表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/82

13 もう少し楽に暮らしたい

 週末、清子さんに呼び出された。またスパーリングの相手をして欲しいって。今回もフルボッコにされて終わったが、その代わりに来月も倉庫の害虫駆除をさせて貰える約束を取り付けた、えへへ。

 リビングのソファーでくつろいでいると雅美さんが帰宅したようだ、玄関から帰宅の挨拶の声が聞こえ、清美さんが返事をした。


「あっいらっしゃい」


「おかえり、お邪魔してます」

 挨拶をした後、私のすぐ隣に座った。え? 他にも椅子が有るのに? しかも三人掛けで私が一番左に座っているのに? いやいやちょっと自意識過剰だよね、三人で会話するならこの距離感かもしれないし。スンスン、スンスン、と何やら臭いを嗅いでいる…私臭いのかな?

 そして顔を少ししかめて直ぐに席を立った、ちょっとショック。落ち込んでいると雅美さんがソファーの後ろに廻り、私の肩に手を置いて肩を揉み始めた。うぉなになに?


「肩を揉んであげるね」


「ああ、ありがとうございます」

 何で急に? 揉むついでに臭いを嗅がれているような気がする。でもモミモミして貰うのは気持ちいい、幸せだなあ。


「一郎さんって意外と筋肉ついてます? 病院に入院とかしていたからもっと筋肉とか衰えているかと思ってた」


「あっどうも」

 気持良さに身を委ねすぎてボーっとしてた。何と返していいか分からず、とりあえずひねり出したのが、どうもって。


「そうよ、一郎は脱ぐと分かるけど、筋肉が結構ついてるわ」


「へぇー脱ぐと、筋肉がねぇー。脱ぐとねぇー」

 雅美さんが感心してくれている…のか?


「ただ幾ら筋肉があっても、テクニックは無いわね。んーでもタフだから幾らでも出来そう。そういえば先日よりも凄く良くなってたわ(肉の付き方が)短期間で良くそこまで、本当に凄いわ」


「へっへぇー、テクニックは無いけど…タフで幾らでも出来るんですか…。マエヨリヨカッタンデスネー」


「今度お相手して貰ったら良いんじゃない? 良い練習になるわよ」


「えええ!? 母さん本当に良いの? それ」


「良いわよ。一郎も良いわよね?」


「え? いやその、どうでしょう。どうしてもって言われるなら、ただ私からはちょっと手を出しにくいからなぁ(女性を殴るってのは、どうも)。多分一方的に雅美さんにしてもらうことになっちゃいますね」


「そしたらまた一回おまけするわよ」

 おお、バ〇サンチャンス!


「え? 良いんですか? じゃあ是非やらせてください」

 急に雅美さんが「上に上がるね」と言って、顔を真っ赤にして行ってしまった、もっと揉んで欲しかったのに…。清子さんも首をかしげてたけど年頃の女性は難しいよね。でもやっぱり男性とスパーリングなんかしたくないよな。

 それにしてもシャワーを浴びたから汗の臭いは大丈夫だと思うけど、そんなに臭そうな感じがするのかな? 少し自分で臭いを嗅いでみたりした。もう少し身だしなみを気を付けよう。


    :

    :


 会社から帰って来て思う、疲れたと。うそ、本当は全然疲れてない鑑定したらスタミナはマックスだし、なんていうかそういう雰囲気があるんだよね帰宅した時って、体は大丈夫だけど精神的な感じかな。


 コンビニのお弁当とお茶で夕飯を食べた。PCの前に座り、ブラウザーゲームのログインボーナスを貰い、デイリークエストを実施しつつ、TVのチャンネルをパッパッと変えていく。


 なんかスキル貰っている割には、有効に活用できていない気がする。いや、身体能力は高くなったし、日々の通勤でもLVが上がるかもと思うと確かに嬉しいんだけど、もっと頭一つ抜きん出るような、それこそチートって言われる位の何かがあっても良いんじゃないかと思う。


「うちのチョコちゃん(プードル)、私の脱いだ靴下をいつまででも嗅いでいるんですよ。本当はどう思っているのか知りたいんですけど」

 TVから動物の心が分かるとかいう、ちょっと胡散臭い女性に芸能人が問いかけている。わかるのかなー動物の言葉なんて。


「わかりました。チョコちゃんの性癖です。単純に臭いものが好きで、とても有りえない程の臭さがタマラナイと…」

 嘘くさいわーチャンネルを変える。


「続いての都市伝説は、アメリカの森の奥深くでフルメタルプレートを着て歩ている人が発見されたという…」

 そんなんいるわけねーだろ、居たとしてもコスプレだろ。


「続いてのニュースは、なんと全長二十cmもあるバッタの話題です…」

 どうでもいいわー。


「鉄の板を抜けて、こちらに百円玉が移動しました。これぞ超能力パワーです…」

 今の手品どうやったんだろう、不思議だな。


「現役女子高生が歌います。南酒場です…」

 現役じゃない女子高生ってどんなのだろう?


「かかと落としが決まったー! 倒れたボブの上にまたがり、マウントポジション…」

 フルボッコだな、あんなの喰らったら、ちょっと痛そう。


 TVのチャンネルを変えていくけど、面白い番組やってないな。動物の心が分かる女性が動物の気持ちを代弁している番組、都市伝説、ニュース、超能力を使ったマジック、素人のカラオケ番組、ガチンコの格闘技、それぞれを見ながら思う。あれ? なんか私にも出来そうじゃない?


 例えば歌なら歌唱、格闘技なら格闘術、超能力は魔法がもし使えればそう見えるかもしれないし、調教があれば動物の言葉が…それは無理っぽいな。他にも弓術があればアーチェリーでオリンピックとか出れるかも。そういえば投擲術があったから、ダーツでプロになれるかも知れない。


 ダーツってお金が稼げそうだよな、ネットで調べると一流プレイヤーは年収一億とか書いてあるし、ちょっと投擲術覚えちゃおうかな。別に投擲じゃなくても良いんだけど、何か一つ覚えて(ランク)毎の効果を確認しておきたいよな。


 だってR4でもその辺の素人大差ありませんとかだったら、とてもじゃないけどチートなんて夢のまた夢だよね。だとしたら先行投資という意味で何かを覚えるべきじゃない? そうだな、まずは戦闘系のスキルを覚えよう。戦闘系はR1が2ポイントで覚えられるんだよな。


 剣術、槍術、弓術等あるけど、正直お金に結び付く感じがしない。まあ私が知らないだけで稼ぐ方法があるのかも知れないけど、知らない物を探すより知っている物で試そう。そうダーツだ。家にはダーツなんて無いから、ボールペンで良いか。


 まずはスキルを覚える前にボールペンを持って、柱に向かって……、駄目だ、近所迷惑かも知れない。場所をベットに移動する。ベッドの布団を壁側に立てかけて、さらに枕をその前に置いて、これなら良いね。


 ボールペンを投げると枕に当たらず布団に当たった。ボールペンなんて投げたことないし、全然思ったところに飛んでいかない。とりあえず五十回繰り返して枕にあたったのは三十回だった。後半当たる確率が増えて来たから、もっとやったら当たる様になるかもだけど、面倒だからやんない。で、次は投擲術を覚える。


「2ポイントを消費し、投擲術スキルを習得しますか? “はい”、“いいえ”」

 変なネーミングだよな投擲術スキルって、投擲で良いじゃん。まあそこに拘っても仕方ないなので、はいです、覚えます。


「投擲術スキルを習得しました。パッシブスキルなので常時発動します。パワーショット、クイックショットを覚えました。アクティブ技なので任意での発動が必要です」

 え? パワーショット? クイックショット? まあ、それは置いといて、ボールペンを投げるとさっきとは比較にならない速度で枕にボールペンが命中した。怖っ、なにこれ早すぎだろ、いや命中したのは良いけどさ、ちょっと威力が高そう。もっとゆっくり投げられないだろうか、試してみるとゆっくりも投げれるけど、結構気を使う。


 速度を気にしなければ自然と流れるように的に当たるけど、ゆっくり投げようとすると気にしながら投げないといけないので、ちょっと集中力が必要そうだ。で五十回中、四十八回枕に当たった。投げにくい物を投げている割には当たっていると思う。さて、折角なのでパワーショットを使ってみるか。


「パワーショット」

 声を出しながら投げると、さっきよりも激しく枕に命中しボールペンが刺さっていた。…ダーツって的を破壊するゲームだっけ? こんなの投げたら店から放り出されそう。


「クイックショット」

 声に出すのと同時位に勝手に手が動いて、バスっと枕にボールペンが刺さっていた。ダーツにはあんまり役立ちそうに無いな、急に出て来た敵に対処するには良さそうだけど。


 なんたらショットを使うとSKPスキルポイントと、STP(スタミナポイント)が消費されてた。一応検証だからR2に上げてみよう、6ポイント利用してR2に上げた。


「ダブルショットを覚えました。アクティブ技なので任意での発動が必要です」

 ふむ、Rを上げたから、必ず2個技を覚えられる訳では無いという事か。R毎に何を覚えられるのかが設定されているのかも知れないな。


 まずは一本で投げると、さっきよりも若干早くなっている気がするし、当たった場所も枕の中心に近い気がする。じゃあ、二本のボールペンを同時に投げると、一本は枕に、一本は布団に飛んで行き、威力も弱くなっていた。ふむ。


「ダブルショット」

 二本とも枕にバスッバスッと刺さった。なるほどこれなら一回の動作で二倍ダメージが入るな、ってダーツには役立たないだろこれ。戦闘スキルって戦闘用なんじゃないの? Rを上げれば命中精度も上がりそうだけど、攻撃力も上がりそうな気がする。


 ちょっと気を抜いたら、ダーツの的を破壊するヤバい人になる気がする。というか、これから物を投げるときは気を付けないと人殺しちゃうんじゃないの? えええ!? どうしようヤバイヤバイヤバイヤバイ、なんてスキルを覚えてしまったんだ、このスキルとかって外せないの?


「投擲術スキルを外しますか? “はい”、“いいえ”」


「外せるんかい!」

 思わずセルフツッコミしちゃった。外してみると、SKP(スキルポイント)の上限が増えた。再度セットすると上限が減った。他のパッシブスキルを外すと同様にSKP上限が増えて、セットすると上限が減った。

 なるほど、最大値が減っていた意味がやっと分かった。パッシブスキルをセットしていると、その分最大値が減るのね。なので沢山パッシブスキルをセットすると、技の使える回数が減っちゃうって事だな。


 よし、いよいよ投擲術R3に上げる。勿体ないけど検証だからね、それに良い技が手に入ってダーツで金持ちになれるかも知れないしな、うふふ。


「投擲によるダメージ量増加を覚えました。パッシブ技なので投擲術スキル装備時に常時発動します」

 グハッ、誰も攻撃力なんて求めてません。より一層投げる時に気を配らないと駄目じゃん。


 最後にSTPが零になるまで使ってみたけど、技が使えないだけで、特にデメリットは無さそうだった。あっくそ、私とした事が、こんなミスを犯すだなんて…枕が穴だらけです。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「あっくそ、私とした事が、こんなミスを犯すだなんて…枕が穴だらけです。」 枕にいっぱい穴を空ける練習をしていたのだから当然ですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ