2-26 覚悟
2019年3月7日、公開分、四話目。
2-23 バズった から公開しています。
シャルが死んでしまった。自分の不甲斐なさが嫌になる、病気を治せるスキルが欲しかったが手に入らなかった。どんなに願ってもそんなスキルは候補として出てこなかった。シャルを助けたかった。蘇生スキルや復活スキル、何でも良い助けて欲しい。
「200ポイントを消費し、復活スキルを習得しますか? “はい”、“いいえ”」
「あんのかよ!!」
思わず声に出してしまった。清子さんがこちらを見て怪訝な顔をしていた。
「こんなに辛い事ってあるのかよ…」
ぼそっつぶやくと、清子さんが頭を抱きかかえてくれた。苦しかった気持ちが少し落ち着いてほっとする。そして、“はい”と答える。
「復活スキルを習得しました。アクティブスキルなので任意での発動が必要です。復活対象者のLVに比例して復活に掛かるコストが増えます」
エマが医師と看護師を連れて戻って来た。
「先生、シャルがシャルが…、助けて下さい!!」
どうする復活させるなら今だ、だけど、復活しても病気が治らなければまた苦しい闘病生活を送るのでは? 本当に復活させるのは正解なのか?
どんなに光魔法が高Rになっても難病を直すことは出来ないかも知れない。シャルに辛い時間をずっと与えてしまうかも知れない。復活させるのは私のエゴなんじゃ…。そんな事を考えている間にも医師による死亡確認が行われている。モニターの電源がオフになって波形も消えた。
「十八時三十ニ分お亡くなりなりました」
医師がそう伝えるとエマは泣き崩れた。そして医師の腕にしがみついて訴えかける。
「助けて下さい、お願いします!!」
しかし、そんなエマに医師が優しく諭すように言う。エマの手の上にもう一方の手を添えて。
「シャルちゃんは凄く頑張りました。皆さんも頑張ったと思います。本当に良く頑張ったと思います。事前に蘇生はしないと取り決めしていましたよね。今仮に生き返ったとしても、また辛い闘病生活が続きます。治す方法は無いんです…」
そして医師と看護師は一礼して席を外した。泣き崩れるエマ。でももうこのタイミングしか残っていない。
「エマ、シャルに生き返って欲しい? ずっと苦しい闘病生活が続いて、治らないかも知れないよ。それでも生きていて欲しい?」
エマにドイツ語で問いかけた。
「生きていて欲しい!! シャルに生き返って欲しいわ! そのためなら何でもする…助けて」
強く激しい気持ちが伝わって来た。私も決めた。必ずもっとLVをあげて救う方法を考える。魔道具、薬学、錬金術、他にも病気を救える手段があるかも知れない。ならば今は生き返らせる。
シャルに向かって復活スキルを発動させる。一万円必要と確認が出たので“はい”と答えた。
名 前:シャルロッテ・ランゲ
H P:1/5【30】
状 態:瀕死
そして、ヒールを掛ける。
名 前:シャルロッテ・ランゲ
H P:5/5【30】
状 態:衰弱
あれ? 難病ではなく衰弱になっている? でもまだ油断は出来ない、病気が治った保障など無いのだから。念のためディオールを唱えてみたが、衰弱は変わらなかった。
「あれ? シャル? 息をしているわ! 先生! 先生!」
慌てて病室から出て医者を呼びに行くエマ。
「一郎。貴方何かしたの?」
清子さんが私を疑っている。
「はい? ちょっと驚いてしまって何がなんだか、でも生き返って良かった」
清子さんは私を睨んだままだ。
「隠しても分かるのよ」
清子さんは、にらみ続けるが、しらを切り続ける。
「おかしいわね。いつもなら動揺するのに、何で動揺しないの? 本当に関係無いの?」
「清子さん大丈夫ですか? 私も混乱していますが、あまりにもおかしなことを言うから逆に冷静になってきました。それに歌を歌うようになって人前に出る機会も増えたから落ち着きが出たのかも知れません」
復活スキルを取得した後、演劇スキルを覚えてR2まで上げた。ポーカーフェイスの技が有ったのでそれを合わせて発動させておく。
「おかしいわ。なんで言い訳をするの? 動揺しない態度が正当だという理由を言うの? 冷静なのは理由があるんですと? 前から怪しかったのよね。歌が急に上手くなったり、物凄い球が投げれたり、そしてエマに何かを尋ねた後にシャルちゃんが生き返った。今までなら慌てふためくような状況でもそれが表に出ない。そしてその上腕筋、大胸筋、広背筋…。絶対何か有るわ」
エマが看護師を連れて戻ってきた。
「ええ!? ちょっと待ってくださいね」
看護師はシャルを見て、慌てて医者を呼び、医者も生き返った事を認め、再度心拍数などが表示されているモニターの電源が入った。医者は死亡確認に誤りがあった事を謝罪した。
清子さんが外に行こうと指で示したので頷いて病室を出る。私には表に出ろと言われている気がした。人目の無いところに行きたかったので中庭まで歩く。街灯がつき、虫が飛んでいるのが見えた。
「一郎、貴方何か隠しているのでは無くて?」
「……」
「私は聖子が亡くなってから、聖子に一郎の事を託されたと思っていたわ。家族だと思っていた。でも最近の一郎は変だわ。そして最近の私も変だわ…。もしかしたら一郎何か思い当たる節があるんじゃなくって? 通常では考えられない何かをしていたりしない?」
母さんが死んでから、清子さんには大変に世話になってきた。でも本当の事を伝えるのが怖い、何故なら清子さんが疑っているように、スキルを使って人を魅了させている。清子さんは実力で世界を制したけど私は違う。スキルを使ってズルをしている。
だから怖い、しかし家族に隠している事が後ろめたい、でも怖い…それでも、それでも話すべきだ。
「清子さん。私も清子さんの事は家族だと思っています。母親とも姉とも違いますが、上手く表現できないですけど。
私が話す事は全然信じられないような話になると思います。長くなるし、絶対理解出来無いような、狂人のような話をしますが良いですか?」
「良いわよ全て聞くわ」
清子さんは真剣な眼差しで私を見つめている。
「話すのは清子さんの家でも良いですか? 一応人気の無いところに来ましたが、やっぱり不安で。それに落ち着いて会話したいので」
「分かったわ。病室に戻ってエマに挨拶してから帰りましょ」




