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遥か先に視る想い  作者: 埋木花咲
第1章 先立つ者
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Procyon

読み方:プロキオン

意味:先立つ者

 単段式宇宙輸送機、通称 SSTO・JOURNEY。

 それがこの船の名前である。正確には覚えていないが、1世紀程前から『人類の宇宙空間への進出』を掲げて造られた宇宙船だ。完成までにあったことを語れば1日は使えるのではないか、というくらいの歴史があるらしいが割愛しようと思う。過去に捕らわれている暇はないのだ。

 今から4年前。我々の住む星以外の生命体が存続可能な星を発見したという報告を受け、全人類に先駆けて宇宙空間へと飛び出したのだった。乗船できたのは限られた人間のみ。それでも数100万の人間を乗せて、船は飛行している。4カ月前までは行われていた地球との更新も今では途絶えてしまった。この船の中では4年の月日も、地球上では10年になる。未だ目的地に辿り着けない船に愛想を尽かしたのか。はたまた人類が滅亡してしまったのか。定かではないし、知る由もない。

 彼女にとっての唯一の問題と言えば、宇宙空間での長い月日を共有できない許嫁の存在だった。彼は今、冷凍人間として船尾室に眠っている。そこには他の人間も眠っているわけだが、いつ何が起こるかわからない。万が一、このままどこにも辿り着けず、推進剤が残り僅かになったら。

 彼女も仲間達も、船尾室の切り離しを選ぶだろう。

 それはあってはならないことだ。けれど同時に、最終手段としては存在する最善の選択肢であった。

 別れの挨拶をしなかったことが唯一の思い残しだな、と彼女は言った。

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