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元勇者様はメイド長  作者: 白波
一章 魔王城は人手不足でございます
8/10

城は空中浮遊を続けております

 朝。メイド長がふと窓の外に目をやると昨日の嵐がウソのように穏やかな雲海がひろがっていた。


「うーん……今日もいい朝ね……」


 手早く寝間着からメイド服に着替え、ゴムで長い髪を束ねて髪型を整える。

 しまいに頭にふりふりしてるやつをつければメイド長サーヤの出来上がりである。


「メイド長ー! 魔王様がいじめるー!」


 そして、この一方により一気にテンションが下がり、ため息をつくことになる。


「何を言われたの?」

「だってー! だってー!」


 つくづく思うが、アクアはあまりにも臆病すぎるところがある。

 少しずつでも治せていけたらなと思うのだが、今のところ全く方法が思いつかない。おそらく、日本にいるころに同じ状況にぶつかったら本屋に駆け込んで心理学の本を手に家路についているかもしれない。

 そう思わせるほどことは深刻だった。


「人財育成を真面目に考えないといけないかもね」


 魔王様をうまくおだてて魔王で頭痛薬か胃腸薬でも調合してもらおうか……

 そもそも、自分がメイド長に就任できたのは二人のメイドがあまりにも使えないからなのだから、ある意味では彼女たちのおかげで今の自分がある。

 だが、この現状はほおっておけない。なんだかんだ言って、ほぼすべての仕事をメイド長である自分がこなしている状況だ。


 実際問題、そのあたりは最初に異世界へ行く時にもらった勇者七つ道具(笑)のおかげで何とかなっているのだが、あれは勇者の力を持つ自分にしか使えないため、自分に何かあったらこの城は(生活水準的な意味で)一貫の終わりだろう。


 まずはこの流れに乗って人手を確保し、そこからの徹底した人材教育……うん。この流れでいだろう。


「アクア。とりあえず、庭の清掃をしていなさい。魔王様には私から話をします」

「はいーお願いじまずぅ!」


 ほっときすぎたせいか、アクアがすっかりと泣きじゃくっているがそれはいつものことだと割り切って魔王様の執務室に向かう。

 その手には、何かがあった時のためにと七つ道具の一つである笛が握られていた。




 *




「魔王様。失礼いたします」


 執務室に腰掛けていると予想通りメイド長が姿を現した。


「来たか」


 自分が思うカリスマオーラをまとってメイド長に相対する。

 彼女はため息をつくとこちらへと歩み寄ってきた。


「魔王様。仕事を頼むのはメイドに直接ではなく、私を一度通してくださいと申し上げているはずですが?」

「私は難しいことを頼んだ覚えはない。ただ、床にホコリが落ちていたから掃除はしっかりやるようにと言っただけだ」

「なるほど……確かにそれはメイドの失態でございますね。しかしながら魔王様。本当にそれだけでございますか?」

「それだけとはどれだけのことだ?」


 射るような目線で見つめられ思わずたじろいてしまう。

 今でこそひざ丈までの長さでふりふりみたいなのがついていて黒いスカートをはいて白いサロンエプロンを着けている彼女も中身は魔王を倒しに来た勇者なのだ。決して侮ってはならない。


「いえ……魔王様が“余計な”ことをおっしゃっていたのではないかと不安になっておりましたが、そのようなこともないようですね。後、この件につきましてはあとでアクアからもしっかりと聞かせていただきますのでご承知ください」


 メイド長が扉を閉めて立ち去っていく。

 すると、顔や背中からこれでもかというぐらいに汗が噴き出してきた。


 これは非常にまずいことになったと頭の中で警鐘がなる。


 軽い冗談のつもりだったのだが、メイドが思った以上の過剰反応を示してしまい対応を考えていたところでのメイド長の登場だ。

 アクアが落ち着いて一連の出来事を話してしまっては一巻の終わりだろう。場合によっては、夕食抜きぐらいじゃ済まない気がする。


 魔王は、部屋を飛び出して青い髪のメイドを探し始めるのだった。

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