Aldebaran
読み方:アルデバラン
意味:後に続く者
「3人共おはよう。朝から一緒にいるなんて、相当仲が良いんだね」
笑いかけながらミキトが言った。今4人がいるのは『クリスティ』から3部屋跨いだ所にある『チェスター』。机の上には湯気のたったココアが2つにコーヒーが1つ。それからホットミルクとサンドウィッチが置かれていた。アキラが「ココアみたいな子供っぽいもの、俺は飲まないね」の一言から一悶着あったが、それは今回は言及しないことにしよう。要するに、ココアは万国共通で美味しいのだ。コーヒーを一口飲み、アキラが苦さで顔をしかめたところで話し合いが始まった。
「今回のこの事件、過去のことと繋がりはあるのか?」
ヒカルの問いにミキトが答えた。
「僕が警察官だった時の記憶を遡って考えてみたんだけど……模倣犯の可能性が高いんじゃないかと思うんだ」
「模倣犯って何?」
チハルが興味深げに呟く。アキラが「要するに殺人鬼を真似する人だよ」と言った。
「そうだ。恐らく、2年前のチャールズの死を真似たものだね」
そこからミキトの推理解説が始まった。
「何故、模倣って限定するかって言うとね。
まず出血量が違うんだ。前回は干からびたみたいになってただろ?だけど今回は、キャシーの手は美しいままだった。……あまり近くで見られなかったから断定はできないけどね。
次に連続殺人犯っていうのは、1度の欲求じゃ満たされないから結構短い頻度で犯行を犯すんだ。まあ、例外もいるけど。2年も経ってからの犯行は少し間が空きすぎてると思う。
それから最期に。殺し方が違うんだよ。チャールズは頸動脈をスパッとやられてただろう?だから血の海ができていたし、血飛沫も酷いものだった。何度も殺人事件の現場を見た僕ですら吐きそうになったくらいだ。だけどキャシーの場合、刃物は胸に刺さっていたんだ」
つらつらと解説していく彼の姿は3人にとって頼りになり、同じくらい恐ろしい姿に見えた。警察官になれば1人の人間の死をここまで正確に分析できるのか、と感嘆の溜め息すら漏れてしまう。
「ここで1つ問題なのが、だ」
そう言ってミキトは親指をたてた。彼が「1」を表すときの癖だった。
「君は胸に刃物が刺さった大事な人を見て感傷に浸れるかい?」