四人の護衛
ドアの開閉音が聞こえ、四人の男が入って来た。
「こ、こんにちは...」
「こんにちは、お嬢さん」
メガネは、理沙に会釈した。すると、セシルは顔をしかめたが、彼は気にする様子もなかった。チャラ男が話し始めた。
「自分は徳永 大斗って言います」
「はぁ...徳永さんですか...」
「私は蘇我 忠之」
「蘇我さん...」
ーーお二人は日本人のようだけど、後の二人は瞳の色的に外人さんかな?
俺様さんが言った。
「俺はナイト・フレシール」
「ナイトさん」
「ぼ、僕は...ブレイ・カードと言います。よろしく」
「ブレイさん...」
セシルつぅーも続けて言った。否、ブレイだ。
「あの...貴女方は何の用事で此処へ? 犬飼さんの指示というのは分かりますが...」
セシルは訝し気な目で四人を見る。すると、徳永さんが笑って言った。
「自分等は、犬飼さん指示で新しい護衛として派遣されたっス。通常はともかく、外出時は必ずとの事っス」
「が、外出?」
「聞いていないのか? Mr.イヌカイからお前の外出許可が出た。勿論ホテル外の外出だ」
ナイトは理沙は興味深そうに見つめた。
「犬飼さんが許可を出した? あの人が?」
「失礼な奴だな。彼は許可を出した。だが、何処に行くかとか何時戻るとか、全て申請しないといけないがな」
「犬飼さん...」
犬飼さんも、もしかしたら良い人なのかもしれない。あんなにしつこく虐めて来たのに、外出許可を出すなんて理沙的には異常だった。もしかしたら熱でも出ていたのかもしれない。
「犬飼さんは貴女の事を心配して、今まで外に出さなかったんです。安心しなさい。私達はこの道のエリートです。安全は保証されます」
「セシルだけでは十分じゃないんですか?」
「彼は勿論優秀ですが、犬飼さんはそれだけでは貴女を外に出したくありません」
蘇我さんは、メガネをカチャっと押し上げた。
「分かり...ました...」
「さて、まず我々は、貴女の事をよく知りません。犬飼さんからは、貴女自身に聞けと言われているのです。さて、お話ください。貴女が何故世界に幽閉され、隠されているのか」
「...」
理沙は、途切れ途切れになりながらも自分の知っている情報を彼らに教えた。記憶を辿り、交通事故の事だって話した。別に大して嫌な気分にはならなかったが、何だか心が暗くなったような気がした。
彼らは黙って理沙の話を聞いていた。セシルにも一度話したが、彼も熱心に聞いてくれた。そして、話し終わった時、蘇我さんが口を開いた。
「ありがとうございます。では、貴女が『SR』と呼ばれるのは、細胞が『不老不死』になれる可能性を秘めたからなのですね」
「...そう、ですね」
セシルは、暗い表情を浮かべた理沙の背中を撫でた。蘇我さんは一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに言った。
「さて、我々は、隣の部屋で待機しています。何処か行きたい所があれば言ってください。可能ならば連れて行きましょう」
四人が出て行くと、セシルがベッドに座る理沙の前にしゃがみ込み、理沙の顔を覗き込んだ。
「大丈夫?」
「大丈夫。大丈夫」
「無理して話さなくても良かったのに。理沙、嫌なら嫌って言っても良いんだよ?」
「嫌じゃないから。それに、明日はあの人達に外に連れて行ってもらうつもりなんだから。嫌とか言えないし...」
「そう...」
理沙はベッドに横になった。
「ねぇセシル、ニューヨークで有名な物と言えば?」
「そりゃあ、『セントラルパーク』に『自由の女神』に『タイムズスクエア』とかだね」
「あー、やっぱりそれがポピュラーだよね。じゃあ、明日はそこに連れて行ってもらおう♪」
「そうだね。僕も楽しみだよ」