ただいま
「君、おーい、君ー」
……んだようるっせぇな……。
「君君、こんなところで寝てたら風邪ひくぞ?」
「あ……?」
目を開く。誰かがオレの顔を覗き見ている。
「……誰」
「警官だよ、見回りしてたらこんなところで昼寝してる人がいたんで声をかけたんだ」
……サツか。
「……そらお手数をおかけしました、散歩途中に丁度いいベンチがあったもんで」
ゆっくり立ち上がる。辺りは結構暗くなっていた。スマフォを持ってないので現在時刻はわからないが、早く帰らないと母さんがうるさそうだ。
「気をつけなよ?この季節は変質者が沸き出すからね」
耳からハッカの匂いを漂わせてそうな爽やかな顔で忠告してくる。なんかムカつく。
「えぇ、ご忠告感謝します」
形だけの礼をして帰宅への第一歩を踏み出す。腹減ったし、天使様もそろそろ起き出す頃だろうし。
「ただいま」
家に着くのに二十分くらいかかった。走りゃもっと早く着けたがそんな気分じゃなかった。
「おかえり、遅かったね。もうご飯できてるからとっとと手洗って来なさいな」
母さんが顔も出さず居間から声を放ってくる。横着者め。
「ゆーくーん、お腹すいたー、はーやーくー」
天使様も早急なオレの帰還をご所望だ。仕方ねぇさっさと行くか。
これがオレの日常。普通の高校生と大して変わらない日々。大した変化もない、ただの毎日。どうせ何も変わらず延々続くとオレはたかを括っていた。