第7話 笑い声
「………痛い。」
僕は朝に竹刀で殴られた後、まるで何もなかったように自分の席に戻り、そのまま気を失って4時間目が終わるまで寝ていたらしい。
まったく記憶にないんだけどね。
「まぁ、どんまい。」
「あれは自業自得やろ。」
君達、僕を見捨てて何を言うか。
「あっ頭痛かったら、弁当食べれないよな。俺が食ってやろう。」
壮大よ。それは完璧に僕のことを心配してるんじゃなくて、僕の弁当が食べたいだけだよな。
「午後は体育あるし、食べとく。」
「うわぁああ、渾身のボケをスルーされた。」
「これもまた自業自得。言い換えて妙なり。」
「そいえば、お前伊藤さんからなんか貰ってなかった? なんやったん?」
「何で知ってるの? たしかお前掃除だよね。」
「俺は目がいいからな。」
……純希よ。ならお前の眼鏡は伊達眼鏡ということか?
「お土産でしょ。」
「壮大正解。南の島の白熊キーホルダーだった。」
「「それ、南の島じゃないから。」」
「「おぉ、ハモった。」」
………驚いた行動まで一緒だよ。
「完璧にハモるなよ。音楽会じゃないんだから。」
「ハモりたくてハモったんじゃないし。」
「お前と浩樹の漫才よりはマシだと思うぞ。」
なにっ……以後気をつけよう。
その時、廊下から独特の笑い声が聞こえてきた。しかも僕たちの教室に近付いてくる。あの疲れる奴か…… 僕たちの心はシンクロしていた。
「あはは、悠司、お、あはは、前竹刀あはは、で叩かれ、あはは、たんだって?」
「野口、笑いながらしゃべるな。」
野口 勇、いつも笑っている自他認める楽天家だ。顔はいいから、もう少し笑い声を小さくしたら女子にモテるんだけどな。とにかくうるさい。
「素敵な勘違い、人はそれを『恋』と呼ぶ。」
「……は?」
「バイバーイ。」
はぁ、まったく台風みたいな奴だ。
このあと、何故か純希も壮大も
「頑張れ。」
「ご武運を。」
と言って去っていった。
「ちょっ、食い終わるの待ってよ〜。頭まだ痛いんだって。」
僕は……伊藤さんが顔を赤くしていたのを、気付かなかった。