1話 目覚めと女神さま
ふと、遠くで誰かがおれを呼んでいるような気がした。
よく知っている声だ。この声は___
はっと目が覚めた。急いで辺りを見渡すと、すぐ隣に雪斗がいた。
さっきのおれを呼んでいた声は雪斗か。通りでよく知っている声のはずだ。
「ゆきと、ここ、どこかわかる?」
「さぁ、俺、時雨よりちょっとだけ早く目が覚めたから辺りをさっと見てみただけだけど、なにもわかんない。わかったことと言えば、ご覧の通り、何も無い。真っ白。これだけ。見たことも聞いたこともないな。」
「だよねぇ…ほんと、ここ、どこだろ。てかおれ、最後の記憶だとトラックに轢かれた気がするんだけど。」
「あ、お前も?俺もだよ。」
「もしかして、おれら……死んだ?」
「たぶん……」
「「…………」」
なんてこった、と、途方に暮れていたその時。
突如、とても綺麗な、まるで鈴の音のような女の人の声が後ろから響いてきた。
「初めましてこんにちは、天川時雨さん、宮水雪斗さん」
おれと雪斗は、ばっと声のした方に振り向いた。
するとそこには見事な金髪と同じ色の瞳をした、真っ白なワンピースを着たそれはそれは美しい女性が立っていたのだ。
「「……は?」」
見事におれと雪斗の声が揃った。
「は……?え?ち…ちょっと待って。どっから出て来たの?……それより、ここは何処で、君は誰?」
「てか、なんで俺らの名前知ってんだ……?」
と、おれらが若干混乱しながら突然現れた女性に質問する。
すると、彼女は、
「落ち着いてください。まず、私はとある世界の女神、名はアリスです。で、そのへんからふっと出てきました。あなた達の名前は、この空間に連れてくるにあたり、女神パワー的ななにかで知りました。そしてここはあの世と現世の狭間、とでも言っておきましょうか。」
と、律儀にもおれらの質問にすべて答えてくれた。若干、女神パワーとかそのあたりにすごく突っ込みたいけど、今は我慢。……思ってた女神となんか、何かが違う。そのへん、とか、女神パワー、とか、今おれの中の女神のイメージ崩れたぞ。もっと荘厳な感じのイメージ持ってたけど、そんなことないんだね……ほんとに女神なのかな?
「えー、簡潔に言うとですね。貴方達は死んでしまったのです。しかし、これは閻魔様が間違えて今日というこんな早いときに貴方達の死を定めてしまったからなのです。それはこちらの落ち度です。元の世界で生き返らせてあげたいところですが、それはルール上出来ません。閻魔様の手帳に書き込まれてしまったのですから。ですが、それではおふたりがあんまりだということで、閻魔様からのお達しで、この空間に呼んだのです。」
と、女神さま(自称)のアリス。おいおい、閻魔様、何やらかしてくれてんだ……
「あ、やっぱり俺ら死んだんだ。てか閻魔様ってほんとにいたんだなぁ、意外だ」
と、雪斗。冷静だな、おい。女神登場のショックから立ち直るの早いよ。そしてさらっと閻魔様に早々に殺されたことに対する反応も薄いよ。
「で、ここに俺らを呼んで、どうするの?」
「それは今から説明いたします。」
投稿はきっと不定期です。