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2-3 中村さん2

 微笑しながらこちらを見つめる中村さん。どうしてスキルの事をしっているのか? 落ち着け、落ち着くんだ。まだ完全にバレたと決まった訳でも無いし、仮にバレたとしても誰も信じない筈さ、こんなバカげた話。


「私だってこんな真似したく無いんです。ただ、マゾの喜びを私に与えてくれるのでしたら、綺麗さっぱり忘れます。私を(はずかし)めて下さい」

 脅迫しているくせに、生を飲みつつ、お刺身を食べている。本当にマゾなのか? 実は違う目的でやっているのでは? はっサドなんじゃ?


「ちょっと考えさせてください」

 折角だから、私も生を飲みながら、つまむ。そして考える、どうすべきかと。皆も悩んだ時に、天使と悪魔が出て来て(ささや)く事は無い? 私の場合、ちょいちょいやって来ては囁くんだ。


『おいおい、こんなおいしい話無いだろう? 受けちゃえよ。やるだけやって捨てれば良いじゃないか? 相手はマゾなんだぞ、酷い目にあったら、あっただけ喜ぶんじゃないのか? それに芸能界に入っている訳でも無いし、仮に後日問題として話題になったとしても、恋愛対象だった人と別れた、それだけで済むって』

 確かに、こんなに都合の良い話なんてある訳ない、やるだけやった方がお得だろう、自分の中の弱い心が受けてしまえと、心の針が受ける側に揺れ始める。


『ちょっちょ、落ち着けって。別れたって説明しても、マスコミは絶対に悪意を持って報道してくるはずさ。やるだけやって捨てるなんて絶対だめ。ちゃんと殺さないと』

 なるほど、別れただけじゃ安心できないか、殺すまでがセットなのか。心の中の針が更に受ける側に揺れる。


『馬鹿! お前は馬鹿か! 殺すなんて絶対ダメ! 人を殺してバレない訳無いだろう、何を考えているんだまったく。ちゃんと調教して何時まででもしゃぶりつくせっつうの!』

 なるほど、殺すのは確かに良くない。しかも、少しで別れるなんて勿体ない、いつまでも利用するのが正解か、心の中の針が更に受ける側に揺れる。


『酔っぱらっているのか? 普段のお前ならそんな事考えないだろ、冷静になれよ。もっと素直な気持ちになって何にも考えずにやれば良いんだよ』

 そうか、ってオイ! 私の心の中には天使は居ないのかよ。全然反対側に揺れないじゃないか、どうなってるんだよ。お酒って怖いわ、自分の本心がこんなどす黒いなんて信じられない。


 結論が出ないままお店を後にし、駅に向かって歩く。ドン! 考えながら歩いたせいか、曲がり角から酔っぱらいがよろけて来たのを避けられずぶつかる。酔っぱらいが倒れそうになったので咄嗟(とっさ)に手を出したら、お姫様を支えるような、ダンスの決めポーズのような感じで、斜めに倒れている酔っぱらいを抱き支えてた。


「ちょっと、こら! 離せや!」

 酔っぱらいと一緒にいたと思われる集団から、クスクスと笑い声が聞こえる。私が気を付けながら体勢を元に戻してあげた途端に胸ぐらを掴んできた。


「お前馬鹿にしているのか? あああぁ~ん!」

 酔っぱらいは顔を真っ赤にして怒ってくる。ええー私が悪いんですか? 兎に角謝るか。


「申し訳ございません。今後気を付けます」

 酔っぱらいに因縁をつけられて素直に謝る私、多分だけど、周囲からは私に対して同情的になっている雰囲気を感じた。


「すみませんじゃ無いんだよ」

 バキ、いきなり殴りかかって来た。痛たた、いや大して痛くないけど、HPが1減った。ただ思う、私は申し訳ないと言ったんだけど。

 男は更に殴ってくる、HPが1、2、と一発毎に減り始めるが、まだまだ残りHPがあるから大丈夫。ここはひたすら謝りまくる。もう少し殴られれば、日課の自傷行為はしなくても済むかも。



「ごめんなさい。ごめんなさい」

 しかし、男の暴力は止まらない。流石に相手側の仲間が仲裁に入ろうとしてくる、やっとか。


「うるせー、止めるんじゃねーよ」

 仲裁に入った男を殴ると一発でよろけて地面に倒れる、すかさず足でストンピング(踏み蹴り)を行う。ひでぇ、知り合いじゃ無いのかよ、そして再び殴りかかってくる。誰か警察を呼んでくれて無いかな? 周囲を見渡す。


 少し離れた場所で周りを囲うように出来た人垣では、スマホ取り出して写真を撮ったり動画を取ったりしているようだ。ええー? 誰か警察呼んできてよ。


 しばらく殴られていると、前からだけじゃなく、後ろからも何か殴られているような気がする。後ろからの攻撃はダメージが入っていないけど…。


「ちょっと待って、ストップ!!」

 大きな声で止めるように言うと、殴っていた男も何事だと、殴るのを止めた。しかし、後ろからの攻撃は止まらない。振り返ると中村さんが、エイエイって可愛いらしい蹴りを繰り出していた。


「何しているんですか」


「いや、喜ぶかなって? そしたら教えてくれるんじゃないかなって」


「喜びません! 良いですか、もう蹴らないで下さい」


「分かりました。かしこまり!」

 敬礼する姿はちょっと可愛かった、でへ。


「なに喧嘩の途中でイチャついてるんだよ! なめてんのか!」

 再び男性がキレながら殴って来た、折角止めたんだからそのまま大人しくしててよ。というか喧嘩じゃなくて一方的な暴力だよね? そして後ろから攻撃されている。


「ストーップ! ストップ」

 両手を大きく上げて交差するように振る。後ろを向くと中村さんが蹴ってくる、蹴ってくる足を手で払う、払う、払う。


「蹴らないでと言いましたよね?」

 そして払う。


「いや振りかなって? 逆な意味で蹴れって言っているのかなって、そういうプレイかなって?」


「ちげーよ」


「おい、ヤバいぞ、警察が来たぞ警察」

 暴力を振るっていた側の一人が騒いで、逃げるように促す。


「ちっ、お前覚えておけよ」

 暴力を振るっていた側の人たちが逃げ出して行く、ふう助かった。んん? 警察何て居ないんだけど、いつまで経っても来ない、どうやら止めさせるための嘘だったらしい、まったく、まいいか面倒だし。


「で、どうするんですか? 私にマゾが何たるかを教えてくれますか?」

 ふむ、決めた。流石にね、流石に私もカチンと来ましたよ。


「じゃ、中村さんの家に行こうか」


「えっ?」


「えっ? じゃないよ、望んでいるんでしょ、良いよ教えてあげるよ。そして後悔させてあげるよ。もの凄く恥ずかしい思いをさせてやるから」


「あっその」


「はい行きましょう。何線だっけ、あっそこのお店寄ってこ。欲しい物もあるし」

 モジモジしている中村さんの腕をとり、ぐいぐい引っ張って誘導していく。やるためには買っとかないとな。


 そして中村さんの家の前だ。


「あの、その、心の準備というか」

 といつつ、カギを開けているのは何で?


「はあ? 何言っているの、お邪魔しまーす」

 部屋の間取りを確認、そして部屋の状態をチェック。ふむ、思ったより散らかっているな、リビングはカーペットか、部屋の隅には綿埃が見える。洗濯物が室内で干したままで、下着も幾つかぶら下っている。肌色のパンティーを一つ手に取る。


「えっちょっと、止めて下さい、はっ恥ずかしいです」

 私から洗濯物を取り上げようとするが、私が手を上にあげて阻止する。


「ストーップ! ストップだ! 動くんじゃない、そこでじっとしているんだ。マゾの何たるかを教えて欲しいんじゃないの? なので俺からの命令への返事は“はい”か“YES”だ」


「それどっちも肯定する意味じゃないですか」


「違うだろ、“はい”か“YES”だ!」


「はい。かしこまり!」

 元気よく敬礼したのは良かったけど、モジモジと恥ずかしがっている中村さん。そして手に取った下着を丁寧に折りたたむ、他の洗濯物も同様にたたむ。雑誌やチラシなども隅に重ねておき、机の上や台所の流しに残っていた使った後の食器も洗って水切りの上に置いた。

 汚い部屋を初めて来た男の人に綺麗にされるとか、どんだけ恥ずかしい事か。とどめにコロコロをして、粘着力が無くなった汚れた面を、目の前にで引きちぎる。二度、三度、四度とね。さすがに耐えきれない様で目をそむけている。


「私が望んでいる恥ずかしいは、こういう恥ずかしいんじゃないんですけど」

 スルーする。


「明日は仕事ですか?」


「いえ、休みです…」


「じゃあ、今日寝れなくても大丈夫だね」


「え? そっそれって、まさか」

 ファスナー降ろし、モノを取り出す。


「そっそんな! 何を…」


「何って決まってるでしょ」

 バ〇サンを取り出し、火災警報器やTVにゴミ袋を掛けて、セットする。


「いや、意味が分からないです」

 そして屋外に出る。


「あのさ、今日、やられちゃっても良いかなー、と思ったんでしょ」


「はっはい」

 両手を股間の前あたりに組んで、モジモジと恥ずかしながら答える。


「全然だめ、それってマゾじゃないから」


「ええ!?」


「もう状況を受け入れちゃってるじゃん。違うんだよ、抵抗して嫌だ、無理、ってなっているのに酷い目にあって、初めて喜びが得られるんだよ」


「はっ! そっそうなんですね」


「中村さんのやっている事はさ、マゾの真似事なんだよね、そんなんじゃマゾを教えるなんて、レベルが低すぎて時間の無駄だよ。やる気あんの? 本当に」


「はい! やる気はあります! だからマゾの喜びを教えて下さい」


「いやだから駄目だって。このままじゃ無理だよ。時間の無駄だもん」


「そっそんな、あっ今日は、今日はこの後どうなるんですか?」


「俺は帰るよ」


「ええ! 私はどうすれば良いんですか、部屋には三時間位戻れないんですよ」


「それだよ! その状況を快楽に変えるんだ」


「はっ! それがマゾなんですね。でも、あの、私我慢できないんですけど」

 体をクネクネしながらアピールしてくる。


「俺の命令には、“はい”か“YES”か“かしこまり”だろ」


「かしこまり!」


「今回の件が我慢出来ないようじゃ、マゾが何たるかを理解するなんて無理だから諦めなさい。あとここまでしてあげたんだから秘密も忘れるように。返事は?」


「かしこまり!」


 その後、なんだかんだと言ってごまかして逃げた、強気に出る作戦は成功したな。ふう、とりあえずバ〇サンをやれる関係にはなったから、これはこれで良しとするか。今後もマゾの指導と称してバ〇サンをさせて貰おう。都合が良いバ〇サン女を手に入れた。

 チキン。今の世の中草食系が多いと思うんだ。


 俺は一郎が強気に出ている事をアピールしている、演技です。

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