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外出要請


「ホテル以外の外出の要請が来ている。もの凄い数だ」



 国際連合本部の一室。犬飼さんは、長いツクエに散らばるたくさんの書類の一つを手に取り、独り言のようにつぶやいた。だが、目の前には、四人の男。一人は目付きの悪い赤い瞳を持ち、どちらかと言えば犬飼さんに似ている人だ(以下俺様さん)。一人は淡い水色の瞳を持った優しそうな顔をしたセシル似の人(以下セシルつぅー)。一人は金髪ヤンキーでありそうなチャラチャラした顔つきの人(以下チャラ男)。最後の一人は黒目黒髪のメガネをかけた理系な人(以下メガネ)。

 チャラ男とメガネ以外は日本人ではなく、外人の人だった。



「ちなみに、その大半が部下や護衛や研究者達からだった。これはどういう事か分かるか?」

「ええっと...許可、したんっスか?」



 チャラ男が言った。すると、犬飼さんはため息をついた。



「斉藤に会わせてから、ヤケに明るくなりやがって。おかげで人気者なんだよ...俺さえも護衛に面会拒否られて...」

「なんだかんだ言いながらも、やっぱり犬飼さんは『SR』の事が心配なんですね? 監禁って言ってるのも、実際は逃げ出さない為ではなく、守る為なのでは?」



 ニヤニヤ笑う俺様さんを、犬飼さんは睨みつける。



「お前、クビになりたいか?」

「いえ。ですが、犬飼さんが俺をクビに出来ないのは知ってます。本当は部下思いの良いひーー」

「それで本題だ!」



 犬飼さんの本当の姿が明かされそうになった途端、彼は話を遮る。ちえー、みんなも知りたかったよね? え? 何? もう分かるって? チッ、俺様さんの言葉、もうちょっと削れば良かったぜ。(作者)ながらの失態だぜ(笑)。



「外出する際にーーいや、通常でもお前等にはセシル同様『SR』の護衛を頼みたい」

『分かりました(っス)』

「仮にあいつが逃げ出したり誘拐されたりでもしたら、お前等の責任だからな?」

『はい(っス』

「じゃ、行け。ほら早く」



 四人は返事をして部屋を出て行った。すると、犬飼さんは悲しそうな顔で自分のスマホを取り出し、起動させた。



「理沙...」



 壁紙は、何と「理沙と斉藤さんの写真」だった。二人で一緒に写っている。どちらとも笑顔だった。犬飼さんは、その写真を愛おしそうに眺めた。

 犬飼さんのスマホの写真ホルダの中には、大量の写真が入っている。それは全て、盗撮されたような「理沙の写真」だ。まるでストーカーの携帯のような感じだった。



 **



「よぅリサ! 外出要請を出したぜ! 今度はみんなでな」

「またですか? 好い加減にしないと、犬飼さんが文句言いに来ますよ?」

「良いって事よ、リサの為ならみんな何だってするさ」



 理沙は、ホテルの娯楽スペースで黒いスーツに黒いグラサンの通称「黒黒護衛集団」の黒人マッチョ系のリーダーとお喋りをしていた。「黒黒護衛集団」の人達は、一見怖そうだが、サングラスを外して見るとみんな優しそうな顔をしているし、体が厳つくてもみんな良い人達ばかりだ。

 彼らは、理沙がホテル以外の外出が出来るように、しつこく犬飼さんに書類や手紙を送っているメンバーの一環でもある。



「そうだリサ、今度『カジノ』に行ってみるか?」

「私日本人ですぅ、お金懸けるゲームとかやりませーん」

「ま、律儀なこった」



 リーダーは、理沙の頭をくしゃくしゃっと撫でると、真剣に「ビリヤード」をするセシルを見た。何だか集中する姿がかっこ良かった。

 カン...とボールの当たる音が響く。1、2、3、4ーーと順番ずつボールが穴に落ちて行く。周りで見物する人達は、「ブラボー!」と手を叩いた。



「いやぁ、セシルは流石だな。あいつは小さい頃から『ビリヤード』が上手かったんだ」

「そうなんですか?」

「あぁ。そっちの道に進めば、成功したんだろうがな、あいつは自分の好きな仕事を選んだんだ」

「好きな仕事?」



 理沙は、見物人にどうもどうもと頭を下げるセシルを見つめた。



「あいつは俺の教え子でさ、武術は最高クラスだった。俺さえも負けたよ」

「へー、セシルって武術が出来るんだ...」

「護衛だぞ? それぐらい出来て当然だ」



 リーダーは、傷のある頬を撫でた。



「これはあいつにやられた跡さ。無惨にもやられた。武術っつうのにな...。あいつは怒らすと怖いぞ? ま、リサには傷なんかつけねぇだろうな」

「...」

「あいつは人を守るのが好きだった。だからこの道に進んだのさ。んま、結果は分かるな? 良かったと思うぞ」



 ーーそっか、セシルは人を守るのが好きなんだ...。流石だな...セシルが本当のお兄ちゃんだったら良かったんだけどね...。



「セシルは良い奴だ。リサは幸せだな」



 とリーダーはつぶやいたが、それは理沙の耳に入っていなかった。



 **



「此処、ですね」

「此処だな」

「此処っスね」

「此処だね」



 翌日の朝、理沙の部屋の前には四人の男が居た。それは、犬飼さんに命令を受けていたあの四人だった。横に居る護衛の人は、彼らをキッと睨んでいる。



「何の用だ」

「失礼、我々は、Mr.イヌカイの指示で此処に来ました。追加の護衛です。それと、『SR』の外出許可が下りました」



 メガネが護衛に言った。すると護衛は顔をしかめた。



「リサは、『SR』と呼ぶ人間を嫌悪している。嫌われたくなかったら、『リサ』と呼ぶ事を推薦する」

「そうですか。では、リサと呼ばせて頂きます。それで...入ってもよろしいでしょうか?」

「...俺が聞く」



 護衛はノックをすると、そのまま話しかけた。



「リサ、お客が来ているが、通すか?」



 すると、可愛い声が返って来た。



『え? お客? 何方ですか?』

「それがよく分からないんだが...犬飼さんの指示で来たと言っている」

『犬飼さんの指示? まぁよく分かりませんが、それなら別に構いませんよ?」



 この階に部外者が入って来る時は、必ず身体検査と金属探知機でぴーぴーがされる。いや、最後のは気にしないで。

 だからとりあえず、此処に入って来れたという事は安全とみて間違いない。



「分かった。...入っても良いぞ」

「では、失礼します...!」



 ドアの開閉音が聞こえ、四人の男が入って来た。


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