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鼠族がチョロチョロと店内を忙しなくグルグル回っていた。
足を止めることなく、品物を横目で流しながら、行ったり来たり。
決められないのか、その足が止まることはなかった。
俺は普段あまりお客様に声をかけることはしないが、これはヒドい。もう何10周も回っている。
いい加減目障り・・・、ゴホン。目障りだ。
「お客様、何かお探しですか?」
「あ、うん。友達への誕生日プレゼントを探しているんだ。でも、これは!というものが見つからないんだ」
「その方は何族ですか?」
「馬族だよ」
俺は先日地下倉庫にしまった品物を思い出した。
「それなら、人参の置物とかはどうですか?」
「人参の置物かぁ。いいかもしれない。でも店内にそんな置物なかったよ」
「少々お待ちください」
俺は地下倉庫から人参の置物を取り出してきた。
「これですが、いかがでしょうか?」
「わあ、本物の人参みたいだ!これにするよ!」
「お買い上げありがとうございます」
俺はプレゼント用なので、綺麗にラッピングして鼠族に渡した。
代金を支払った鼠族は嬉しそうにプレゼントを持つと、忙しなく去って行った。
少しイライラしていた俺は、小さく息を吐いたのだった。




