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遥か先に視る想い  作者: 埋木花咲
第2章 後に続く者
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Aldebaran

読み方:アルデバラン

意味:後に続く者

「今日はひとまず解散しよう」

 ミキトの言葉に全員一致で頷く。わらわらと人の波が部屋を出ていき、残されたのはヒカル達4人だけだった。

「……実際さ」

 アキラが言う。

「実際、ヒカルやミキトは誰かがやってることだと思う?」

 その瞳は不安に揺らめいていた。

「……ここだけの話をしても良いかな」

 ミキトが椅子に腰掛けながら囁いた。3人も各々椅子を運び、円になるようにして座った。

「ここ何日か、監視カメラが起動してないんだ」

 その一言にまず驚いたのはアキラだった。彼がこの船のプログラムを手中に握っているのは皆が知っていることだった。

「僕は決して、アキラを疑ったりはしてないよ」

 微笑みながらミキトが言う。その一言でアキラの固くなった身体が解れた。「私もだ」とヒカルが言うと「そりゃそうだ」とアキラが返した。

「……そこでだ。この船に詳しい誰かが、船の内部にある監視カメラのコードを切ったとしか思えないんだ」

 それは難しいよ、とアキラが言う。

「だってこの船の中の図面は、プログラマーの僕にも渡されてないんだ」

「そう。君には渡されてないかもしれない」

 ミキトが断言する。そして声を低めて呟いた。

「でも、このプロジェクトのリーダーだったら?」

 その言葉でそこにいた全員がすべてを察した。

「……パトリック」

「そう。彼ならできるんだよ、それが」

 なんのためにかは判らないけどね、と彼は言う。その顔には笑顔さえ浮かんでいた。ヒカルは一抹の気味の悪さを抱く。

「……まあ、ここに長くいても他の皆に怪しまれる。とりあえずは自分の部屋に戻ろう」

 そう言って立ち上がるミキト。チハルが帰ろうと、ヒカルの手を握った。

「あ。ヒカルはちょっと残って。話すことがあるんだ」

 その瞳は真っ直ぐに彼女を見ていて。黒く透き通った眼孔に彼女は吸い込まれそうになる。

「……すまないな、チハル。先にアキラと戻っていてくれ」

 握られた手を優しく包み、ヒカルは言った。早く戻ってきてね、とチハルは言う。アキラに「行くぞ」と追いたてられ、2人は部屋を後にした。

 残されたヒカルにミキトは告げる。

「次に狙われるのは、アキラかもしれない」

 彼はこの船のプログラムを全て牛耳っている。だから、危ないんだ、と。

「僕はこれからアキラを重点的に警護する。だから、チハルは君に任せて良いかな」

 ミキトは立ち上がる。その瞳には決意が揺らめいていた。

「そして、君は僕が守る。……これから先もね」

 そう言って立ち上がりかけたヒカルの額に軽く唇をあて「おやすみ」と呟いた。そのまま部屋を出ていく。

 ヒカルの脳裏に船尾室で眠りについている男のことが甦った。それを振り払い、額を袖口で拭き「おやすみ」と返した。

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