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れいんぼう でいず  作者: 雪月風霞
プロローグ
2/6

くらすがえ

 適当にシャワーを浴び、適当に朝飯を食べ、適当に身支度を済ませ、念入りに識に行ってらっしゃいのキスをやられ、適当に登校を始めた。…あ?『適当に』が多すぎる?仕方ねぇだろ、実際適当にやってんだから。

 そういや伝え忘れていたが、今日は新学期だ。さっき言った高二って情報も、実は今日になってやっと適用されるものだったりする。昨日までは理論上高一だ。

 あれ?春休み中でも四月に入っちまえば強制的に二年扱いなんだっけか?

 …まぁ、こんなどうでもいい情報をわざわざごっ丁寧に聞こうだとか、覚えようとかするような、超が三個くらい付きそうな暇人は…まぁ、そうそういないだろ。近くの公園のベンチで最近ほぼ毎日見かけるスーツ姿のおっさんくらい時間に余裕のあるヤツなら、或いは可能性があるが…。


「おい優、聞いてんのか優」

「うるせぇな…、一体何だよ莫迦」

「あのスーツ姿のサラリーマンさ、なんで三月中旬あたりからほぼ毎日あそこの公園のベンチにいるんだろうな?」


 …デリカシーのデの字もないこの大莫迦野郎は成宮(なるみや)(ただし)。なんとも悲しいことに、こいつもオレの幼馴染みだ。


「お前さ、異常に空気読めないヤツとかって言われたことないか?」

「なっ⁉︎何故分かった⁉︎」


 お前昔から莫迦正直過ぎるんだよ。なんで思ったことがすぐ口から零れるんだ、少しは我慢したらどうなんだ。


「ちょっと優くーん?私のチュー君にKYとか言わないでよぉ〜」


 そしてそんな莫迦正直野郎に惹かれちまった大莫迦が一人。それがこいつ、松本(まつもと)智花(ともか)である。世も末だと嘆きたくなるが、こいつも幼馴染み。ちなみに忠を『チュー君』と呼ぶのはこいつだけだ。…まぁ、『忠』と書いて『ちゅう』と読むことも出来るから、あながちその呼び方も間違いではないような気もしないこともないが…。


「つか、お前ら朝っぱらからベッタベタしてんじゃねぇよ。燃やすぞ?」

「いやお前だって彼女持ちだろ?なんだかんだ言って、家ではなんかもうもんの凄いことでもやってんじゃねぇのか?」


 ねぇよ。まず有り得ねぇよ。常識考えろこのタコ助が。

 …と、口に出したあかつきには奴の隣に立つ嫁さんにひっぱたかれるので


「行ってらっしゃいのキスは食らったな」


 適当に誤魔化しといた。誤魔化しじゃないけど。


「やっぱイチャついてるじゃねぇかよ‼︎なんだてめぇこのー‼︎」

「…お前さ、マジでうるせぇよ」


 本音が遂に出て来てしまった次の瞬間、隣に立つ嫁さんに鎖骨あたりをグーで殴られた。そんなに旦那に暴言吐かれるの嫌か、なら誰とも会わないように閉じ込めちまえば良いのに。





「…で、腐れ縁の力は未だ健在、と…」


 厄日だ…。いや、もはや厄年だ…。違うけど。


「これで更に『俺達同クラスだったぜ記録』が更新された訳だな‼︎めでたい限りだ‼︎」


 一ミリもめでたくねぇよ…。

 新学年といえばやはりクラス替え。当然、オレだって少しは期待したさ。今度こそはあんのクソバカップルとは別のクラスになってくれると。

 結果、オレもクソバカップルも二組に入ってしまった。これで幼稚園からずっと続いてる同クラス記録はさらなる高みを目指すこととなってしまった。そんな高みなんか目指さなくて良いから…。


「はぁ…。まぁなっちまったもんは仕方ねぇ…、また一年宜しくな」


 いつまでも嘆いていたって現実は変わらん。諦めた上で改めて挨拶してみたら。


「ねぇねぇチュー君、今日は私の家に夜ご飯食べに来なよ♪」

「おっ、ありがたいぜ。ちょうど今日うちの家族皆仕事でいないんだ」


 ………。

 …殺してぇ…、この無駄に情に厚く薄情なコンビ殺してぇ…。

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