第三話 ボンビー打開策は?(1)
このままガールズトークを続けていても、実りある青春時代の汚点になると、夏美は会話の路線変更を試みた。
「ねぇ、このままでいいのかなぁ?」
あまりにも漠然とした一言だったらしい。
「そりゃ、もうやるっきゃないって!」
瑛子のお目目がキラキラと輝いている。
そのキラキラの原因が『やる』ことにあるのは、夏美でなくても分かるだろう。
(しまった! 言い方が悪かった!)
と後悔していると、京香が助け舟を出してきた。
「何が? このままでいいのかなって」
京香の助け舟にホッとしながら、言葉をつなげた。
「せっかくの夏休みをダラダラ過ごして、ボンビーで終わるのもったいないなって」
「それ、私も思ってた」
「え? だって、京香は秋からバイトするかなって、さっき言ってたじゃない」
瑛子が目をクルクルさせながら、京香に聞いてきた。
「秋からって思うけど、夏からでもいいかぁって。貧乏な夏休みじゃ、どこへもいけないじゃない」
「どこかに行きたかったら、彼氏に出してもらえばいいんだよ」
瑛子の発言に思わず夏美が突っ込んだ。
「彼氏は財布か!!」
この突っ込みに、瑛子のみならず京香も頷くのだった。
(変な奴らと友達になったもんだなぁ)
いくら夏美がおかしいと思っても、二人とは考えがかみ合わないらしい。
「高校二年だもんね。自立という点でも、バイトは必要かと思うよね」
さすが京香だ。無駄に学年トップの座に君臨しているわけではない。
「高校生のうちは、親に甘えていいんじゃないの?」
さすが瑛子。どこまでも考えが甘い。
そんな瑛子がバイトしたのには理由があった。ここまで読み進めた懸命な読者諸君にはお分かりいただけるだろう。瑛子のバイト先には超イケメン君がいたのだ。そのイケメン君と絡みたくてバイトしたということだ。
だがしかし!
そんな気持ちで働き出した瑛子だから、結果は想像するに難くなかった。
京香も夏美も同じ様に想像していただけに、本当は驚くというよりは『やっぱりね』という感じだったのだ。
しかし、可哀想だから驚いて見せたという、なんとも優しい友達関係だ。
「みんなでバイトしてみない?」
京香が机の上に置かれていたアルバイト情報誌を手にした。
どうやら、秋からと言っていたのは冗談だったらしく、本気で探していたのだろう。
「三人で働けるところって言うと……」
京香がページをめくりだす。