03 ステータス
さて、異世界転生や転移もののテンプレの一つで思いつくのはステータス画面だよね。頭の中で出すように念じてみたが表示されないな、想像したら空間に字が浮き出ると思ったんだけど、声に出さないと駄目なのかな?
「(ステータスオープン)」
小声でつぶやいてみたが、全然変化が無さそう。もう少し大きい声じゃないと駄目かな?
「ステータスオープン!」
うぁっまじかよ、まいったな、うん、結果は凄く恥ずかしかった。
「どうかしましたか?」
ちょっと大人のグラマーな看護師の太田さんが病室に入ってきて、見られてしまった。
「いや、スチームオーブンを思い出して。欲しいなって思ってて、でもちょっと忘れてて、急に思い出したので……」
「そうですか、てっきりステータスオープン!! って言ってたのかと、いきなりどうしたんだろうと思っちゃいました」
めっちゃ聞かれてるんじゃん。すげー恥ずかしいんですけど。
「いっいやだなぁ、ステータスオープンとか。何ですかステータスって」
太田さんが怪訝そうに見てる、まあ、別に良いじゃないか、もうその話は。
太田さんが出て行ったので、再度考えてみる。あれかな、転生転移先は冒険者ギルドみたいなところでステータスボードにかざして分かるタイプの世界だったのかも、なんだちょっと残念。
その後色々と試行錯誤した結果、幾つかのスキルが存在する事が分かった。ただまだまだ種類があるだろうからスキル選びは慎重にしないと、幸い暇な時間はいくらでもあるし。それでも、どうしても、試したい覚えたいスキルがある、それは鑑定だ。鑑定最強はテンプレだったはず。うん、これはやっぱり我慢できないっす。
「3ポイントを消費し、鑑定スキルを習得しますか? “はい”、“いいえ”」
はいです、はい。うひひー。
「鑑定スキルを習得しました。アクティブスキルなので任意での発動が必要です」
やったー、やったぞ、天国の母さん俺やりましたよ。夢かないました。もう死んでも悔いは無いです。いや嘘です。鑑定使って無双したいです、それから死にたいです。嘘です、やっぱり死にたくないです。それでは早速使ってみよう。
『鑑定』
部屋の花瓶に対して鑑定を発動してみた。花瓶に対する説明文が、すッすごいぞ空中に文字が見える。
「説明:花瓶」
はぁ、花瓶は花瓶だけどさ、そんなのは分かっているですけど。なんかガッカリ感が半端ないですけど。鑑定覚えたら、なんだろう情報量から無双できると思ってたんだけどなあ。てか異世界じゃないから、大抵は知っている情報だし、もしかしてあんまり意味が無かった?
いやまだだ、何か別の使い道があるかも知れない。自分の手を見て鑑定を発動してみる、ステータスウインドウのようなものが表示された。やったぞ、明日はホームランだ。
名 前:鈴木一郎
職 業:会社員
L V:1
H P:3/10【100】
SKP:41/47【50】
M P:50/50
STP:5/50
攻撃力:1
防御力:1
素早さ:0
器 用:1
知 力:15
羞恥心:21
状 態:瀕死
スキル:HP自動回復R1、痛み耐性R1、鑑定R1
特 別:言語理解R2
称 号:生還者、新米勇者
スキル習得ポイント:94
うわっ私のステータス低すぎ? ステータスウインドウは赤みがかったオレンジ色で、ゲームなら正直死ぬ寸前って感じの色合いだな、状態が瀕死だものね納得。ヒットポイント今は3で最大値が10か。【】は本当の最大値で、今は何らかの制限で10までしか回復しないって事だろうか?
攻撃力1とかスゲー弱そう、防御力も1だし、でも知力15って高くない? 私は脳筋ではなく頭を使うタイプだったのかも知れない。ところで一番高い値が羞恥心って……。羞恥心ってどんな効力があるんだろう? 想像もつかないな。
スキル習得ポイントが94か。確かスキルを覚えるのに使ったポイントの合計が6だから、最初は100有ったのかもしれない。最初にくれる量としては結構大盤振る舞いなんじゃないの? あーもう少しカードを確認してから復活したかった。
いや、でもあのタイミングで復活しなかったら本当に死んじゃって異世界に転生しちゃったかも。それはそれで楽しそうなんだけどねぇ、ゴブリン狩りとかしてみたかったしな。あれ? この世界って化け物居ないよね、どうやってLV上げるんだろう? これはしくじったかも知れない。
経験値を取得する方法が無かったらどうしよう……残りの94ポイントは慎重に使わないと駄目だ。まずは思いつくスキルを沢山確認して、それから選択だな。とりあえず五十個、五十個のスキルが見つかるまでは、これ以上は覚えないでおこう。よし、そうと決まれば思いつく限りのスキルを並べてみるぞ。
コンコン、とドアを叩く音がした。
「失礼します。中村です入ってもよろしいでしょうか」
どうぞ、と答えると看護師の中村さんが私服で入室してきた。謝罪はさっき受けたけど、なんだろう?
「先ほどは大変申し訳ございませんでした…」
どうやら再度謝罪に来たらしい、いや別に良いですよ、そのおかげでスキルが覚えられたし、いや待てよ看護師と言えば命を預かる職業、あんまり適当では駄目だな、いやでもそれを私が指導するのは何か違う気がするし、私の言動で人生を変えてしまっても責任が取れないから、適当に流そう。
「あの、お詫びと言っては何ですが、その、あの、何かお願いしたい事とかあれば、言って下されば…」
うん? いや別に良いんだけど、もしかして何かのフラグが立ったのか? ゲームじゃあるまいし、それは無いか。それに今は体力が無いし、ムフフな想像はちょっと止めておこう。
仕事の失敗はちゃんと振り返りして、再発防止策を考えるのが大事なんだけど、それはそれで病院としてやるだろうから更に何かって事だろう。
「お気持ちは有難いのですが、今は安静に、体を休める事に専念したいと思います」
無難に、無難にだ、当たり障りが無いようにしとかないとな。
「そっそうですよね、あの例えば、外で何か買って来てほしいものがあれば、今度代わりに買って来ますので、言って下されば。本当に申し訳ございませんでした」
そっそういう意味ですよね。すげーはずかしい、馬鹿だよなあ俺。分かりましたと、返事をして帰って貰った。気を取り直してスキルの確認だ。
翌朝、起きて昨日発覚したスキルを再度思い出す。うーん、困った、数十個スキルが分かったんだけど、それを記憶しておく頭が無い。数を数えたくても指折り数えるのも難しいし、一度出て来たスキルと重複しているのかもあるかも知れない。
でも、四十個は行けた気がするんだよなあ、もう少し回復すればノートとかに書き留めるんだけど。あれか、清子さんに書き留めて貰うか? 絶対無理! 中二病って言葉を知らなくても、絶対勘違いされるに決まっている。じゃあ、中村さんにお願いするか? いや、もっと無理です。恥ずかしすぎて死んじゃうわ。
『鑑定』
HPがどれだけ回復した確認したかったので、再度鑑定してみた。ちょっとだけ変化している気がする。
H P:4/10【100】
SKP:44/47【50】
M P:50/50
STP:10/50
羞恥心:35
HP自動回復スキルがあるのに、HPが一晩で1しか回復してねーよ、宿屋に泊まったら全回復とかじゃないのかよ。ゲームとは違うのか、はあ、これは結構厳しいな。それと羞恥心がなんか上がっている気がする、前回は20台だったはず。まあ、そこはどうでもいいか。
「おはようございます……」
驚愕の表情で止まっている中村さん。なんだ? 私なんかしちゃったのか? スキルを使い過ぎて何かしでかしたのかも、どうしよう。つかつかと歩いて、中村さんの手が伸びて私の頬を触り、顔を横に向けたり、少し胸をはだけさせて覗いたりしている。なになに朝から何のプレイですか、期待していいのでしょうか?
「あっごめんなさい。あの、無数にあった傷跡が凄く目立たなくなっていたもので。一体どういう事なのかしら?」
なるほど、HP自動回復スキルで怪我の跡が目立たなくなるほど回復したという事か、これは驚くね。
その後、何度か鑑定を実施して分かったことがあった。鑑定を一回実施する毎に、SKPが3減っていく。それと時間で回復するみたい、二分で1回復って感じ。
ナースコールのボタンを何時でも押せる状態でSKPが無くなるまで鑑定しまくってみた。幸い0になっても何のデメリットも無く、スキルが使えないだけだと分かった。まあ、現在瀕死だから、そっちのバッドステータスが有効で、気が付いてないだけかも知れないけどね、もう少し調べてみよう。