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遥か先に視る想い  作者: 埋木花咲
第2章 後に続く者
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Aldebaran

読み方:アルデバラン

意味:後に続く者

 『セントリーズ』は異様な静けさに包まれていた。

 あのお喋り者のロイでさえも沈黙を貫いている。部屋にはハルとミヤビの啜り泣く声だけが聞こえていた。アイリーンとレオは『クリスティ』で寝ている。その部屋はパトリックの部屋からは遠い。異臭も不安も無いから安心しなさい、とパトリックは言っていたけれど。2人だけで残してきて大丈夫だったのだろうか、とヒカルは思った。

「アンリ……君なのか?」

 パトリックが唐突に言う。

「私がリンの事を忘れようなんて言ったからなのか?」

「……何を言ってるのかわからないわ、パトリック」

「君なんだろう?妻を殺すことで私の中に傷を残したかったんだろう?」

「違うよ、パトリック」

 ヒカルが口を挟んだ。

「昨日、私は彼女と一緒に部屋を出た。そしてそのまま船尾室の方まで行き、話をしていたんだ」

「……殺人者を庇うのか」

「パト、そんな言いがかりはよせよ」

 ミキトが間に入った。パトリックが黙る。チャールズが消えてから彼にとってミキトが一番の理解者だったからだ。警察官だったミキトとは幅広い知識を持っていて、傷心していたパトリックの心を和ませたのも彼だった。

「すまない……私は、もう、皆の事が信じられない」

 しばらく『クリスティ』で家族3人穏やかな休暇を取らせてくれ、と言って部屋を出ようとする。しかし不意に立ち止まり、全員の顔を見渡した。そしてアンリを凝視して言う。

「忘れようなんて言った私が馬鹿だった。この事は忘れるものか」

 扉が閉まる。部屋をまた静寂が包んだ。

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