表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遥か先に視る想い  作者: 埋木花咲
第2章 後に続く者
24/38

Canopus

読み方:カノープス

意味:案内人

「久々にお花見でもしましょうよ」

 唐突に彼女は言った。いつもよりも豪華なお弁当を作っていると思ったら……。あまりにも唐突な言葉に私は微笑む。

「いい場所を知ってるのよ!」

 そう言って本棚へと駆け寄る。そこには彼女のコレクションが並んでいた。その中の『びゅーすぽっと』と書かれた冊子を持ってくる。他にも『でりしゃす』やら『あめいじんぐびゅー』やら書いてあるが、全て平仮名なのは彼女が英語が苦手なせいだろうか。

「……えっと……95……93、94、95っと!これこれ、ここ。ね?近いし綺麗だし出店もあるし!歩いていけるから飲み放題だよ!」

 確かにいいかもしれない。花見なんていつぶりだろうか?たぶん小学6年の春以来かもしれない。こんな初老になるまで日本の嗜みをしていなかったのか、と嘆きたくなった。彼女を見るとせっせとお弁当を鞄に積めている。その姿をボーッと見ていると怒られた。

「早く行かないと、場所埋まっちゃうよ!ヒカルも急いで!」

 しぶしぶ飲み掛けの珈琲を起き、着替え始める。春だというのにまだ肌寒い。長袖の上にパーカーを羽織り、頭にはニット帽。そして、春には欠かせない白いあいつを口元に装備する。そう、マスクだ。

「準備いい?いくよ?カメラ持った?……デジカメもだけど、ビデオカメラ!」

 彼女は部屋の中をまるで追い詰められたゴキブリの様に右往左往している。その姿が面白くて笑った。行こう、そう言って車を運転し始める彼女。楽しそうな顔。それが一気に歪んだ。

 胸元には刃物。そして「どうして?」の問いかけ。

 私は必死で「私じゃない」と繰り返す。

「私たぶんその場にいられないよ」

 そう、チハルが呟く。やめて、と私は叫ぶ。そんな私を真っ直ぐに見つめてミキトが言った。

「だけど、受け止めたくない現実が、時に真実だったりするんだよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ