2 目覚めと絶望と死神と執事
「う・・・ん・・・ここは・・・?」
私が目覚めたのは辺り一面に広がる草の上、つまり草原だった。そして横には何故か、鈍く光を反射する余りにも巨大な黒い大鎌が地面に刃を突き立て立っている。
「なに、これ・・・?それに、なんでこんなところに・・・?」
全く意味が解らない。
さっきまでは確か・・・
「あれ?さっきまでどこに居たんだっけ・・・?」
おかしいなと思いながらも、頭を捻りながら思い出そうとする。
だが次の瞬間、ザッと全身の血の気が引く音を幻聴した。
全く何も覚えていないのだ。
一般常識や言葉、自分のプロフィール―――名前や趣味など―――は覚えているのに他の事・・・例えば両親の名前や今まで通った学校の名前などの固有名詞が思い出せない。
両親の顔も両親の声も、思い出そうとすると頭の中には靄が掛かったような顔しか思い出せず、その人が何かを喋ってもダミー音声のように機械的に聞こえ、時たまノイズが走りところどころ聞こえない部分があったりする。
しかも、こうして思い出している最中でさえだんだんと記憶が抜け落ちていく。
抜け落ちていくたびノイズは酷くなり、靄はだんだんと濃くなっていく。
「あ・・・ああ・・・あああああああああああああッ!なんでッ!?なんで記憶が無くなるのッ!?い、嫌だッ!・・・や、やめて・・・ッ。私の記憶をとらないでよ・・・」
必死に思い出そうと、思考速度が際限なく加速していく。
「だ、誰か・・・助け・・・て・・・私の記憶を・・・取り戻して・・・取り戻せなくても・・・せめてこれ以上失いたくない・・・」
泣きじゃくる少女の声を聞き届ける者はこのだだっ広い草原に存在しない。
だが―――――
《特殊属性【絶望】を獲得しました》
《特殊技能に【絶望吸収】が追加されました》
《特殊技能【絶望吸収】が発動しました。ステータスが強化されます。スキル【絶望の波動】を取得しました》
《・・・現在のスキル構成では記憶の消去を阻止することは不可能です》
《スキル【思考速度上昇】を取得しました》
《【思考速度上昇】がLv2になりました》
《【思考速度上昇】がLv3になりました》
《【思考速度上昇】がLv4になりました》
《【思考速度上昇】がLv5になりました》
《【思考速度上昇】がLv5になったため、スキル【並立思考】Lv5を取得しました》
《【思考速度上昇】がLv6になりました》
《【並立思考】がLv6になりました》
《【絶望の波動】がLv2になりました》
《【絶望の波動】がLv3になりました》
《【思考速度上昇】がLv7になりました》
《【並立思考】がLv7になりました》
《【思考速度上昇】がLv8になりました》
《【並立思考】がLv8になりました》
《【思考速度上昇】がLv9になりました》
《【並立思考】がLv9になりました》
《【絶望の波動】がLv4になりました》
《【思考速度上昇】がLv10になりました》
《【思考速度上昇】が進化し、ユニークスキル【思考超加速】に進化しました》
《【並立思考】がLv10になりました》
《【並立思考】が進化し、ユニークスキル【思考超分裂】を進化しました》
《【絶望の波動】がLv5になりました》
《【魔眼】を取得しました》
《【思考超加速】【思考超分裂】取得により、記憶消去の阻止が出来る可能性が生まれました》
《記憶消去の原因の模索を開始します・・・模索中・・・原因不明。続いて記憶消去の阻止方法を模索を開始します・・・模索中・・・完了。阻止方法が確立しました》
《開始いたします。現在の記憶データを、分裂した別思考に移動及び保存し、記憶消去中のウイルスデータをウイルスが現在侵食中の思考ごと隔離、そしてアンチウイルスを散布し消去いたします。
また、並行してウイルスデータを伝いウイルスの発信源に攻撃ウイルスの散布、及び記憶データの回収を試みます》
《開始・・・失敗。抵抗されました。再度散布開始します・・・成功。完全にウイルスの消滅を確認しました。また、記憶データの回収に失敗しました。しかし謎データの回収に成功。ステータスに反映されます。今後解析を試みます》
《結果、これ以上の記憶の消去を阻止しました》
―――――返事ではないが、答える声は大量にあった。
「・・・え?何が・・・じゃなくて・・・今なんて?記憶の消去を阻止って言った・・・?はは・・・や、やった・・・ッ!誰かわからないけどありがとうッ!やった!やった!やった!はははッ!」
《特殊属性【希望】を獲得しました》
《特殊技能に【希望吸収】が追加されました》
《【希望吸収】が発動しました。ステータスを強化します。スキル【煌く波動】を取得しました》
《称号【希望への道標】を獲得しました》
《称号【絶望への最短距離】を獲得しました》
《【煌く波動】がLv2になりました》
それにしても・・・今のはいったい何だったんだろう・・・
スキルがどうたら言ってたけど・・・?
―――そのとき私は唐突にスキルについて悟る―――
「えっと・・・ステータス・・・でいいのかな・・・?わッ!なにこれ。ゲームの画面見たい・・・」
私の目の前にはゲームのような画面が宙に浮かんでいた。
そこには、私の名前やゲームでありがちなステータスパラメータ、そしてさっきも気になったスキル、他にもいろいろな項目があった。
-・-・-・-
名前・久良井咲良・18歳
種族・人族
レベル・1
攻撃力・275(ステータス強化)
防御力・990(ステータス強化)
敏捷力・891000(ステータス強化)
魔法攻撃力・9900000(ステータス強化)
魔法防御力・4400000(ステータス強化)
魔力・2.75+11(ステータス強化)
『スキル』
絶望の波動Lv5・魔眼Lv1・煌く波動Lv2
『ユニークスキル』
魔導の極意Lv--・魔導の極致Lv--・賢王之記録Lv--・思考超加速Lv1・思考超分裂Lv1
『特殊技能』
死吸収・魂吸収・絶望吸収・希望吸収
『オリジンスキル』
--進化--
[No,Data……]
『適性属性』
全・死【特殊】・絶望【特殊】・希望【特殊】
『称号』
異世界の魂・いずれ死神になる者・希望への道標・絶望への最短距離・#%$@*%4*2↑#%→
『加護』
死神の加護(極大)
-・-・-・-
「なんだかなあ・・・凄く物騒なステータスだなぁ・・・何なんだろう。この絶望吸収と死吸収と魂吸収とあと、このいずれ死神になる者ってやつがなあ。それに死神の加護、しかも極大。なんだかやばそう・・・」
しかし、なんなんだろう?
ゲームみたいな画面に、何かの音声みたいな声・・・全く、意味が分かんないよ。
誰か説明プリーズミー。
《私では説明することができません》
「うわっ!何!?って誰?どこ!?」
《咲良様のスキルの賢王之記録でございます》
「あ、ああ・・・なるほどね・・・スキルか・・・」
《はい》
「ん。意味は分かんないけど取り敢えず分かったよ。それで?スキルなんだから何かできるんでしょ?どういうことが出来るの?」
《はい。主に咲良様の質問に対してお答えすることができます。他には、スキルなどの説明が行えます》
「少ないけど超便利じゃんッ」
《ありがとうございます》
「う~ん。名前を付けようかな。そうだなぁ~性別は男なんだろうしなぁ・・・よし、決めた!これから賢王之記録の名前はクロードね!よろしく!」
《よろしくお願いいたします、お嬢様。このクロード、全身全霊を持って仕えさせていただきます》
「なんだか一気に人間味を帯びたね」
《名前を得たためではないかと》
「なるほどね。・・・それじゃあ早速だけどスキルの説明をお願い」
《畏まりました。ではまずステータスの方からご説明いたします。攻撃力とは物理攻撃の威力や筋力の高さを表しております。ですが、例えば線の細い女性の方でも筋肉がガッチリとついた男性より攻撃力が上回っている場合がございます。なぜならその女性の方が男性の方よりレベルが高いからです。他にも多くの原因がありますがとにかくこの世界はステータスが重要ですので、どんな敵が相手でも十分お気を付けを》
《続いて、防御力とは物理攻撃に対する耐性や体の頑丈さを表しております。この防御力も見た目とは余り関係がございません。人によっては素肌で刃物を弾く可能性がございますのでお気を付けを》
《次に、敏捷力とはすべての行動のスピードを表しております。走る際のスピード然り、魔法の詠唱速度然り、物事の習熟するスピード然りでございます。より高ければ高い程早くなります》
《次に、魔法攻撃力とは魔法攻撃の威力を表しております。高ければ高い程威力が高まります》
《次に、魔法防御力とは魔法に対する耐性の高さを表しております。高ければ高い程魔法の威力が減衰します》
《次に、魔力とはその者が持つ現在の魔力の量を表しております。高ければ高い程魔力を保有しているため、魔法の連射や魔法の威力を高めるなど様々なことが可能となります。お嬢様は魔力が桁外れ・・・というよりレベル1の現在で既に龍王は9体居ますが、その内3体の合計値を上回っております。また、魔法関連のステータスが非常に高いため生粋の魔法型と言えるでしょう》
《最後に、適性属性とはその者が生涯で使える魔法の属性が載っています。例外もありますが基本使える属性は増えることはございません。属性には基本属性として火、水、風、土があり、派生属性が氷、雷、木、光、闇がございます。他にも特殊属性があり、これは最大数が知られておらず数は不明でございます。お嬢様は属性全てに適性があることを示す全の属性に、さらには特殊属性が三つもございます。これはとてつもなく魔法の才能に恵まれていることとなります》
「お、おお・・・」
怒涛の説明ラッシュだ。しかもまだスキルの説明はしてない・・・ひえ~!
《続いてスキルの説明に・・・「ちょっと待った!」・・・どうなさいましたか、お嬢様?》
「いや~スキルの説明はまた今度にしようかなぁ~って思って」
《なりませんッ!》
「うぇッ!?」
《・・・失礼しました。お許しください》
「い、いや・・・いいんだけど・・・どうしたの?」
《この世界は日本のような治安の良い所ではございません。盗賊は当たり前のように出没いたしますし、地球には存在しない魔物という危険な生き物も存在します。そんな世界で自分のスキルを理解せずにいるなど・・・大変失礼ながら申し上げます。愚の骨頂でございます!盗賊に捕まれば金品を盗まれ、その後壊れて死ぬまで盗賊達の性奴隷として毎日のように犯され続けるでしょう。襲われたのが魔物であれば、生きたまま貪り食われてとてつもない恐怖と痛みを味わいながら死ぬことでしょう。どちらにせよ何らかの抵抗する・・・もしくは返り討ちで殲滅するだけの手段が必要不可欠となるのです!よって今スキルの確認は非常に重要なことなのでございます!》
「・・・・・・・わかった。そこまで必死になるくらいだからね。ちゃんと自分のスキルについて確認しておこうかなッ!」
《お、お嬢様・・・かしこまりました!ではしっかりとお嬢様のスキルについて学んでいきましょう!》
《まずはスキルの中でも最も種類が多いと言われる通常スキルとも言われるスキルからでございます。お嬢様が取得されているのは絶望の波動、煌く波動に魔眼の三つでございますね。絶望の波動は使用するとお嬢様に黒いオーラが纏わりつきます。このオーラは魔力を込めることが出来、込めれば込めるほど敵を威圧することが可能です。敵が弱いときに魔力を50万ほど込めるとショック死の可能性があります。
次は、煌く波動です。これは絶望の波動のオーラの色が金色になったものです。同時に使うことも可能なのでとても強力になるかと思われます。
最後に、魔眼についてです。これはレベルによって使える魔眼の種類が増えていきます。レベルが1の今は鑑定の魔眼のみです。鑑定の魔眼とは、使うことにより生き物ならステータスが、物であれば名前や、どういう効果をもっているか確認できます。スキルについてはこれで以上です》
やっぱり怒涛の説明ラッシュだ・・・
でも、魔眼っていう使えそうなスキルがあったからよかったなぁ
なかったら私泣いてたよ絶対。
《続いてはユニークスキルについてでございます。これは所有するものが極端に少なく、所有しているだけでその方は才能があると言えるでしょう。お嬢様が所有するユニークスキルは魔導の極意、魔導の極致、賢王之記録、思考超加速、思考超分裂の五つでございますね。
魔導の極意はイメージ再現力が最大になります。・・・つまりイメージのみで魔法が使用可能となり、詠唱が不必要となります。また、魔法の威力が約5割ほど高くなります。
次に、魔導の極致でございます。魔導の極致は魔法使用時、魔法に関するあらゆることに最大補正が掛かります。
次に、賢王之記録についてですがこれは私のことなので先ほど説明した通りでございます。
次に、思考超加速でございます。これはお嬢様の思考する速度を1000倍にまで上げます。これにより脳内のみ1秒を1000秒にすることが出来ます。
最後に、思考超分裂でございます。これはお嬢様が思考時に並立してスキルが多数の意思を持ち、お嬢様と同じことや違うことを思考することで複数のことについて同時に考えることが可能となります。すべての意思に同時に同じことを考えさせると、例えば膨大な量の演算を瞬時に済ませたり、画期的な方法を思いついたりすることも可能でございます》
全部超便利じゃん・・・
説明聞いて正解だったかも・・・
《続いて特殊技能についてでございます。これは・・・すみません、お嬢様。特殊技能については私では説明することが出来ません》
「え?なんで?」
《この特殊技能というものは元々世界には存在することのない項目でございました。ですがスキルについての説明は可能でございます》
「存在しなかったんだ・・・まぁどうでもいいよね!それじゃあクロード、スキルの説明お願い!」
《かしこまりました。お嬢様の所有するスキルは絶望吸収、死吸収、魂吸収、希望吸収の四つでございますね。
絶望吸収は生きている者の絶望という感情を吸収します。吸収するとステータスが強化されたりスキルを得たりします。ステータスの強化率は固定ではなく、感情の強さによって変化いたします。
次に、死吸収です。これは絶望吸収の吸収する感情が死に変化しただけで他は何も相違ありません。
次に、魂吸収でございます。これは生き物が死んだ後に出現する魂を可視化し、吸収するスキルでございます。吸収すると、その生き物が所有していたスキルを手に入れることが可能でございます。
最後に、希望吸収でございます。これは絶望吸収の吸収する感情が希望に変化しただけで他は何も相違ありません》
「うん。超物騒だわこれ。なにこの魂吸収って。魂吸ってどうすんの!?・・・あ、スキルを奪うのか。あはは・・・」
《最後に「まさかのスルーッ!?」・・・最後はオリジンスキルでございます。「スルーするのね・・・あ、駄洒落じゃないよ?」・・・オリジンスキルも私では説明することが出来ません。・・・では、スキルの説明に入ります。お嬢様が所有するスキルは進化のみでございます。これは・・・すみません、お嬢様。今回はスキルの説明すら詳細不明でございます》
「それ本当!?なんだか不気味だなあ。No,Dataとかあるし・・・」
《あまり心配せずともよろしいかと》
「そう?なんで?」
《何故でしょうか・・・只のデータのはずなんですが何故かお嬢様に害を及ぼすことはないと断言できてしまうのです》
「う~ん。なら問題ないね。クロードが言うんだから」
《お・・・お嬢様・・・このクロード、そこまで信頼していただけ感激の極みでございます!》
「そ、そう・・・それは良かったよ・・・・・・あ」
《どうされましたか、お嬢様》
「ん?いやさ・・・明らかにこの草原にあるのが不自然極まりないこの大鎌がさ・・・」
《この大鎌でございますか・・・鑑定の魔眼を使うとよろしいのでは?》
「なるほど。確かに!冴えてるね!」
《恐縮でございます》
「それじゃ早速鑑定の魔眼を使ってみようかな・・・」
「・・・・・・・」
《どうされましたか、お嬢様?》
「・・・うえっ!?あ、あはは・・・い、いやさ・・・スキルってどう使うの?」
《・・・・・・・》
まさに絶句という感じが痛い程伝わってきたよ・・・
《スキルの使用方法の説明がまだでしたね・・・直ぐにお教えしましょう!》
「よろしくね・・・」
《とは言ったもののそこまで難しくはございません。使いたいスキルを思い浮かべ、頭の中でスキル名を言うだけでございます》
「簡単だね。それじゃあ今度こそ」
(鑑定の魔眼!)
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名前・死の大鎌
『スキル』
スキル授与{死鎌術Lv--・死神の魔眼Lv10・亡霊隠蔽術Lv10・偽造Lv10}
『説明』
死神が魂の回収時に使用すると言われる大鎌。通常の鎌とは大きく異なり柄は約1.5倍長く、刃に至っては刃渡りが2倍も大きくなっている。いつからここに在るのか全く不明である。
製作者・不明
持ち主・久良井咲良
-・-・-・-
「うぇッ!?な、なんで私が持ち主になってるの!?」
《お嬢様が所有者だったのですか!?》
「違うよッ!?いや確かに表記上はそうなっているけど私こんな大鎌初めて見たよ!?寧ろ鎌すら見たことないよ!それなのに・・・なんでかは知らないけど私が持ち主になっているんだよッ!」
《そ、そうでございましたか・・・ですがこれは好都合では?》
「なにが好都合なの?」
《はい。お嬢様は今現在武器を所持しておりません。ですのでここで武器を手に入れたことは、自衛目的や攻撃手段としても非常に好都合ではないかと思ったのです》
「確かにそうだね。武器はあっても困ることはないはずだしね」
そう言いながら私は死の大鎌を手に取った。
「思ったよりもずっと軽いね・・・」
《称号≪いずれ死神になる者≫を確認。死の呪いを解除します》
《称号≪いずれ死神になる者≫を確認。死の大鎌のスキル、【スキル授与】が発動しました》
《スキル【死鎌術】を取得しました》
《スキル【死神の魔眼】を取得しました》
《スキル【亡霊隠蔽術】を取得しました》
《スキル【偽造】を取得しました》
《【死神の魔眼】と【魔眼】が統合され【集魔混沌眼】となりました》
《【絶望の波動】と【亡霊隠蔽術】が統合され【死神の外套】となりました》
「へ?」
《今度はどうなさいましたか?》
「あ。いやさ・・・この大鎌がスキル授与っていうスキルを持っていたんだけど、それが発動してさ・・・ってはあ!?」
《またしても、どうなさいましたか・・・?》
「いや死の呪いっていうのがこの大鎌あったらしくて、それが鑑定結果になかったんだよ!」
《つまりは今お嬢様は死の呪いを受けたということでございますか!?いかがいたしましょうか!?私如きが好都合などと申し上げなければッ》
「いやいや大丈夫だから。なんか称号があったから解除されたんだよね~」
《・・・そ、それを早く言ってくださいませ・・・》
「あはは・・・ごめんね・・・」
《いえ。お嬢様が謝ることはございません。私が愚かで軽率だっただけでありますので》
「そうかなあ?多分私は何も言われなくても拾ってたと思うよ?だから大丈夫だよ」
《・・・ありがたきお言葉でございます・・・》
「な、泣くほど!?」
《感激のあまりつい・・・すみませんお嬢様》
「いや、いいんだけどね。それよりこれからどうするかなんだけど・・・ん?なんだろあれ?」
《どうなされましたか。お嬢様?》
「いや・・・あっちの方から、なんていうの?鉄がぶつかり合う音・・・剣戟っていうんだっけ?が聞こえてきたから」
《・・・盗賊にどなたかが襲われているのではないでしょうか》
「えっ?ど、どうしようかな・・・」
《あまりお勧めいたしません。お嬢様はついさっきこの世界に来たばかり。スキルもまともに使えないのではただの自殺行為かと思われます》
「・・・それでも行くよ。なんだかなあ・・・見捨てられないんだよね~。まあ、会ったこともないけどね」
《・・・お嬢様はお優しいのでございますね。ではもうお止めくださいとは言いません》
「よかった《ただし》な、なに?」
《人を殺めるお覚悟を。直前でためらってしまっては逆に殺されてしまいますゆえ》
「・・・うん。大丈夫。覚悟はちゃんと決めたよ。ちゃんと人は殺せる」
《なら、私が申すことは何もございません。いってらっしゃいませ》
「うん。いってくる・・・っていってもスキルだしずっといるよね」
《そこは気分の問題でございますよ。お嬢様》
「ははは・・・」