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01 異世界転生

 横浜駅の改札を出ると、スクラッチくじ販売中ののぼりが目に入った。おっいいね、買おうかな。


「すみません、選ばせて貰っても良いですか? 十枚入りの幾つか買いたいんですけど」


「はい。どうぞー。あれもしかして?」

 人差し指を口元に立てて、静かにするようにお願いした。頷いた後におばさんは愛想よくくじを並べ、目の前には十枚セットのスクラッチが十個ほど提示されている。“鑑定”…なるほど。


「右から三番目をください」

「はい。当たりますようにー」

 三千円を支払い、早速少し離れた場所でカードを削る。一万円が一枚と三百円が一枚か、よしよし。換金してから、しばらく進むと違う宝くじ売り場があったので、同じ事を繰り返す。

 大体五万円位儲かった。他にも小銭を儲ける手段やお得なことが出来るけど面倒だからやらない。例えばカードゲーム屋に行ってカードパックを幾つか買いレアを引くとか、コンビニくじで当たりを引くとかね。


 鑑定スキルは結構便利だ。ただあんまりやり過ぎると目を付けられる恐れがあるから、同じ場所では出来るだけやらないし、月一回くらいに抑えている。他にも色々なスキルを活用して楽に稼がせて貰っているから殆ど趣味みたいなもんだしな。ん? なんでスキルがあるのかって? ちょっと長くなるけど……。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 ……。あれ? なんだ? 遠くで何か声が聞こえる、赤くもやが掛かっているようで周りは良く見えない。何してたんだっけ? 記憶がはっきりしない。


「キャアアアー、救急車、救急車を早く!!」

 何か聞こえるような気がするが、なんだか分からない、(まぶた)が凄く重い、目を閉じる。


    :

    :


 ピッピッピッピッピッピッピーーー。リズムを刻んで鳴っていた電子音が一定の音程で鳴り続けてる。


「心停止!」

 看護師や医師が慌ただしく動いているのが見えた気がした。手術室を上から眺めている。誰かが手術を受けていたようだ。そのまま天井を通り抜けて建物の外に、どんどんと空へと吸い込まれるように、空気全体に溶け込むような感覚が、そしてまた辺りが暗くなって闇に包まれる。



    :

    :



 目をあけると白っぽい部屋の中に居た。目の前にはテーブルがありトランプのようなカードが積んで置いてある。どこだろうここは?


「起きたかな? あまり時間が無いから要件だけ伝えるね。君は死んだんだ。で、異世界転生して勇者になって欲しい。勇者になってくれるなら、左の扉から出てくれ。嫌だったら、右の扉から出て普通に転生する事になる。

 扉にも注意書きが貼ってあるし右と左を覚えなくても大丈夫だよ。好きなだけ悩んで良いから。テーブルの上に向こう側での生き抜くためのスキル候補が置いてあるから、ポイントいっぱいになるまで好きなだけ選んで持って行って良いよ」

 部屋には誰もいないけど声は聞こえる。スピーカーらしきものはないけど、どこからか聞こえる。


「あの質問しても宜しいでしょうか?」

 大分怪しいけど、とりあえず現状把握から始めないとな。


「忙しいので手短によろしく」


「私は死んだのですか? 死んだ記憶が無いので、どうやって死んだのかなと? あとあなたは誰ですか?」


「はい死にました。トラックに跳ね飛ばされて店のガラスを突き破って。先ほど病院で心臓が停止しました。で、私は神様みたいなものです」


「神様! よっよろしくお願いします。そして私は死んだんですね。そういえばそんな記憶があるような気がします。

 実は異世界転移とか転生って自分にも起きたらいいなって思ってました。勇者になったら何と戦うのですか? あっでも戦うという事は死ぬ可能性もあるのですよね? 異世界で死んだらどうなるのですか?」


「魔王と戦ってもらいます。でも最初は弱いから、モンスターの弱い奴と戦って経験を積んで、レベルがあがったら、ポイントが貰えるからスキル覚えたり、スキルレベルを上げたりして、強くなって。

 死んだら、復活アイテムが有れば生き返れるし、大きな町の教会まで連れていって貰えれば、大抵復活スキルを持った聖職者が居るから、お金と引き換えに生き返られるけど、死体が損壊しすぎたり、時間が立ちすぎると駄目だね。そこで終わり。他にも復活の方法あるけど、説明が長くなるので割愛します」


「なるほど大体どんな感じか理解出来ました。ちなみにあとどれくらい神様のお時間を割いても良いのでしょうか? お忙しいご様子なので、ご迷惑をお掛けしても申し訳ないと思いまして」


「ごめんね、そろそろ別の所にいかないと。異世界転生させる勇者を沢山集めているんだ。死んだ人の中から勇者の素質がありそうな人、一人一人にお願いして回っているんでね」


「そうなんですね。お忙しい中ありがとうございます。あっ、という事は転生先には他にも勇者っていらっしゃるんですね?」


「いるよー。現時点で五万人ほど送り込んでるから」


「多すぎだろ!」


「魔王は強いし、化け物だって強いのいるしね。普通の人じゃすぐ死んじゃうから、戦いは数だよ兄貴って名言があるだろう? 最初の戦闘を生き残れずレベルが上がらない勇者だっているだろうからね。そうそう向こうで勇者に会ったら協力しながら戦ってね。めざせ一億人PT」


「だから多すぎだっつうの!」


「いやだって、魔王の戦闘力が一億、貴方が十だとして戦いたい? 無理でしょ? 自殺するようなもんじゃん。でも戦闘力十だとしても一億人いたら十億だよ。まあ物事はそんなに単純じゃないけどさ、一人で戦うより気持ちが楽でしょ?」

 なるほど、おっしゃる通りですね。一人で魔王を倒すなんて、失敗した時のプレッシャーが半端ないっす。別れの挨拶もほどほどに神様のいる雰囲気が消えて、部屋に取り残された。


 あーあー死んじゃったか。別に生きていても辛いだけだったし、何のために生きているのか正直よく分からなかったし、両親というか母親は既に亡くなっているし、父親はどこにいるかも分からないし、兄弟や祖父母も居ないし、別に良いんだけどね。そしてカードを手に取る。


 あっ仕事がやりかけだったけどどうしよう、会社の同僚に迷惑を掛けてしまうな。でも死んだら流石に仕方がないって諦めてくれるかな? あっ、部屋の荷物とかどうするんだろう誰が片付けるんだ? 家賃は今月分は払ってあるけど、来月分は払えないし。そしたら集めていたフィギアとかアニメのグッズとか捨てられちゃうのかな。貯金も多少あるけど、誰がその貯金を貰うんだろう?


 叔母さんかな? 母の妹の清子(きよこ)さんには合鍵を預けてあるから何かあれば、荷物の整理と僅かな遺産の受取人になるのだろうか。あっ! PCの中のエロ動画とか、ブラウザのブックマークとか、棚に置いてあるエロい薄い漫画本とか見られちゃうのかな。


 母親に見られるなまだしも、ましてや親戚のおばさん(清子さん)に見られるとか絶対に嫌だ。こんな事ならあらかじめ片付けておけば良かった。死ぬって分かってたら整理してから死んだのに。

 嫌だなぁ、だって幼い子のいかがわしい漫画とかあるし、あっいや、決してロリじゃないです。本当です。偶々ですよ、偶々。だって年上の方でも全然いけますから、本当ですって。

 

 ただ、ストライクゾーンが果てしなく広いだけなんですって、女性だったら基本OKみたいな。いや女性じゃなくたって、愛さえあれば男だって人間じゃ無くたって全然OKですもん。逆にモフモフとか猫耳とかご褒美というか全然あり的な感じだし、うーん、そう、博愛主義? みたいな感じです。

 棚にはBL本や近親相姦、SM、獣人、寝取られとか多種多様な本があったし、絶対勘違いされちゃうよ。でもそれらの本を見つけて、「博愛主義だったんだな」なんて思わないだろうな。あーー何で死んでしまったんだろう、あれらが見つかる前に片付けたかった、死んでも死にきれないよ。


 ドクン! 部屋全体が揺れて歪んだ。 何だ? 何が起きた? ドクン! 再度空間が歪み、意識が遠のき、暗闇に包まれる。

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