第5話 改
渚「はーい、前回しゃべらせてもらえなかった渚でーす☆」
なんと、今回のあらすじだけ独占権をいただきました!」
蒼弥「…は?」
真夜「つまり、今回のあらすじは渚のさじ加減ですべて決まる、ってこと」
渚「てな訳で今回のあらすじでは水谷君だけ語尾に『にゃん』を
付けてもらいます!!」
蒼弥「おい!ふざけるにゃ!」
真夜「あら?かわいいじゃない」
蒼弥「いやだにゃあああああああ!!」
真夜&渚「wwwwww」
蒼弥「まじでいやだにゃ…」
渚「では前回のあらすじ!」
真夜「思いを蒼弥に告白した私…」
渚「そして、引っ越すことが分かった水谷君…」
蒼弥「…はたしてこの先どうにゃるのか……いい加減戻してくれにゃあああ!!」
真夜&渚「それではどうぞ!!」
昼間の暑さが弱まり、逆に身にまとわりつくような湿気が立ち込めている夕暮れ時
私は片手に買い物袋を提げて商店街を歩いていた
この町には大きいとも小さいとも言えない商店街がある
その商店街の始まりは、駅を出てすぐのところにあり、歩道を挟むようにして真っすぐお店が連なっている
商店街、と言っても並んだお店同士をつなぐように、雨よけの屋根が付いているだけの簡単なものだ
そして今は、明日に行われる予定の夏祭りに向けて、それぞれのお店が店先に、色とりどりのテントが並べていた
テントには、「焼きそば」や「射的」などのお祭りを連想させるような単語の書かれた看板が下げられている
私は買い物袋の中に視線を落とす
袋の中には美しい濃紺の浴衣が入っている
つい先ほど、商店街の着物専門店で買ったものだ
これまでの夏祭りには全くと言っていいほどに興味が無かったので、家に自分に合う浴衣が一着も無かった
そもそも私がなぜ急に夏祭りに参加しようと思い立ったのか、それは……
★☆★☆
「蒼弥が引っ越す…?」
私は携帯の小さな画面を凝視する
そこには無機質な字ではっきりと「引っ越し」という単語があった
「…」
その言葉の持つ意味が理解できていないのか不思議と私は冷静だった
私はメールには返信せずに、蒼弥に電話しようとした
いつものように慣れた手つきで番号を打ち込み、通話ボタンを押し、携帯を耳元へと持ってくる
Pruuu…Pruuu…Pruuu……
数回の呼び出し音が耳元で鳴り響く
重ねられていく呼び出し音と共に、私はだんだん不安に襲われていた
いきなり電話して大丈夫だろうか 何を話せばいいのだろうか
この夏休みに入る前なら気兼ねなくできたなのに…
『…夜?』
やっぱり、この前の告白が―
『もしもーし!!真夜ー?!』
「ひゃっ!?」
いきなり耳元で叫ばれ変な声が出てしまった
『まったく…。そっちから電話してきたのに、出てみたら無言ってどういうことだよ』
「ご、ごめんなさい」
私は思わず謝る
どうやら電話が繋がっていたのにも気付かないほど考え込んでいたらしい
『で、急に電話なんてどうしたの?』
電話の向こうでいつも通りの蒼弥の声が聞こえる
まるで何事もなかったかのように…
「…実は、渚から聞いたのだけど―引っ越すってどういうことよ?」
自分でも驚くほどの低く、冷たい声が出できた
『……そっか、雨宮さんが』
蒼弥の声もトーンが落ちるのが分かった
「…いつ頃なの?」
『……今週末』
「…へ?」
『だから、今週末』
私は私の中で何かがはじけ飛ぶのを感じた
「えっと…待ってよ。今まで全く、そんな話は無かったじゃない…」
『…今まで言えなくてゴメン』
「なんで黙ってたのよ!!」
ついに声を荒だて蒼弥を問い詰める
『…』
「渚も、さっきのメールから考えると、今さっき言われたようだけど?」
『…』
蒼弥は黙っているけど、息をのむ音は聞こえた
肯定と捉えてよいだろう
「どうしてよ…蒼弥…?!」
私の中に疑問と溢れてくる
蒼弥にとってこんなことしてもいいことは無いはずなのに…
『…ここに残れる最後の日』
『夏祭りがあるだろ』
いきなり夏祭りの話を切り出してくる蒼弥
「…ある、けど。それよりも―」
『夏祭りですべて話す』
「それって、どういう…?」
ブツッ…
そう言い残して私は一方的に電話を切られた
★☆★☆
それからは蒼弥とも渚とも連絡が付かなかった
でも二人の家を訪ねてまで会おうとは思わなかった
そして今に至る
明日になれば蒼弥が何を考えているかわかるんだ、と思えば思うほど胸が締め付けられる
私は蒼弥の何を知った気でいたんだろう
今まで私が見てきて、蒼弥と思っていたものは、実はほんの表面でアイツ自身のことは何にも知らないのでは…?
おおざっぱで元気の塊で頼りになる幼馴染
それこそが私が本気で好きになった水谷蒼弥
もし、それがほんとの蒼弥じゃないならば、私はもう一度アイツに告白できるのだろうか
買い物袋を引っ提げて歩く道は、茜に染め上げられ絶えず虫の鳴き声が聞こえる
やかましいアブラゼミの鳴き声よりもヒグラシの鳴き声が大きかった
連載が遅れて申し訳ありません
この話が第五話となります
次の話で終われればよいかな~と考えております
では!!