なんだけど。鑑定使えば宝くじで当たりが分かったりするんじゃない? あと宝石やブランド品や骨董品の偽物と本物を区別出来たりとか。え? 未来の結果まで見通せるようなスキルじゃない? ……だったらスクラッチくじとかだったら分かるんじゃないの?」
「なるほど!」
実際にお手製のくじを作って貰って試したところ、鑑定で当たりが分かる事までは確認出来た。スクラッチくじで当たりが複数枚入っている物を買えば少なくても最低額以上の金が入るって事だよな。頭良いな清子さん。鑑定のRを上げれば当たりの内容まで分かるかも知れないし、必要性が出たら鑑定のRを上げようかな。
「でもさっきも言った様にスキルが人にバレてしまったら、周りの人が敵に回る可能性も有るわよ。なのでスキルを使うのは程ほどにしておきなさいね」
「あっでも、一人だけ回復スキルを使いたい人が居て。私が酔っぱらいに絡まれた時に怪我された方がいたじゃないですか、良く路上ライブを見に来てくれた女子高生でマスクしてた方。
そう、その人。で、今日横浜駅でその方に偶然会ったんですけど頬に痣が出来ていて、どうやら酔っぱらい時の怪我が原因のようで」
「何それ! 治さないと駄目よ! でも本人にバレたら駄目よ、本人にバレない様に治しなさい」
ハードルたけーな。というかマスクちゃんって此方から会うなんて出来ないし、住所とか知らないし。というか会いに行くとかストーカーと勘違いされても不味いよな。多分ライブや放送局とか出待ちしているところで偶々会えるかもだけど、そのタイミングで直したらバレる気がする。
「確かに気が付かれずに治すのは大変そうね。うーん雅美と同じ学校だと思うから、雅美にも有益な情報が無いか聞いてみるわね」
「下の名前が茜ちゃんという事は知っているのですが、苗字は教えて貰っていないので、下の名前だけで確認して貰えますか? まさか鑑定使って苗字を知っているとは言えないので」
まあ都合良く知り合いなんて事は無いだろうから、その辺はあまり期待しないでおこう。とは言えどうやったら気が付かれずに治せるかも考えないとな。
「しかし羨ましいわねポイントを溜めれば何でも出来るなんて。きっと一郎には悩み何て無さそうね」
「そんな事無いですよ、凄く困ってます。最近忙しすぎて洗濯物が溜まっていて、夜中に洗濯機を廻せないから近くのコインランドリーまで持ち込んで、そのためただでさえ少ない睡眠時間が更に減って」
「ふーんそれは大変ね、じゃあ私が洗濯しに行くわよ? 遠慮しなくて良いわよ別に今さら」
「いえいえ悪いですから。それに仕事もあるでしょうし」
「会社なんて週一回位出社すれば十分よ。外からだって指示は出せるんだし。後は皆がしっかりやってくれるから大丈夫、困ったら言いなさい。
それとお金も稼げているんでしょ? 引っ越せば良いんじゃない夜中に洗濯が出来る場所に」
週一出社でいいとか羨ましい、社長だし大半の稼ぎが清子さんのお陰だからそれでも良いのかもしれないけど。普段会社に行かないのは市場調査って名目らしい。ちなみに私も週一、二出社ですけど他の日は芸能活動しているから殆ど休みが無い。
清子さんは現役時代に会社を起業している。世界中から売れそうな物を探しては日本に持ち込んで、それをブームにしてしまう。大抵持ち込むものは日本国内の代理店契約を結んでいるので結構な利益が出ているみたい、凄いよねぇ。
でも引っ越しかあ、夜中に洗濯機を廻しても良いところに引っ越すかな? あと都心に引っ越せばTV局への移動時間が減って良いかもなあ。遠くに行く時の事も考えると飛行場や新幹線への乗り継ぎも重要かな。
「あとメンタルをもっと鍛えなさい。スキルを使っているせいか知らないけど以前より弱くなっているんじゃないの?
人生辛い事なんて一杯あるんだし、たとえ失敗しても生きてさえいれば儲けもんよ。それに本当に駄目な時は私が支援出来るから失敗なんて気にしないでもっとガツガツ行きなさい」
ありがとうございます。もっとこう、何ていうか男らしくというか、頑張りたいと思います。
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「シャルちゃん持ち直したんだって?」
帰宅の挨拶もそこそこに、リビングで母さんに軽くハグをする。母さんもハグを返して背中をお互いに軽くトントンと叩く。帰って来たばっかりだから多少汗臭いかも知れないけど、それは別に良いわよね。
「ええ。凄く危なくて一度心臓が止まったんだけど、なんとか持ち直したみたいで。でももしかしたら治るかも知れないの」
「へっ? へぇー。そっそれはあの、治ると良いわね、うん」
治らない病気だったんじゃないの? 偶々今日は大丈夫だったかもしれないけど、でも否定するべきではない程度の空気は読める。しかしこの後亡くなって気を落とす事になるかも知れないし、それとなく難しいかもって事は、ほのめかした方が良いかな。
「でも不思議ね。難病だったのに治るなんて」
「!」
私の問いかけに母さんが一瞬動揺した。しまった、もう少し回りくどく言った方が良かったか。
「そっそうね。でも…、そう、一郎も一旦心臓が止まってから復活したんだから、峠を越えると何か大丈夫になったりするんじゃないかしら」
「そっそうよね。峠を越えたら良くなるかも知れないわね。うん、うん。そういえば、一郎さんも凄いわよね、心臓が止まったのに生き返るとか」
よし、しばらく一郎さんの話題に変えよう。
「今日たまたまその話をしたんだけど、この世に未練というか何かがあって戻ってこれたみたいよ。ただ何が未練だったのかは教えて貰えなかったけど」
「そっそうなんだ。でも何なんだろうね未練って」
「うーん、そう言えば私は知っていると言ってたわね? でも思い当たる節が無いのよねえ」
「なら知っているんじゃないの? え? 思い当たらないの? うーん、今日どんな話をしたか教えて貰える?」
今日会話した内容を色々と聞いて気になるキーワードが幾つか出て来た。これは一郎さんが可哀想になるわ。でも一郎さんが直接母さんに言っていないのに私が伝えるのは良く無いわね。でもここまで鈍感だと、流石に何というか、はぁ~。
「母さん、それ一郎さんが可哀想だよ。そこまで言っているのに気が付かないなんて」
「え? 雅美は分かったの? 何なの教えてよ」
あーもう、腹立たしいわね。
「母さんの事を家族だと思っているって、しかも母親とも、姉とも違うって、じゃあ何なの?」
「叔母?」
「うが~~! 違うわよ!! そもそも叔母は一般的な家族って括りに中々入らないわよ。もっと別のがあるでしょ、血のつながっていないけど身近な家族が!」
「? 叔母より身近な家族で血が繋がっていない……!? なっ何をいってるのよ! そっそんな訳ないでしょ! 妻、妻!? 妻なんて訳ないでしょ!!」
「だって一郎さんと母さん付き合っているんじゃないの?」
あー言っちゃった、でもこのままじゃ一郎さん可哀想だし、私もハッキリした方が何というか落ち着くしね。
「何バカなのこと言ってるの! 付き合っている訳無いでしょ。叔母と甥の関係でしかないわよ」
手をバタつかせて顔を仰ぎ慌てて否定しているけど嘘くさいわよねー。私は色々と感付いているんだからさ、というか自分から言ってなかったっけ?
「えー! 付き合っているんじゃないの? そのあの、あれでしょ、家でほら、何というか、あの…だから…」
「何よ、歯切れが悪いわね。もうちょっと言いたいことが有ればズバッと言いなさいよ」
いっ言えないよー! 母さんじゃないんだから、家でセッ〇スしているんでしょなんて!!
「一郎とはお付き合いはしていません。男女の関係じゃないわ」
「そっそうなの? でも、ほら、運動しているというか…」
「何か勘違いしていない? 一郎とはスポーツ、とはちょっと違うか、練習、うん練習ね。練習しているだけよ」
「練習なの!? 一郎さんもそう思っているの?」
「そうよ練習よ。まったく変な誤解しないでよね」
「そっそだったんだ。練習ねー練習…」
一体何の練習よ! 練習ってことは本番もあるの? ほっ本番!? 違う違う、そうじゃなくて。一郎さん弄ばれているのね、本当に可哀想だわ。
「そうだ、ちょっと聞きたいんだけど学校に一郎のファンで」
そこまで聞いて一人思い当たる。
「デビュー前から応援してくれてて」
可成り確度が高くなった。
「茜ちゃんという子なんだけど知ってる?」
思った通りの名前が出て来た。
「多分その人と思われる子を知ってるよ、中学からの友達だもん。なんで茜ちゃんの事を尋ねるの?」
「! えっと、そう、一郎がね、今日会ったんだって偶然、横浜駅で。同じ学校だったから知ってるかなーって。その、一郎が感謝してたんだよね。一生懸命応援してくれてたから」
「ふーん。何か茜ちゃんに伝えた方が良い? 別に良いの? そう良かった。ん? あー学校では一郎さんが親戚だって伝えてないから。伝えたら面倒になりそうじゃない? サイン頂戴とか、文化祭に呼んでよとか。
特徴? 何で特徴なんて聞くの? いつもマスクしていて素顔が分からないから? 普通に良い子だよ? 中学の頃から音楽に興味があって、デビュー前のバンドとかの追っかけを良くやってるわね。あとは、あっ、いや、あんまり言うのはちょっと。
うーん変な風に情報を使わないでよ。顔に痣が出来ちゃって、何か酔っぱらいに絡まれたとかなんとか、時期は確かこの前の冬くらい? でも随分時間が経っているのにまだ治らないってのは可哀想よね」
当然スキルの事などは雅美さんに話して無いですよ。




