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「おっちゃーん!買いに来たよ!」
元気な猫族が元気よく片手を上げて、やってきた。猫族のまだ子猫のラムだ。
「おっちゃんじゃなく、お兄さん、な」
無邪気に懐いてくるラムの頭を撫でる。だけど今は撫でられたい気分じゃないのか頭をブルブル振って、俺の手を振り落とした。
「あー!私が買いたかった手鏡がない!」
周りを見回したラムは目当ての手鏡があった場所を見て、騒ぎ始めた。
「残念だったな。もう売れた」
「もー!せっかくお小遣いを貯めて買いに来たのに!本当にもうないの!?」
「悪いな。アレは1点物だから、もうないんだよ」
「そっかー、残念すぎる。狙ってたのにー」
「言ってくれれば売らなかったぞ」
「んー、言おうと思ったんだけど、ほら、私って気まぐれだからさ。欲しくなくなる場合もあるんだよねー。だから言えなくてさ」
「そうか。まあ、縁がなかったと思って諦めるんだな」
「ニャー・・・」
耳と尻尾が垂れ下がっている。よっぽど欲しかったんだな。
他の手鏡には見向きもせずに、来たときの勢いはどこへやらトボトボと去って行った。