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第八話 陰謀

 夏美が帰宅するとすぐにケイタイが鳴った。


 着信メロディーで誰からのメールなのかは分かる。それもそのはずで、朝から夜中までケイタイとは恋人のように寄り添っているのだから。このような状態を携帯依存症と呼ぶらしいが、夏美を筆頭にJKにとっては当たり前のことだけに、なんと言われようと恐れるに足りない。


 夏美はディスプレーも見ずに、メールを開く。




『着いた?』




 つい、顔がほころぶ。




『今着いたよ』




 直ぐに返信する。さっき別れたばかりなのに、直ぐにメールが始まる。しかし、決してお互いの邪魔になるほどではない適度なやり取りだ。一馬とのメールだけは、付き合い始めた頃から変わらず、今のスタイルを維持している。


 瑛子も京香も、夏美のメールのやり取りに付いて、あれこれと助言をした事があった。それは、


“もっと甘えたメールをするべきよ”


“何でハートマークをつけないのよ! 女の子でしょ!”


“愛してるとか、好きだとかって書いたら、もっと進展するのに!”


などなど……。


 夏美は、そういったやり取りが苦手だ。好きだから付き合っているのに、好きかと聞くのは、夏美にとっては最大の愚問なのだ。そして、そういうさっぱりと男っぽい夏美が一馬の好みなのだ。




『今夜はカレーみたいだよ』


『俺んちラーメンみたいだ』




 何の進展も無い、穏やかなメールのキャッチボールが続いている頃、京香と瑛子もメール中だった。





『あの副店長、マジイケメンなんだけど。マジ好み!』


『そりゃ、よかったね』




 瑛子は恋多き女だ。瑛子の恋話(こいばな)に、真面目に付き合っていたら、耳がもたない。いや、目が持たないのだ。




『ところでさ、藤田と夏美って本当に付き合ってる系?』


『でしょ』


『相変わらず進展なしって感じ?』


『そうなんじゃないの』


『十七歳だよ!』


『そうだね。七一歳じゃないよね』


『人生で一番輝いている十七歳だよ!』


『輝いてるかどうかは知らないけど、十七歳だよ。それがどうした?』


『京香って経験者でしょ?』


『唐突に何よ!』



 毎度の事ながら瑛子の言動には驚かされる。今回はメールだし、二人きりなので良しとするけど。




『夏美って藤田とどうなのかなって思ってさぁ』


『そりゃ、全くもってわっはっはでしょ』


『わっはっはって……凄い表現だね』


『そう?』


『いい加減くっついちゃえばいいんだよね』


『別にいいんじゃない。本人同士の問題だよ』


『えー! 面白く無いじゃん!』




 という会話が続き、結局京香と瑛子の作戦が決まったのだった。


 その名も『夏休みロストバージン大作戦!』。


 一体何を考えているのやらと思うが、彼女たちはいたって真面目だ。


『じゃぁ、どうすればいいと思う?』


『そうだねぇ……』




 しばし、メールが途絶えると瑛子から提案メールが入ってきた。




『やっぱり二人きりになるのが一番だよね』


『そりゃそうだよね』


『こんなのはどうかな』




 ということで、メールのやり取りは食事で中断し、入浴で中断しながら深夜にまで及んだのだった。



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