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遥か先に視る想い  作者: 埋木花咲
第2章 後に続く者
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Aldebaran

読み方:アルデバラン

意味:後に続く者

 そして3ヶ月後。

 僕は試験に合格した。君は来なかった。悲しかったよ、とてもね、とミキトが呟く。ヒカルはその日のことを思い出し、言い訳をしようと口を開く。だがそれをミキトが止めた。

 僕は人伝で、君が何処にいるのかを聞いたよ、と言って悲しそうに笑った。

 その日、ヒカルは町の片隅にある屋敷にいた。彼女は瞳に涙を湛えながらも、目の前の暴君を快楽の淵へと押し込もうと必死だった。彼は言ったのだ。「男と会う約束があるらしいな。その前に私を力尽きさせてみろ」と。彼女は頑張った。ひたすらに腰を動かし、口を動かし、絶え間なく愛を囁く。それでも駄目だった。

 約束の時間をとうに過ぎた頃、彼は果てた。そして彼女に言う。「さあ、行けばいいさ。待っているわけがない」

 彼女は走った。途中から降り注いできた神の涙に全身を濡らしながら。ただ、ただ、ひたすらに走った。そして見つける。

 全身をずぶ濡れにしながらも微笑みながら立つミキトを。

「随分と待ったよ」彼は言った。

「……ごめんなさい」雨に掻き消されそうなほど小さな声で彼女は言った。

「お疲れ様」

「……」

「ご飯でも食べに行くかい?」

「……」

「でもこんなに濡れていたら、高いレストランは無理だね。僕の経済的にも」

「……」

「だから、ステーキなんかどうだい?ブッフェがあるんだ」

「……あの」

「ねえ」

 ミキトは頬に塩辛い雨をつたわせている彼女をそっと抱き締める。

「君が笑わなきゃ僕が来た意味がない」

 そう言って冷たい彼女の手を引いた。

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