Aldebaran
読み方:アルデバラン
意味:後に続く者
そして3ヶ月後。
僕は試験に合格した。君は来なかった。悲しかったよ、とてもね、とミキトが呟く。ヒカルはその日のことを思い出し、言い訳をしようと口を開く。だがそれをミキトが止めた。
僕は人伝で、君が何処にいるのかを聞いたよ、と言って悲しそうに笑った。
その日、ヒカルは町の片隅にある屋敷にいた。彼女は瞳に涙を湛えながらも、目の前の暴君を快楽の淵へと押し込もうと必死だった。彼は言ったのだ。「男と会う約束があるらしいな。その前に私を力尽きさせてみろ」と。彼女は頑張った。ひたすらに腰を動かし、口を動かし、絶え間なく愛を囁く。それでも駄目だった。
約束の時間をとうに過ぎた頃、彼は果てた。そして彼女に言う。「さあ、行けばいいさ。待っているわけがない」
彼女は走った。途中から降り注いできた神の涙に全身を濡らしながら。ただ、ただ、ひたすらに走った。そして見つける。
全身をずぶ濡れにしながらも微笑みながら立つミキトを。
「随分と待ったよ」彼は言った。
「……ごめんなさい」雨に掻き消されそうなほど小さな声で彼女は言った。
「お疲れ様」
「……」
「ご飯でも食べに行くかい?」
「……」
「でもこんなに濡れていたら、高いレストランは無理だね。僕の経済的にも」
「……」
「だから、ステーキなんかどうだい?ブッフェがあるんだ」
「……あの」
「ねえ」
ミキトは頬に塩辛い雨をつたわせている彼女をそっと抱き締める。
「君が笑わなきゃ僕が来た意味がない」
そう言って冷たい彼女の手を引いた。