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2-4 歌う

 バ〇サン一発でLVが上がるとか、どんだけ虫がいたんだよ。いや最近LVアップしてなかったから移動距離に応じての経験値が溜まっていたのかも。


 勿体なかったかな、という思いもあるけど、ちょっと危ない人と変な関係になったら後々困るから、と言い訳してみる。後付けの理由を言って自分自身をごまかす。でもあのかしこまりはマジやばかった、今度かしこまりだけしてもらおうかな。


 いかんいかん、後日芸能界に入った時に絶対困る事になるから今回の対応は良かったはずさ。ちょっと想像してみる。もやもやもやもやーん。



「写真の女性との関係は何なんですか?」


「ちゃんと名乗ってから、質問してください。友人です」


「週刊古潮です。二十二時から二十三時の間、部屋で過ごされていましたよね? 何をなさってたのですか?」


「掃除ですよ。部屋を綺麗にしてあげてました」


「そんな時間に訪れて掃除なんてします? 本当は相手と肉体関係があったんじゃないですか?」


「そんな訳ないでしょ。彼女とはバ〇サンしかしてませんよ」

 かっ完璧だ!



 LV上げはLV上げとして頑張るとして、歌手になるための活動は並行して行うべきだろう。時間は有限だからね、出来る事は早めにやっておくのが大事。さて、歌手になるために必要な事、それを教えてくれる先生がいる、そうインターネットだ。


 検索した結果が間違っている事もあるが、他に聞ける人なんて居ないんだし、よっぽど変な対策案は無視すればいいだろう。

 歌手になる方法を検索すると、オーディション、年齢的に無理っぽい。スカウト、どこで? デモテープを芸能事務所に送る、これはキープだな。SNSに投稿、これが良いんじゃないか? 元手も掛りそうに無いし。


 SNSに投稿で調べると、カラオケ音源やCD音源には著作権があるらしい。なるほど、自分で曲を弾くのもありだけど、スキルポイントは節約したいからアカペラだな。カラオケの会員になると、専用サイトで歌った歌をアップ出来るらしいけど、色々な人に見て欲しいから、とりあえずユーチューブかコニコニ動画にしておこう。


 あとはどこで歌って録画するかだけど、家は駄目だな近所迷惑になりそう。外だと雑音とか拾いそうだし周りから変な目で見られるだろうし、カラオケボックスでアカペラで歌ったものをアップすればいいか。


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 横浜駅西口五番街ブブレ前の広場、何故か人前で歌っている、超恥ずかしい。経緯を説明すると、清子さんが路上で歌う許可を取って来た。で、倉庫でのバ〇サン待ち時間を利用して、二時間ほど歌う事になった、口で争って清子さんに勝てる訳がない。



「一郎、歌の練習はしているの? 人前で歌った方が良いわよ。何? 恥ずかしい? 馬鹿な事を言ってないで歌いなさい。練習量は裏切らないし、自分の自信につながるのよ」

 でもスキル制なんで練習は関係ないかなーと、熟練度は溜まるかも知れないけどポイントでRアップするつもりだから。あと人前はまだ恥ずかしいかなって、のらりくらりはぐらかしてたら、お尻を引っ叩かれた。


「何でも最初の一歩は戸惑うものよ、分かるわ。でもね、最初の一歩を踏み出さなければ、いつまでも今のままよ」

 私の好きなようにって言ってませんでしたっけ? わざわざ路上で歌うための許可まで取って来たので、流石に断るのも悪いし、清子さんの言い分も分かるので歌う事にした。



 滅茶苦茶恥ずかしい、恥ずかしすぎて羞恥心を見ると99まで上がってた。もうだめーー、テテテテッテッテッテー、あれ? LVが上がった? そっちが気になったのか全然恥ずかしく無くなってきた。


 先週LVが上がったばっかりだよな、倉庫のバ〇サンと移動だけでこんなに直ぐに上がるか? それだけじゃない別の経験値が入っている? もしかして歌を歌うと経験値が入る? そういえばMMORPGの中には、生産したり、音楽を演奏したりすると経験値が入るゲームがあった。歌えば経験値が入るというのであれば、歌うしかない。


 でもやっぱり恥ずかしい、いくら経験値のためと言ってもね。特に最初なんて清子さん以外誰も聞いてないから、逆に誰も聞いてないことが恥ずかしかった、この人なにしているんだろうって思われているようで。でも足を止めて聞いてくれる人が居てもそれはそれで恥ずかしかった。


 あれ? あの人どっかで見たことあるような気がする。やばいやばい、すげー恥ずかしくなってきた、羞恥心を見ると110を超えてる、最高値じゃね? それでも歌い続ける。人だかりが人だかりを呼ぶ、二十人位は足を止めて聞いてくれているようだ。


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「うーん今日の反省点としては、MCがなってなかったわ。それと何のために歌っているのか、自分が何者か、そういうのが周囲に伝わってなかったわね」

 清子さん主導の下、反省会が行われる。しかし、まだ歌手になると断言はしたくない、歌の練習中です程度かな。あとは自分が誰であるかを説明するためにスケッチブックに自分の名前を書くことにしたんだけど、個人情報を出したくないので、名無しと名乗る事にした。


 カラオケボックスで録画した動画の再生回数をチェックする。アップしてから一週間、再生回数は百回を超えていた。こっこれがバズるという事か…。すげー嬉しい、ちなみに内十回は自分が再生しているんですけどね。


 会社帰りに、ブブレの前で歌うのが日課になっていた。スーツ姿でアカペラでマイクも無しで歌う中年いや青年というのは、結構なインパクトがある気がする。だんだんと人前で歌う事が慣れて来たかも。


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「鈴木さん、もしかしてブブレの前で歌ってたでしょ?」

 ぐはっ、後輩の馬場に見られてた、はっ恥ずかしい、穴が有ったら入りたい。


「ん? な、なんの話?」

 しらばっくれてみる。ふいーふぃー、と音の鳴らない口笛を吹いてみた。


「ほげーほげーーほげーー♪」


「ストップ! ちょっとあっち行こうか」

 私の歌っていた歌を目の前で歌い始めたので、しらばっくれるのは無理だった。とりあえずストレス発散のために歌を歌っている事にした。歌手になるとか言ったら、会社に居づらくなるからね色んな意味で。


「ちょっと信じられないですね。普通あんなところで歌います? 俺だったら恥ずかしくて死んじゃいますよ」

 それは激しく同意だ。でも恥ずかしくても歌わないとLVが上がらないんだよ。言い訳に全然納得してくれている感じがしない、そりゃそうだよな嘘だもん、説得力何て無いよな。

 とりあえず、会社ではその話に触れないようにお願いした。でも遅かれ早かれ誰かに見られるだろう、人目に着く場所で歌っているからな。



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 朝起きたらLVが上がってた。全然理解出来ない、夜中LVが上がったような音が聞こえたけど眠いから無視した。夢でも見たんだと思って。そしたら上がってた何だ? 仕掛けていたコンバ〇トで倒したのか?


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 さて、今日も歌いますかと。段々と集まる人が増えて来た、今では始まる前に五人程集まっている事もある。歌う日は直前にツイッターで歌いますと宣言し、フォローワーも千人を超え、動画再生数も先日三万を超えてた。どうしよう、すげーうれしい、歌手がどうのこうの芸能人とか関係なく、ただただ純粋に嬉しい。


「名無しさん。今日は何を歌われるんですか?」

 よく歌を聞いてくれている女子高生が話掛けて来た。MCとか苦手だから切っ掛けになって話しやすいので、本当にありがたい。彼女の事はマスクちゃんと自分の中で呼んでいる、いつもマスクをしているので顔は分からない、分からないけど見えている部分だけみるとちょっと可愛いようにも見える。スキー場のフェイスマスク効果と同じかな?


 ただ、正面に座るときはスカートをもう少し気にして欲しい。何がとは言わないけど、そのあのあれだからね。うん、視線がそっちに行かない様に特に気を付けて歌い続ける。それにはちゃんと理由がある、何故なら私はムッツリだからだ、やらしい人とバレたくない。

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