01.リュイナ
今回はリュイナ視点です、次回から主人公のルート視点になります。
私はリュイナ、今年13歳になった。
昨日父さん達が町へ出掛けて橋を渡った所で魔物に襲われた。
魔物は倒したけれど、その時に橋が壊れて渡れなくなったそうだ。
私は今朝早く一人で村を出て橋へ向かった、橋の様子が気になった事と
父さんが村へ帰れないという現状がとても不安だったから、居ても立っても
居られない気持ちで焦っていた。
そして橋の近くまで来た所で狼に襲われた。
私の手には使い慣れた槍そして私の前には3匹の狼が隙をうかがっている。
私は狼が1匹なら勝てる、2匹でも防御しながら反撃出来るので勝てるはず
でも3匹相手だと防御に手一杯で反撃出来ない、私と狼は膠着状態に陥った。
その時、あの人が現れた、見た事の無い格好で武器も持たず、防具も着て
いない様に見えた。狼が2匹新しい獲物に反応してそちらに向かったので、
私は反撃に転じた。
私がずっと防御に徹していたので油断していたのか残った狼はあっけなく
仕留める事が出来た。
「うああーっ」
悲鳴が聞こえた。
あの人の方を見ると倒れ込んで狼に襲われている、私は無我夢中で駆け寄り
狼を槍で突き飛ばした、焦って急所を外したので止めを刺して振り返り
「大丈夫ですか」
問いかけると、その人はゆっくりと立ち上がり
「大丈夫だよ、早くこれを飲んで」
ポケットから小さなビンを取り出して差し出した。
あれ、平気ですか狼に襲われていたよね、私が駆け付けた時に手を噛まれていたよね
それより、これは回復薬かな、せっかくだから頂く事にしよう。
「回復薬ですか、ありがとうございます」
これで痛みを和らげる事が出来る、戦いが終わると痛みが気になってくるから、
そう思いながら回復薬を受け取って飲んでみた。
「あ、痛みが無くなった、血も止まった様です、わあああ、傷口が塞がってる何これ、
あ、あのー先程頂いたのは何ですか?」
びっくりして思わず叫んでしまった、何だろうこれは、聞いてしまった。
「回復薬です、傷は治った様ですね、助けてくれてありがとうございます」
「助けたって言うか狼が分散したので私が助かりました、ありがとうございます」
いや分かっていますよ回復薬、うん私も知っているよ回復薬、お礼を言われた、
確かに襲われている処を助けたけど平気みたいだし、素手で1匹は倒している、
駆け付ける前に悲鳴が聞こえたのは気のせいだろう、私もお礼を言った。
「落ち着いた様なので自己紹介を、僕はルートです、よろしく」
「私はリュイナです」
これが私とルートさんの出会いでった。
名前:リュイナ
年齢:13歳
レベル:7
スキル:槍術
装備:皮のベスト、皮のスカート、手製の槍
(麻か綿のシャツとズボン)
所持品:ナイフ、薬草、水
その後ルートさんはポケットから見た事の無い透明な物を取り出して
「この水で左腕の汚れを落とそう」
「その水は何処から出したんですか?、この入れ物は何ですか?」
ポケットから出した水が不自然な大きさなので聞いてみた、
水を入れた物は初めて見たので聞いてみた
「アイテム袋って、知っているかな」
「私の村にも1個あったので見た事があります」
私が頷いて言うと、ホッとした表情をして続けた
「ポケットがアイテム袋になっている、この容器は故郷で作られた物で
ペットボトルと言う」
蓋を開けて私の左腕の傷から流れた血を水で洗い流すと、傷跡も残っていない。
(回復薬って傷跡も消えるのかな?)
私にペットボトルを渡して、ルートさんはもう一本ペットボトルを取り出して
飲んでいる。私も飲んでみた、うん水だね、冷たくて美味しい。
「村はここから近いの」
「歩いて2時間位です」
「他の町や村は」
「近くの橋を渡れば隣の町まで歩いて5時間位と聞いた事があります
でも、昨日橋が壊れたそうなので確認に来ました」
「リュイナの村には宿屋はあるの」
「小さい村なので宿屋は無いです、家で良ければ泊められます」
「ありがとう、家の人にも頼んで貰える?」
村の宿屋について聞かれたので、つい家で良ければって答えちゃった。
「倒した狼はどうするの」
「解体して持てる分だけ村に持ち帰りたいです、欲しければ差し上げます」
「いや、欲しくないです」
「アイテム袋があれば沢山運べると聞いた事があります」
狼について聞かれたので、欲しいのかなと思って聞いたら違う様だ、
アイテム袋があると沢山運べるんだよね。
「ちょっと試してみるから」
ルートさんが手に持ったペットボトルを見つめているとペットボトルが
消えました。そして私が倒した狼に手を触れると今度は狼が消えました。
その後、ルートさんが倒した狼に手を触れて、今度は消えません。
「狼が生きているとダメみたいだね、急所を教えてもらえる」
ルートさんはポケットからナイフを取り出して少し沈んだ声で言いました。
何だか深刻な顔をしている、それよりナイフ持っていたんだね。
「お腹の中心辺り、そうそこ」
狼の腹に向けて軽く動かしたナイフは滑らかに根元まで突き刺さりました。
ルートさんは手に付いた血が気になるのかペットボトルを取り出して洗いました。
そして残った水を飲んでいます、さっきより顔色が良くなりました。
ルートさんは何かをやり遂げた様なホッとした表情を浮かべています。
その後ルートさんは狼をアイテム袋に収納した、私が最初に倒した狼も
収納して貰いました。
一緒に村まで行く事になったので運んでもらう事になりました。
それから二人で橋のあった場所を見に行きました。そこは深い谷になっていて、
橋が架かっていた場所は10m位離れています。
「昨日お父さん達が渡った後に橋が壊れて落ちたそうです、
橋が無いとお父さんが村に帰れない」
私が感傷的になってつぶやくと
「昼食を食べようか、サンドイッチを持っているから」
「サンドイッチですか初めて聞きました」
昼食ですか、何か知らない名前が出てきました、そういえば弁当の事を
忘れていました。ルートさんがポケットから何か取り出して刺し出しました。
アイテム袋は便利ですね。
「卵サンド、パンにゆで卵を挟んだ食べ物だよ」
「柔らかいこれがパンですか、ゆで卵も美味しいです」
初めて見る食べ物です、凄く美味しいです。
「これはツナサンド、ツナは魚だね」
「これも美味しいです」
もう一個貰いました、パンは同じで中身が違います
「残りの一個はどちらかを選んで良いよ」
ルートさんが残り一個づつの卵サンドとツナサンドを差し出しました。
先程食べた味を思い出しながら少し冷静になって弟の事を想い出しました。
「あの、弟にも食べさせたいので持ち帰って良いですか」
「サンドイッチはまだあるから大丈夫だよ」
ルートさんは、ポケットから他のサンドイッチも取り出して見せました。
「卵サンドを下さい」
私は卵サンドを、ルートさんはツナサンドを食べました。
卵サンドはとても美味しいです!
それから弟の話になりました。
「弟のリュオンは8歳で身体が弱く朝は普通ですが昼過ぎになると
身体が怠く苦しくなる様で夕方に寝込む事が多いんです」
「それなら回復薬を飲ませてみようか」
「高価な薬ですよね代金を払えないです」
「代金なんて要らないよ、それと弟にも遠慮しない様に伝えてね」
代金は要らないそうです。
そして二人で村へ帰りました、ルートさんは帰る訳じゃないけどね。
歩きながら色んな話をしました、ルートさんは25歳で遠い国の出身で
一人旅をしているそうです。
「アイテム袋は珍しい物です、どうやって手に入れたのですか」
「チートスキルだよ、運が良かったね」
「素手で狼の相手をしていましたね、強いのですか」
「防御力は高いけれど、攻撃力は低いよ」
「ナイフは使わないのですか、切れ味は良さそうでしたが」
「そういえば使えるのかな、試してみたいね」
そんな話をして暫く歩いていると狼が一匹現れました。
「ナイフの切れ味を試すからリュイナは見ていて」
ルートさんが右手でポケットからナイフを取り出して構えました。
狼がナイフを見て警戒しながら近づいて行きます、狼が少し牽制、
ルートさんがナイフを振るう、狼が避ける、牽制、ナイフ、避ける。
狼がナイフを避けて右手に噛み付いた、そのまま倒れて左手で殴った
狼が離れて、ルートさんが立ち上がって仕切り直します。
右手を体の後ろに、左手を前に構えています、狼が左手に噛み付いて
右手のナイフが一閃、する前に狼が身をかわします。
(ルートさんの動きは初心者の様です)
ルートさんはナイフをポケットに入れて、ファイティングポーズです
狼が跳び掛かって右手に噛み付きました、そのまま倒れ込みます。
そしてルートさんは左手で出したナイフで狼を突き刺しました、2回、
3回、4、5、6、7メッタ刺しのオーバーキルです。
(ふうー、以上実況はリュイナでした)
狼が消えてルートさんが起き上がりました、倒れたままでアイテム袋に
狼を収納した様です。水を取り出して左手を洗っています。
私が近寄ると、少しホッとした顔で
「ナイフは止まっている相手なら刺せる事が分かったよ」
良く分からない事を言っています。
「狼に噛まれていましたよね、大丈夫ですか」
「うん、防御力は高いからね、多分リュイナの槍で刺されても平気だよ」
「本当ですか、試しても良いですか」
「良いよ」
私の槍が通用しないと言われてつい言い返したら試す事になりました。
最初は槍で腕を軽く刺して少しづつ強くしていったけれど手応え無し、
次に足、腹と強めに刺しても手ごたえがありません、最後は全力を込めて
腹に突き刺したら私の槍が砕けました。
泣きそうです。
「済みません、想定外でした」
「いえ、私こそ試すなんて無謀でした」
ルートさんが済まなそうな顔をしている、槍はアイテム袋に収納して貰った。
同じ年齢の子より強いと言われた事があり私は少しうぬぼれていました。
私は13歳になったので、町の冒険者ギルドで冒険者登録が出来ます
冒険者になって稼いで弟の病気に効く薬を買うつもりでした。
(・・・・・・)
村に近づくと五本の大きなケサナの木が見えます。
「あの柱みたいな物は何ですか」
「村の反対側に立っているケサナの木です、高さは20m位の固い木です」
村の入り口では見張りランスさんが槍を持って立っています。
「リュイナ無事だったか」
「はい、ルートさんに助けられました」
「こんにちはルートです、村に入っても良いですか」
「リュイナを助けてくれたのかありがとう、歓迎するよ」
村に入ると集会所に行って4匹の狼を引き渡しました。
狼を解体する人手は足りているので後で肉を届けてあげると言われました。
狼の肉は村人全員で分け合います。
(半分は皆で分けて、半分は村で買い取って欲しい人に売ります)
私の家へ帰ると弟のリュオンが出迎えています。
「お帰りなさい」
「ただいま、この人はルートさん、危ない処を助けてくれたの」
「こんにちはルートです、僕もリュイナちゃんに助けてもらいました」
「こんにちは」
「これを飲んでみて」
ルートさんが家に入りながら回復薬をリュオンに差し出しました。
「回復薬だよ、飲んでみて」
私の言葉に頷いてリュオンが回復薬を飲みます。
「凄い、こんなに速く効果が出るなんて」
すぐに効果が現れて、リュオンの雰囲気が今にも眠りそうな状態から
爽やかに目覚めた時の状態に変わりました。
ルートさんは椅子に座った後、そわそわした感じで言いました
「お母さんは?今日泊めて貰えるか確認したいから」
「あの、お母さんは6年前に亡くなりました」
「えっと、お父さんが不在だから、今は姉弟2人なの」
「はい、だから泊まるのは良いですよ」
母さんについて聞かれました、そう言えば話していませんね。
泊めるかどうかも家族に聞く事になっていたね。
「リュオン、ルートさんを泊めても良いよね」
「勿論です、是非泊まって下さい」
「よろしくお願いします」
ルートさんを私の家に泊める事になりました。
リュオンが昨日の橋での魔物の襲撃について詳しく話してくれました。
「いつもの様に6人で出掛けて町へ行く3人が橋を渡った後
約30匹のゴブリン集団に襲われて橋を渡ろうとしたゴブリンは
橋が壊れて落ちた時に大半が一緒に落ちて、こちら側に残った
15匹は3人で殲滅したけれどその際に3人が負傷しました」
ルートさんはリュオンの話を聞いた後
「リュイナ、負傷した3人に回復薬を届けて貰える」
「僕も一緒に行って良いですか」
「一人で残るのも何だし、3人で見舞いに行こうか」
負傷した3人の家を訪ねて回復薬を飲ませて回りました。
「おお、凄い、傷が治っていく、ありがとうございます」×3
その後、集会所で狼の肉を受け取るとルートさんがアイテム袋に
保管しておくと言ったので預けました。
夕飯はサンドイッチを食べました。
「卵サンド美味しいです」
「ハムチーズサンド美味しいです」
「ミックスサンド美味しいです」
(一日目終了って何の事ですか?)
サンドイッチは全部違う種類の予定でしたが、リュイナが卵サンドを気に入った様なので卵サンドを増やしました。
途中で暴走気味ですが、引かないで下さい。