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4話:ティーブレイク

「え・・・ここが二宮さんの家?」


キラは目の前にそびえ立つ屋敷に圧倒された。

どう考えても門と屋敷が離れすぎているし、あちこちに噴水や花が設置され、美しい庭が広がっている。


こんな豪邸にテルが住んでいるとは思っていなかったため、キラはその場に立ち尽くす。


テルはそんなキラを無視して敷地に入っていく。

それに付いていこうと、キラも慌てて走り出す。



「・・・あれ?」


しかし、キラの目の前で門が閉まってしまい、キラは中に入れなかった。


キラは門を見つめ、そしてテルに視線を移す。


「・・・どうして、私が貴女を家に招かないといけないのかしら?」


テルはキラの視線をはねつけると、さっさと立ち去ってしまった。


置いていかれたキラは呆然としていたが、目の前の門が急に開いたので驚いて我にかえった。


振り返ると、キラの後ろにリモコンを持ったスーツ姿の老人がいた。

この人物が門を開けたのだろうか。


「・・・・・じいや」


テルは顔をしかめて老人を睨みつけた。どうやらここの執事らしい。



「ほっほっほっ、いいではないですかお嬢様。ここまで連れてこられたということは、ご友人なのでしょう?」


執事はテルに尋ねる。

テルは舌打ちして顔を背けた。







キラは落ち着かない様子でソワソワとしていた。


やがて執事が二人の前に紅茶を差し出す。

白いテーブルの上にアクセントとして加わる。


「ありがとうございます」


キラがお礼を言うと、執事は頭を下げてその場から立ち去った。



二人の間に気まずい沈黙が流れる。


キラは思い切ってテルに尋ねた。


「あ、あの、テルの願いって」


「教える気は無い」


テルに一刀両断され、言葉につまる。


キラは未練がましくテルを見つめながら、紅茶を飲む。


「・・・じ、じゃあ、何か手伝えることは」


「死んでくれる?」


テルにきっぱりと言われ、キラの目に涙が溜まる。

が、そこでキラは何かが引っ掛かった。


「・・・本当に、そう思ってる?」


「当たり前でしょう、だから私は昨日貴女を・・・」


「じゃあ、何で昨日私を一撃で殺さなかったの?」


キラにそう言われると、テルは言葉に詰まった。



昨日、キラはテルにやられたが、そもそもおかしいことがあった。


最初の一撃。

あれでキラの心臓を突き刺すなり、目を潰すなり出来たはずなのに、キラの体に攻撃するだけだった。


「どうしてとどめを刺さなかったの」


「・・・貴女には関係無い」


キラにはテルが人の命を奪うことを躊躇っているように思えた。



「お願いだから、人を殺すなんてやめよう?モンスターを倒すだけでいいじゃない。そのためだけに戦えば・・・・・」


「そんなことするの、貴女だけよ。自分の得にならないことなんて、誰もしない」


テルはキラの提案をはねのける。

キラは尚も食い下がる。


「損とか得じゃない。人の命が掛かってるんだよ!?」


「こっちも命が掛かってる」


キラが問い掛けるとテルは即座に言い返した。



それは、テルの命が掛かってるということだろうか。

それとも・・・・・


キラが考えていると、テルは立ち上がってキラに背を向けた。



「・・・・・今日は、帰りなさい」


「・・・うん」


キラは、力無く頷いた。






テルの家を出て、キラは一人家路についていた。


夕焼けの光が全てをオレンジに照らし、キラの影がコントラストで目立って見えた。


「どうして、殺し合いなんかしなきゃいけないんだろう」


「それぞれ譲れない事情があるんだろうね」


キラの独り言に誰かが答えた。

キラは宙に視線を向けた。


フワフワと浮かぶ白い球体が視界に入る。


キラの元に現れたのは、パサランだった。


「何か用?」


キラはパサラン相手に身構えた。

キラをこの事態に巻き込んだ張本人だ。油断は出来ない。



「・・・そんなに身構えないでくれ。大体、僕らの責任なのは事実だけど、最終的にジュエラーになることを決めたのは君だろう?」


「ちゃんと話をしてくれたら私だってもっと考えたよ」


「話を聞こうが聞かなくても、君はジュエラーになったと思うよ」


パサランの物言いは気に入らないが、突っぱねてばかりでは話が進まない。



「それで、話って?」


「・・・ああ、君の様子が気になってね」


キラは首を傾げた。

アキラから聞いた話では、ケセランとパサランは司会進行のような物で、肩入れはしないはずだ、と。


パサランはキラに背を向けてどこかへとフワフワ飛んでいく。

そして、キラに一言だけ話し掛けた。


「・・・・・覚えてた方がいい。どんな目的で動こうと、ジュエラーは戦う運命だと」


そして、パサランは遠くに去ってしまった。




その時、キラの頭に何かが響いた。

正しくは感じた、とでも言うべきか。


「モンスター・・・!?」


キラが感じたのはモンスターの気配だった。

ジュエラーになったことで、モンスターの気配に敏感になったようだ。


「とにかく、今すぐたたか・・・!?」


キラは強力な力と視線を感じ、バッと振り返った。



そこには、ゲート越しにこちらを睨むダイヤドラゴンがいた。

まるで戦え、と強要しているみたいだ。


耳をつんざくような咆哮が耳を通り抜ける。


「・・・もう、逃げられないんだね」


逃げたらダイヤドラゴンに殺される。そう直感した。


「私だって、やりたい事ぐらいある!」


キラはゲートに向けて右手にもったケースをかざした。


バックルがキラの腹部に現れる。そして、キラは左手を右側に突き上げた。



「変身!」


ケースをバックルに挿入し、キラの体に光が集まる。

やがて、キラの姿が変化した。



先日と同じ、ジュエラーとしてのキラの姿。

ダイヤモンドとなる。


キラは祈る様に両手を胸の前で重ね、ゆっくり目を開くと両腕を開いた。

腕の軌跡をなぞるようにキラキラと輝く粒子が宙を舞う。


キラはゲートの中に入り、別世界へ移動した。






シマウマの姿のモンスターがゆっくりと商店街に向かって歩んでいた。


二本の足でゆらゆらと進んでいく。



その前方に、キラがゲートを渡って現れた。

モンスターは戦闘に備えて構える。


キラはモンスターに接近して拳を振るった。



が、次の瞬間にはモンスターの体がバラバラに分裂してキラの拳が空を切る。


「え!?」


キラは慌てて振り返るが、モンスターの拳が顔面を捉え、キラの体は宙を舞う。


地面を転がりながらも、何とか立ち上がって体勢を整える。


バラバラになったモンスターのカケラが、キラの元へ飛んでいく。


キラの体に何回もぶつかり、キラは翻弄される。

足や頭のパーツが一斉に突撃し、キラの体は火花を散らしながら吹っ飛んだ。



キラはカードを引くと竜頭型のデバイスの口に装填する。


《バーストキラー》


キラの周囲に七つのダイヤが現れ、緑や紫など全部で虹色を描いていた。


キラが手をかざすとダイヤが飛んでゆき、モンスターに向かう。

モンスターのバラバラのカケラに何回もぶつかり、七つのダイヤはそれぞれダメージを与えていく。


七つのダイヤに囲い込まれ、バラバラになったモンスターはやがて一箇所に密集する。



《オフェンスキラー》


カードを読み込むと、キラの右手にダイヤドラゴンの頭が出現する。


「はああああああ・・・やぁっ!」


キラが右手を前に突き出すと、ドラゴンの頭から直径がキラの身長程の巨大なダイヤが発射された。



ダイヤは散らばって避けようとしたモンスターのカケラを全部巻き込み、爆発が起こる。


モンスターはその衝撃で元に戻ってしまった。


キラは続けてダイヤを操作し、七つのダイヤが同時にモンスターの胸へ襲い掛かる。


モンスターは避けれずに直撃し、大きく吹き飛んだ。


トドメのチャンスだと悟ったキラは、カードを引き抜いて装填する。


《ファイナルキラー》



キラが祈る様に両手を重ねると七色の幻影が現れ、キラの体が宙に浮き上がる。


ダイヤドラゴンが現れるとキラの背後に追従し、口から光り輝くエネルギーを発射する。

キラの幻影もキラに集まり、キラの足裏に巨大なダイヤが現れる。


キラはダイヤドラゴンの放ったエネルギーに包まれ、足にあるダイヤを輝かせながらモンスターに突っ込む。



「っダアアアアアアアアアアア!!」


モンスターに避ける暇は無く、キラのドラゴンダイヤキックが直撃し、モンスターは爆散した。


モンスターのいた所から光の球体が現れ、ダイヤドラゴンはそれを喰らうとどこかへ去って行った。


「あれは・・・?」


「モンスターの命だよ」


突然の声に驚き、キラは慌てて振り返る。

すると、そこにはアキラがいた。



「ああやってモンスターの命を自分の契約したモンスターに与える・・・・・それが、ジュエラーとモンスターの契約だ」


アキラはキラの前に立ち、尋ねた。


「もう決めたのか?自分がどうするのか」


「私は・・・」


キラは少し躊躇ったが、アキラの目を見て答えた。




「私は・・・ジュエラーを殺さない。モンスターを倒す為に戦います」


「・・・辛いぞ。その選択は」


「それでもです」



キラの真っ直ぐな眼差しを見て、アキラは思わず微笑んだ。


「頑張れよ」


「はい!」


キラは力強く頷き、答えた。

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