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2-2 中村さん

 ふぁー寝てた。時間を確認しようとしたら、あれ? 看護師の中村さんからラインが来ていた。おっ、何だろう。


「こんばんは」

 一言だけだ。当然こちらも「こんばんは」だな。


「体調を崩されていませんか?」

 ふむ、経過観察かな。まさかね、そんな勘違いしたらね。

 

「はい、お陰様で何ともありません。ありがとうございます」

 よし。本当なら相手の様子を確認する一言をつけるべきなんだろうけど、そうしたら向こうも返さないといけなくなるだろうから、あえて確認しないようにした。これが出来る男の配慮ってもんよ。


 一時間程経ったけど、向こうからの返信は無かった。寂しい気持ちもあるが正しい行いだったと思いたい、ふうー。

 ブルブルブルブル、スマホが揺れた。ラインの着信だ! ゲームを止めてラインに切り替える。


「お変わりなくて良かったです。ちょっとお話したい事があるので、お会いできないでしょうか」

 ……美人局(つつもたせ)かな。美人局とは、綺麗な女の人にホイホイと付いて行ったら、怖いお兄さんが居て、ナニ人の女に手を出しているんじゃいワレ、とかそういう詐欺っぽいやつだよな。


 私に女性が好意を持つとは思えません。よってこれは高い確率で罠だと思われます。しかし、罠であってもこんなチャンスを逃すのは男としてどうかと思う。今までこんな機会あったか? ある訳がない、一生に一回のチャンスだと思う……よし、会うだけ、会うだけ、ただ会話しただけなら美人局は成立しないと思う、多分。


「はい。平日は仕事なので夜九時以降か、あとは土日なら休みだし、次の週末は予定が空いてます」

 よし、これで…ブルブルブルブル。はやっ、今入れたばっかりだよ。


「じゃあ今日はお休みなのですか? 今どちらですか? 私は横浜駅なんですけど、これからどうですか?」

 うぉおおー、急過ぎない? 危険じゃない? だっておかしいよね、酷いことをした覚えは無いけど、相手に変な気を使わせちゃったから実は恨まれている? どうしよう…。いやさっきこのチャンスを生かすって決めたばかりじゃないか! 勇気を出せ俺! どうしよう…。


「横浜なら一時間位で行けますけど、それでも良いですか?」

 と返したら、構わないそうなので、急いで着替えて横浜に向かう。待ち合わせ場所は西口の地下街入り口の交番前だ。あそこなら分かりやすいし、飲みに行くなら鶴屋町にも五番街方面にも行けるし、怖いお兄さんが居たら交番にも近いから最適だ。


 待ち合わせ場所には中村さんが立っていた、当たり前だけど。少しだけ様子を窺う、でも怖いお兄さんは居るな、関係しているかどうかは分かんないけど。横浜だから怖いお兄さんが数人居ても不思議じゃない。毎日お祭りかと思うくらいの人が居るからね。


 万が一脅されたとしても、そん時は格闘術を覚えよう2ポイントだし、R2にしても6ポイントだからな。戦えるって分かれば落ち着いて逃げれるはずさ。

 

「すみません、お待たせしました」


「いえ、こちらこそいきなり申し訳ございません」

 頬を赤く染めた中村さん可愛い。やばい、恥じらった女性って魅力が増すよね、もう騙されても良いかなって思う。良いお店を知っているとの事なので、一応店名を確認し、ネットで探して、ぼったくりバーではなさそうな事を確認する。店の入り口でも店名があっている事を確認した。


 店に入ると個室となっており、外の声は全然聞こえるけど、少なくても他から直接見られることは無い。なになに、なんで個室のお店に入ったの? 怖い、怖いよー。とりあえず(ナマビール)と直ぐに出来るツマミ、あと時間が掛かりそうなおかずを注文した。


「…ふうー、あの今日はいきなりすみませんでした。どうしてもお願いしたい事があって」

 キターー。悶々と待たされるよりも、止めを最初に刺された方が傷は浅くて済むはず。よし、バッチコイ。


「実は私、イチローさんの秘密を知っているんです」

 

「なっなっ」

 うぉー、何を知っているの? というかどうして知っているの? おかしくない? いや待てよ、私の治癒力は異常だ。体組織か何かを分析したら、地球上には無い物質が見つかって、人間じゃないよね、みたいな事が分かってもおかしくは無いはず。どっどうしよう、私どうしよう。


「なっなんの事ですか? 私はひっ秘密などありませんよ」


「良いんです。別に言わなくても、ただ私も知っているという事をお伝えしたかったのと、それとお願いがあって来たんです」

 きょっ脅迫だー! 中村さん可愛いのに、見た目に騙されては駄目なのですね。でも金なんて大して持ってないぞ。


「一郎さんに会って、気が付いたんです。何に気が付いたか分かりますか?」


「…」

 ちょっと落ち着こう。相手は会話を望んでいるのだから、まずは様子を窺ってヤバかったらお金を置いて逃げよう。


「ヒントは、私がしでかしたミスです」


「…。えーと仕事をしっかりするってこと? 命を預かるという事の重み? 原因分析による再発防止策の重要性?」

 顔色を窺いながら答えを上げていくが、それらすべてに対して首を横に振っている。何に気が付いたんだろう?


「実は、私もマゾなんです!」


「ぶっ! いやおかしいだろ! ヒントになってねーよ!」

 ガラガラ。私のツッコミとかぶさる様に戸を開けて、女性店員が(なまビール)を置いていく。店員の顔を見たが、私達のどちらにも視線を合わせず戸を閉めて出て行った。多分中村さんのマゾ告白も聞こえていたと思うんだけど、スルースキルを発動したようだ、良く出来た店員さんだな。


「ちょっと、私も、ってことは、まるで私がマゾみたいじゃないですか」

 何でそんな誤解をされなきゃならんのですか。


「ごまかさなくて良いんです。聞こえちゃったんです。叔母さんとの会話を。悲鳴が上がった後、叔母さんと二人っきりになりましたよね? 心配だったんで部屋の外で耳を澄ませていたら聞こえちゃったんです」

 いやそれ、聞こえたんじゃなくて盗み聞きだから。


「そしたらマゾで、快楽のために自分の手を包丁で刺そうとしたとか。びっくりしちゃって」


「それ誤解です! 誤解ですから!」

 ガラガラと戸が開き、お新香の三種盛りと、枝豆を置いて行く。やはり視線を合わせようとしない、私の想像する一般の女性店員なら(さげす)んだ目で見るくらいはすると思ったんだけど、この店員さんはお客様を不快にしないように気を配れる人なんだな。戸が閉まったので会話を再開する。


「ああーなんという事でしょう。その困ったような顔、まさにマゾの極みですよね」


「いや違うんです!」

 全然話を聞いてくれないよ、中村さん。


「で、その後私にいやらしい本のタイトルを読ませましたよね?」


「それ違うから! 勝手に読んだんじゃないですか! 恥ずかしかったら止めればいいのに」


「そう! それです」

 何が? 何がそれなの?


「私気が付いたんです。自分がマゾだってことに」


「はぁ?」


「恥ずかしいタイトルを読まされて、分かったんです。恥ずかしい思いをさせられる事が気持ちが良いと」

 うぁあー変態さんだー。ガラガラと戸が開き、先ほどの女性がお刺身の盛り合わせを置いて行く。額には血管が浮いている様な、私は店員さんを怒らせるような事はしていないと思うんですけど。そして目を合わせずに出て行く。


「で思ったんです。一郎さん程のマゾの極みなら、私に対してもマゾの喜びを与えてくれるのではと」

 お巡りさんココです、ここに変態が居ます。


「それとよく考えてみたら、私がお詫びに伺ったときも言葉尻を捕らえたら変な意味に聞こえるような発言だったのに、私食べられちゃうかも、でもいっかなーって思っていたのに。

 ラインを交換したいと言ったときや、野球の応援に行ったとき、他にも色々と隙を見せても全然アプローチして来ないし。今日思い切ってラインを送っても、わざと会話を切るような返信をしてくるし。で分かったんです」


「脈が無いと?」


「これはきっとじらしプレイなのだと」


「ちげーよ! 私はマゾではないですし、サドでも無いです。ちょっとご期待には応えられないと思います」


「ほら、それです! もう我慢できないのに、拒否するなんて酷い、酷すぎます。うふうふふ」

 ええーー、どうすりゃいいちゅーんじゃい! 何を言っても自分を責め、快楽に変えている。ポジティブマゾってジャンルが今生まれた気がする、私は歴史の証人になったのかも。いやいやアホな事を考えている場合ではないな。


 ガラガラと戸が開き、唐揚げを置く、そして蔑んだ目で私を見ている。いやいやいや、私は悪く無いんですって、誤解なんですって。


「すみませんが、ご期待には応えられません。実は今芸能界を目指していて、スキャンダルとか不味いんです」


「えええ? その年で芸能界を目指しているのですか? もっもしかして、究極のマゾプレイの一環なのですね。すっ凄い、そこまでは私は出来ません。真正マゾって凄いんですね」

 いやもう、勘弁してよマジで…。


「でも良いんですか? 断っても? 私知っているんですよ一郎さんの秘密。マゾ以外の話でも」

 何を言っているんだか、知らないのに知ったかしちゃって。もうオタオタしないからな。


「武器系、魔法系、生産系…」


「なっ何でそれを!」

 しまった、ついスキルを言われて動揺してしまった。なんでだ? どうして知っているんだ。

 お待たせいたしました。今週はここまでですね。スキルを活用して楽に生きるために努力する、あれ? 今自分でこのコメント書いてておかしいなと思った。とはいえ、もう公開してしまったので。


 現状この作品には、俺ツエー要素、バトル要素、そういうものがありません。他の作品と差別化を図るという言い訳、いや、自分がスキル貰っても無双できるイメージが湧かなくて。ほのぼの日常系? なストーリーになってる。でも、歌手で成功するかも、しないかも。


 皆さんのお陰で高いポイントを頂けております。ありがとうございます。感想とか励みになりますので、引き続きよろしくお願い致します。ただ展開を予想するようなものは避けていただけるとネタバレの危険性がありますので、その辺はいい感じでお願いします。なっ何回感想書いてくれたって良いんだからね。


 そうそう、ポジティブマゾって言葉をインターネットで検索したら、別の意味で既に存在していたみたい。凄く良いフレーズで、やったーと思ったのにな。


 それと偶にツッコミが不在となる時がありますので、良かったら画面の前でツッコンで下さい。ツッコム時は周りに注意しながら、変質者に思われない様に気を付けて下さい。

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