Canopus
読み方:カノープス
意味:案内人
夕暮れの公園に佇んでいた。周りには寂れた遊具が閑散としている。ブランコが揺れてキィキィと音を立てていた。誰もいないはずの砂場がかき乱されたように砂を散らしている。全て風の悪戯だった。スカートが捲れ上がる。それを押さえながら女は走り寄ってきた。どうしたのだろうかと思っていると「なんでもないよ」と抱きついた。
その声は少し悲しげで私は彼女をきつく抱きしめる。それに呼応するように彼女も私をきつく抱きしめた。幸せな時間が流れていた。
夕暮れが捩れるようにして真っ暗になった。右も左も見えない。叫ぼうにも叫べない。彼女の温もりが消えていた。
ぼうっとした人影が浮かび上がる。まるでそれは自分のことをあざ笑っているようで、無性に腹が立って殴りつける。意外にもその影は私の拳の打撃を受けとめた。受け止めてよろけて倒れる。
それを見つめる2つの影があった。
「利用のかけらもないゲス野郎だ」
1つの影が言った。それに呼応してもう1つが答えるように囁いた。余りにも小さすぎた囁きに、私は聞き返す。しかし彼女がもう1度口を開く前に視界が暗闇に包まれた。