2-6 異世界勇者
2019/2/23占星術を占いに変えました。
三枚の舌が迫ってくる、剣でそれらを切り落とし、踏み込んで一気に距離を詰める。“斬撃”蛙の頭からお尻まで剣が通り、まるでアジの開きのように左右に広がって後ろに倒れた。
左から緑色の霧が視界一面に広がった、HPが削られる。すかさずバックステップで毒霧から距離を取る。
「“ディトク”」
解毒の魔法が仲間から掛かり、HPの減少が止まった。ケットシーが猫パンチをすると、蛙の動きが一瞬止まる、上下左右に引っかくと蛙は碁盤の目のような傷が付き、回し蹴りで大きく跳ね飛ばされた蛙は木に当たり地面に落ちて動かくなった。残っていたもう一匹の蛙は、ドワーフの斧で潰されて戦闘が終わった。
倒した蛙に近づき、両足と両手を切り落とし空間収納にしまう。更に開かれた体の中をまさぐると紫色の水晶のようなものが見つかった。周辺を見渡すと、千G位の貨幣と、解毒剤、何かの袋が落ちていたので拾う。
少し離れたところに蛙が見えて、向こうもこちらに気が付き近づいて来たので剣を構えるが、矢が当たりヘイト(敵愾心)が移って別の方向に跳び始めた。その先にはエルフの女性がいて、矢をどんどんと打ち込んでいる。
あと一跳びでエルフを攻撃出来る場所まで到達し、襲い掛かる瞬間に矢が当たり絶命した。エルフは殆ど移動せずに矢とドロップの回収をする。
「おい。今のはマナー違反だろ。エルユー!」
エルユーことエルフの女性はアッカンベーをしてそれに答えた。まったく、あいつはいつもそうだ。敵は限られているので、互いに譲り合って戦わないとだめなのにな。
「どうだった?」
気を取り直して、PTメンバーにドロップの確認を行う。
「魔石とゴールドと解毒剤かな」「同じく」
特に当たりといったようなドロップは無かった、当たりがあるとすればこの袋位だろう。袋をケットシーのネコレンに投げ渡す。
「あいあい。開いたよー。トラップ無しだったニャー」
ネコレンは罠解除のスキルを持っており、このような物を開けるときには重宝する。そのまま袋の中の物を取り出し鑑定を行っている。
「指輪が三個、効果は特に無し、店売り三千~五千G位じゃない?」
こんな奴らから手に入るドロップなどたかがしれているからな、まあこんなものだろう。
「なんかお腹空いちゃったね休憩しない? 蛙の肉、余ってたら売って調理するから」
ローブを纏ったスレンダーな女性、しかし胸はちゃんとある。耳が若干長いのはハーフエルフの特徴だ。そのハフリは調理スキルを持っているので、野外活動でも美味しい食事が食べられる。
「ええー、調理した料理は販売するんだよね? 肉あげるからタダで調理したものを食べさせてよ」
ドワーフのドワカジが不満を漏らす。
「ルールを決めたでしょ、ちゃんと相場価格で買い取っているし、相場価格よりも若干安めに売っているじゃない。嫌なら貴方には売らないから自分の持っている物で食べなさい、私が作った料理なら特殊効果も付くんだからね」
しぶしぶと言った様子で、蛙肉を売り渡していた。
「そうだよ文句を言わない。ところで蛙肉だとどんな効果が付くの?」
「毒ね」
「駄目だろ!」
「冗談よ。跳躍力二倍、効果は数秒かしらね」
「微妙だなー。食べている間は効果が出るなら口の中でモグモグしながら戦えば良いのか?」
出来た料理を食べ終えたところで、今後の方針について確認する事にした。
「この狩場は後三時間で終了となる。次は南か北の狩場になるけど、あと一、二時間程度狩りして最寄りの村に戻るか、このまま村に戻るか。あるいは直接南か北の拠点となる村に転移するかだけど。転移拠点登録している?」
南の村が二人、北の村が二人か。どっちもどっちだな。ドワカジとハフリとは今日PTを組んだばかりだけどここでPT解散する気は無いようなので、あと一、二時間程狩りをして帰還かな。
「しかし、まあ、なんというか勇者っぽくないよね。あえて魔族の拠点を攻略せずに戦い続けるとか」
ドワガジが愚痴をこぼす、まあ気持ちは分かるが。
「LVが低いんだから仕方が無いだろう。今俺らがLV100前後で、魔王を倒すにはLV1000が十人とか百人とか、いやLV800が千人必要とか噂されているし、全然足りないだろ」
「そうよね敵も取り合いだし、なかなか厳しいわよね。だから人間の支配地域は五割、魔族三割、残り二割を奪い合ってLV上げしているんだもんね。魔族は生かさず殺さずってね」
「いや殺してるじゃん。でもハフリは良いよね調理してれば経験値入るんでしょ。作れば作っただけ儲かるじゃん」
「ドワカジだって鍛冶スキルで鉱物から鉄作ったり、武器作ったら経験値入るじゃない」
「調理の方が日常的に作るんだから、経験値入るじゃん」
どうでもいいやり取りが続く、二人のじゃれ合いをしばらく聞き流す。
「ねえヒトセン、一番強い勇者って今LVどれ位なの? ニャー」
ネコレンも二人の会話に興味が無い様だ。しかし無理やりニャーをつけなくても良いと思う。
「確か600以上とか聞いたことがあるよ、噂だけど。今はどれ位まで上がっているんだろうな」
「「「600!」」」
そりゃ驚くよね。自分たちが100なのにね。
「600なんて何時になったらなれるんだよ、成人してもなれる自信が無いわー」
「というか、だったらLV1000なんて夢のまた夢みたいなものよね。でもさ、どうやったら効率良くLVUP出来るの? ニャー」
「そんなの誰も教えてくれるわけないじゃん。効率が良い狩場があったら皆集中して効率が悪くなるじゃん」
「普通の人でも努力したら400、500は行くらしいから無理って事は無いんじゃない。それと二週間後に招集かかっているでしょ、経験値取得についての意見交換会で、効果がありそうなことは実験するらしいよ」
「え? そうなの? 情報交換会で招集が掛かっているのは知っているけど。議題って経験値だったの? そんな事言ってったっけ?」
「この世界の常識として、LV差が激しく無ければPT内の経験値は公平に分配され、PTメンバーが多い程ボーナスが付くのは知っているよね? で、この世界の人も実験したらしんだけど、PTの経験値が入る範囲が百m位、効果があるのが三百人位って事までは分かっている。
これはあくまでも戦闘に関する経験値で、生産に関する経験値はPTメンバーには入らない」
「なんで位なの? 明確には分からないの?」
「だって経験値が幾ら入っているかは基本見えないでしょ。だから推測するしかないんだって」
「経験値といえばLV差があっても最低経験値1は入るらしいよ。あと何かスキルで生産しても最低でも1は入る」
「料理、鍛冶、とかは作ったら入るじゃん、他のスキルはどうなの? 例えば舞踊とか歌唱とか。え? 踊ったり歌ったりしたら入るの? 素材集め不要だから踊っているだけでLVUPするってズルくない?」
「どうもそうでも無いみたいよ。人前で歌ったり、踊ったりしないと経験値が入らないらしい。自分一人ではできないから逆に効率という点では微妙かもしれないよ。それよりドワカジ占い持ってるなら占えば経験値入るんじゃない?」
「じゃあ一人一万Gな」
「「「じゃあいいわ」」にゃー」
「わかったわかった無料でやるから、経験値頂戴」
「そういえば学問系のスキルは経験値がどうやって入るの? 数学、科学、地学、考古学、生物学、歴史、心理学、天文学、とかだっけ」
「それが不明なんだよね。こちらの世界の人でも入った事例がなかったらしいよ。あくまでも知識を活用するのが目的みたい。
うーん攻撃系のスキル、例えば剣術とかあれと同じ感じなんじゃないかな。剣を使えば熟練度が高くなってRが上がるけど、ただ剣を使っても経験値は入らないのと同じ、魔法もそうだよね」
「内政チート組系は、どうなのにゃー?」
「例えば農業だと、畑を開墾したり、耕したり、種を蒔いたり、雑草取ったり、虫を駆除したり、水を撒いたり、肥料を撒いたり、収穫したりすると経験値が入るね」
「なんじゃそりゃ。チートじゃん」
「確かに戦わずにLVは上がるけど、その分戦闘系スキルを使うところが少ないから、そのまま高LVになった場合攻撃力という点ではあまり期待が出来ないね。もちろん後から攻撃系のスキルをポイントで覚えれば追いつくけど。
それに経験値は強いモンスターや魔族を倒した方が沢山入るから、最終的には戦闘系を伸ばした方が高LVになると思うよ。とはいえ、こちらの世界の食糧事情が改善したから、広い意味では人間の戦力向上にはつながっていると思うな。
さあ休憩はこれ位にして、あと一狩り行こうか」
一応、説明回です。これからも異世界を舞台に説明してくれるかも、しないかも。まだオープンにしていない話もあるので、あの辺が気になると思っても、感想に書くとネタバレになるかもしれないから、そういうのは心の中にしまっておいてください。
あれおかしいなあって思うかもしれないけど、ちょっとそこは我慢我慢。代わりに一言でも良いので、何かコメントくれたら嬉しいです。
それと跳躍力二倍であって、カニ倍じゃないです




