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遥か先に視る想い  作者: 埋木花咲
第2章 後に続く者
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Aldebaran

読み方:アルデバラン

意味:後に続く者

 叫び声で目が覚めた。裏切り者、という声も聞こえる。急いで着替え、カプセルから出た。アンリはいない。声はハルとミヤビの部屋から聞こえていた。ミキトとチハルの声もする。誰かの泣き声が聞こえる。嫌な予感がした。

 ドアが開いている。中から異様な匂いがした。床にはいつくばるようにアンリがしゃがみ込んでいる。そんな彼女をひたすら蹴り、殴り、罵倒するハルの姿があった。

「……何があったんだ」

 ヒカルの声に一瞬静けさが戻る。そう。朝のこの時間、本来はこんな感じに静かだ。そう思った矢先にハルが叫んだ。

 あんたのルームメイトは人殺しよ、と。

 彼女が何を言っているのかわからなかった。それ以前に自分のとった行動が理解できていなかった。気づいたらハルが床に倒れていた。そんな彼女に馬乗りになり、ヒカルは今、殴っている。

「……! ヒカル、やめて!」

 叫んでいるのは誰なのか。この際、関係はない。自分の大事な人を罵倒する人間など、彼女にとっては只のゴミくずでしかなかった。だから殴る。形がなくなるまで。

「ヒカルやめろ」

 そう言って振り下ろす右手に誰かがしがみつく。それを振り払おうと振り返ったところで、彼女は抱きしめられた。この匂いは……ミキトだ。

「君まで人殺しにならないでくれ」

 その言葉でヒカルは自分の手を見た。それから、周りを見た。アンリが恐怖を湛えた目でこちらを見ている。チハルは一瞬にして目を逸らす。喧騒に気づき起きてきたロイやヨシキでさえも、彼女と目を合わせようとはしなかった。それから彼女はさっきまで自分が殴っていたものを見た。それは鼻が折れ目は血まみれで腫れ上がり、面影一つなくなってしまったハルだった。いや、これは、ミヤビだろうか。双子である彼女らを唯一見分けることができた黒子が、今は血にまみれて見ることができない。

 ヒカルは込み上げる吐き気に意識を取られ、その場に倒れ込んだ。

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