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異世界転生しそこなったけど、スキルは貰えたので現実世界で楽に生きたい  作者: ぐわじん
芸能人、歌手を目指す

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2-20 会社

2019年2月23日、公開分、二話目


2-19 決意2 から公開しています。

 朝起きたらLVが二つ上がっていた、フフフ、これは良いね。とは言えゆっくりしている時間も無いので出勤の支度をして直ぐに家を出る。


 会社に着き席に座る、始業開始の四十分前なのでまだ出社している人はまばらだ。ノートPCを取り出しメールを確認して、仕事に関係するWEBを幾つか見た後、コップとポットを持って給湯室に行く。コップを洗い、ポットに水を入れる。執務室に戻りポットの電源を入れてお湯を沸かす。

 あとはコーヒーメーカーの掃除と水の補給、周辺の掃除も行ってから席に戻る。コンビニで買った一リットルパックのゼロカロリー飲料をコップに移して飲みつつ、ちょっと私用のサイトをみたり、また仕事に関係しそうなニュースを見たりしながら始業時間を待つ。


「うううぅぅーー」

 入り口の方を見ると馬場が泣きながら入って来た、そして私の方に駆け寄ってくる。どうしたんだろう? 私が席を立って馬場の方に向かおうと数歩進むと、馬場が泣きながら抱きついて来た。


「うぅーー」

「どうした? 馬場、何があったんだ?」

 私も馬場の背中に手を廻して、ポンポンと叩いてあげる。ただ事じゃないぞこれは、可哀そうに。


「すずぎざーん、結婚してください!!」

「はい!?」

 いきなり訳が分からない事を言って来た。執務室に居る人たちの目線が…。そういうのは人が居ないところで言って欲しい、どうしようシャルの事もあるし困ったな。


「落ち着けって、どうしたんだ? 理由を説明しないと分からないだろう」

 まだ泣き止まず、すずきさーんなどと繰り返している馬場の背中を優しく叩いてあげていると、同じチームの井上さんも泣きながら出勤してきた。そして私の横まで来て横から私を抱きしめてきた。


「うううぅ鈴木さん大好きです。うぅぅーー」

「はい?」

 周りからの視線がより一層酷い事になってきた。そして田中さん、橘さんが泣きながら出勤してきて私の側に、これってもしかして。


「うわーん。鈴木さん大好きです!!」「私も大好きです!!」

 そして私の後ろと横から抱きつかれた。これで四方から抱きつかれた状態になった。何が何だかよく分からないけど、とりあえず好かれているという事で良いのかな? 凄く嬉しくもあるが四人中三人が男性というのは何とも…。あ? お局様が物凄い形相で迫ってくる。おっ怒られる、こっ怖い、馬鹿お前等早くどけ。


「おはようございます春日さん。違うんです。これはあの私のせいじゃない…」


「大好きです!!」

 そして他の人をかき分けるようにして抱きついて来た。紛らわしいー、普段からぷりぷり怒っているから表情が怖いんですよ。それは置いておいて、どんどんと出勤する人が増える都度、私の側に人が集まり、三十人くらいの人だかりになっている。


「お前等なにやってんだ朝から。席につきなさい、鈴木君ちょっと来なさい」

 騒動の首謀者と思われたようで、部長に連れられて会議室に入る。


「鈴木君今の騒ぎは何だ? どうなっているんだ」


「そんなの私に聞かれても分かりませんよ。いきなり出社して来たらあんな感じで。それより馬場さんでも呼んで聞いた方が早いと思います」

 という事で部長が馬場を呼びつける。


「何が原因であんな事になったんだ」


「すみません。鈴木さんの歌に感動して、思わず感情が抑えきれず…」


「「はい??」」

 部長と私が一緒に驚く。部長は私を見るけど、思わず顔を左右に振って、手も左右に振って私は知らないとアピールする。


「凄く上手いんです。通勤中に動画を観たら感動しちゃって」

 はぁ、馬場がその動画をさらに拡散して社内に広がっていると、なるほど。知らないと否定したけど、全然自分のせいだった。


「鈴木君、歌が上手いのは良いけど、他の人の仕事を阻害するような事に成ったら困るよ。副業は本業に差し支えない程度にしてもらわないと。本業に差しさわりがあるなら副業は認められないよ」

 部長は厳しく注意してくる。いやそんな事になるとは思っていなかったので、ただ他の人の業務に支障をきたしているとしたら申し訳ない。でも歌手になるのは最優先事項、そろそろ覚悟を決めないとだな。


「申し訳ございません。ただ…、実は、その、歌の比重を上げようかと思っていまして、幸いにも今はプロジェクトにも参画していませんし、会社を…」


「ごめん! ごめんね。そんなつもりで言ったんじゃないんだ。決して辞めろよって言いたい訳じゃなくて、本業に差しさわりがあったら良く無いなーって思っちゃったから。会社を辞めろって言ったんじゃないからね」

 急に柔らかい物腰になって来た。でも部長は間違っていないと思うんですけど。


「部長理解しています。部長の言っている事は正しいです。ただ、歌の比重を上げて場合によっては退職も考えております」


「そうか…鈴木君には期待していたんだけどな。でも鈴木君の歌はそれほど上手く無かった印象なんだが、さわりだけでもいいから一曲歌ってもらえないかな。そんなに素晴らしいなら是非聞いてみたい」

 昭和の歌謡曲で良いかな、部長が以前カラオケで歌っていた歌を歌う。


「ほげーほげげげーほげー♪」

 部長の顔がうっとりとしてきて、そして歌い終わる頃には涙が頬を伝っていた。


「素晴らしい。…よし分かった俺に任せろ! 歌手になりたいんだろ? 会社は辞めるな!」


「ええー」

 普通は会社を辞めても良いよとか、頑張れとかじゃ無いの? 事実は小説より奇なりだね。


「鈴木君、今日から君は広報部だ!」


「はい? うちの会社に広報部なんて無いですよね?」

 何を言い出しているんだこの人は。


「これから経営層の定例会議だし一緒に行こう。広報部作っちゃおう、そして君は広報として会社の顔になるんだ」

 いやいやいやいやおかしいだろそれ。


 社長、役員、部長の方々が集まる会議室に連れられて、そんなに大きな会社じゃ無いから皆顔見知りだけど。部長は一番最初の議題として広報部設置とその部長に私を推薦すると言い出した。当然、他の参加者は何言っているのコイツ状態だったけど、是非歌を聞いてくれという事で一曲歌ったら即決定となった大丈夫かこの会社。


「ヨンミュージックとの絡みもありますから、ちゃんと相手側と合意してからですよ」

 契約でもめると不味いから、ちゃんと事務所と相談して契約書を交わして、広報部としての活動内容を決める事にした。とりあえず籍は会社に置きつつ、もっと芸能活動して良いという事で。

 私は歌を歌っているのが仕事、正確には歌が物凄く上手い人が所属(・・)している事で会社の評判が高まるのを期待されている。


 席に戻り、ヨンミュージックの担当にラインを入れる。歌が更に上手くなったので、まだ動画再生数が百万回を超えていませんがデビュー出来ないでしょうかと、併せて広報部の件も伝える。


 そしてしばらくして、事務所から電話がかかって来た。


「凄いよ鈴木さんこれならデビュー出来ると思う。え? 時期? うーん、社内での承認手続き、売り出す方針を決めて、作詞作曲とかの準備、宣伝方法、業界への売り込み、三カ月はかかると思うけど、現時点ではいつになるかは約束出来ないな」


「そっそんなに!?」

 

「それとデビューするなら今の動画配信も一度止めた方が良いね。既に公開している動画はそのままで良いけど。今までは素人みたいなものだから良かったけど、本当の歌手になるなら、ちゃんと手続きをした上で利用許諾を得たものを歌わないとね」


「そっそんな、動画配信は絶対必要なんです。詳しく言えないのですが動画配信は私の命みたいなもので絶対に必要なんです。

 …例えばですが、海外の場合、著作権は死後七十年以上で無効というか切れたりするじゃないですか、シューベルトとかモーツァルトとかの歌なら大丈夫だったりしませんか?」


「まあそれくらい古い歌なら大丈夫だけど、原曲を正確に歌わないと、例えば日本語の歌詞に翻訳した場合、翻訳された著作物は翻訳者死後七十年保護されるから。まあ他の曲で利用許諾を得られないかも社内で調整するから」

 しばらくは古い音楽を中心に活動するしか無さそうだな。

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