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36話:明けましておめでとうございます

ニューイヤーはラピスラズリフェニックスを触手で捕らえ、口をパックリあけるように開いた蕾の中へ放り込んだ。

その瞬間、ラピスラズリフェニックスの強力なエネルギーを取り込んだニューイヤーは一瞬で傷を癒した。


傷を癒したニューイヤーは、今まで以上の量の人魂を辺りにデタラメに発射した。




「っ、キラ!!」


テルはキラの腕を引き寄せて無理矢理移動させる。キラは抱きしめていたクランの頭を落としてしまい、クランは炎に飲み込まれる。


テルはキラに非情と思いながらも忠告する。


「今は自分が生きることに専念して。そうでないとニューイヤーは倒せない」


キラには気にしないことなど出来なかった。

クランの真意を知らないキラには、死ぬ時に自分を見ていたことしか分からない。

炎に飲み込まれる寸前のクランの様子が頭にこびりついて離れないのだ。


しかし、戦うしかない。

テルの言う通り今キラが死んだら本当にニューイヤーが世界を滅ぼしてしまうかもしれない。


キラは立ち上がると、ケースからカードを引き抜いた。


「行こう、テル」


テルは黙って頷き、カードを引き抜く。二人はオオヌサと剣にカードを差し込んだ。


<《エターライト》>


キラとテルはダイヤモンドエターライトとアメジストエターライトに進化し、迫り来る人魂を消し飛ばした。

そして、それぞれパワーアップした契約モンスターに乗って再び頂点へ向かって上昇する。




一方、フウヤとユカリは地上で応戦していた。

キラ達が頂点付近まで接近出来ているのも、二人が地上から生えている根を引き付けていることが大きかった。

ユカリの契約モンスター三体がどうにか根を引き付けていたが、それでも絶え間無く発射され続ける人魂には手を焼いていた。


それも、ラピスラズリフェニックスを吸収した時からますます勢いを増していた。

フウヤは何とかさばき続けてきたが、集中力も限界が近づく。


「くっ」


《ディフェンスキラー》


かわせないと判断し、自身の周囲に竜巻を張るがニューイヤーの人魂はいとも簡単に竜巻を食い破る。

フウヤは衝撃で吹き飛ばされ、地面をゴロゴロ転がる。


「フウヤくん!!」


ユカリはフウヤに駆け寄ろうとしたが、ニューイヤーの根が邪魔をして近寄れない。ユカリはカードを使って根を排除しようとする。


《スラッシュキラー》


斧で手当たり次第を切り裂いていくが、一向に数が減らない。まどろっこしくなったユカリは一気に根を消し去ることにした。


《ボンバーキラー》


ギリギリまで引き付けた根を爆風で全て消し去った。攻撃が途切れ、ニューイヤーの勢いが弱まったとユカリが安堵した瞬間、数発の人魂がユカリを襲った。


「っ!」


直撃してしまい、後方に生えていた宝石の固まりに激突してしまう。そして、ニューイヤーの中から突然二体のモンスターが現れた。

一体はバッタ型のモンスターで、もう一体はアルマジロ型のモンスターだった。


これらはヒーローとタツヤ達の契約モンスターだった。主を殺されたモンスターは、ニューイヤーの中で復讐の時をずっと待っていたのだ。

ユカリは咄嗟にカードを使う。


《フュージョンキラー》


離れた場所で根を引き付けていたモンスター達が、バラバラに砕けるとユカリの目の前で合体し、カラージョンになる。

カラージョンは二体のモンスターを軽々と殴り飛ばした。


《ファイナルキラー》


カラージョンが咆哮をあげると、腹に穴が開いてそこへ大量のエネルギーが収束する。収束したエネルギーを高密度に圧縮してから一気に放つ。それがこのファイナルキラーだ。

それを阻止しようと、ニューイヤーは数十本の根をカラージョンの腹に捩じ込んだ。


手足も捕捉され動けなくなるが、ビームを発射すれば全て消し飛ばすことが出来る。

そして、エネルギーの充填が完了し、全てを消し飛ばすために強烈な閃光と共にビームが発射された。



しかし、ビームが発射される寸前、ローケストアレキサンドライトとトパーズアルマジロがカラージョンを飛び越してユカリに襲い掛かった。


「……」


想定していない事態にユカリは動けず固まってしまった。

そして、カラージョンのビームがニューイヤーの全ての根と体の一部を消し去ると同時に、二体のモンスターがユカリにぶつかった。

ユカリのデッキケースが粉々に砕け散り、ユカリは地面に仰向けに倒れた。


サファイアの武装が一瞬にして消え去り、変身が解けてしまう。尚もモンスターはユカリに襲い掛かり、止めを指そうとする。

そこへ鞭が割って入り、ユカリを捕まえて引っ張っていった。


フウヤはユカリを抱き止めると、自分の後ろへユカリを隠した。



「フウヤくん……」


「隠れてろ」


そう言うとフウヤはモンスターに立ち向かって行った。どうして自分がユカリを守るような真似をしたのかは分からないが、そんなことはどうでも良かった。

ユカリと一緒に生き残る、それだけだ。


《ファイナルキラー》


緑色の風を纏い、ドリルのように回転しながら突き進み、二体のモンスターを爆破する。

残るはニューイヤーのみ。


その瞬間、フウヤは何者かに叩き潰された。そして、体を掴み上げられる。

契約が無くなり自由になったカラージョンが、フウヤに襲い掛かった。



「フウヤくん!!フウヤくん!!」


ユカリは必死にフウヤの名を呼ぶ。

フウヤは何かユカリに伝えたいことがあったはずだが、何か分からなかった。ただ、今のユカリの姿を見て、一つだけ分かったことがある。


結局、自分は目の前で大切な人が死ぬとしても救えずにいるままだったのだ。一度はユカリを救ったが、結果は変わらなかった。

そこまで考えた所で、フウヤは自分がユカリのことをたった一人の親友と比較できる程に思っていることに気がつき、思わず笑ってしまった。


そして、カラージョンはフウヤを握り潰した。そのあと足で捻り潰し、フウヤの面影は跡形も無くなった。



ユカリはこの様子を見て、動けずにいた。

今まで人が死ぬ姿など数えきれずに見てきたし、それら全てに快感を感じてきた。

しかし、今はそんなものはなく、途方もない虚無感がユカリを襲っていた。

そして、いま自分が怒りを感じていることに段々気がついて来た。

自分が誰かの恋人を殺した時にその連れが自分に殺意を向けることが多々あり、それを不思議に思っていたが、今漸くその気持ちが分かった。



「ああああああああああああアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」


ユカリは何も考えずただカラージョンに向かって行った。怒りにまかせ、フウヤを殺したモンスターに立ち向かった。


カラージョンは背中のミサイルや肩のバルカンを放ち、ユカリに攻撃を始めた。決着はあっさり着き、ユカリだったモノは消え去った。

結局、ユカリは最後に快楽を少しも得ることはなく、ただただ絶望と怒りに飲まれて死んでいった。


ニューイヤーはカラージョンを吸収し、また傷を癒して回復した。






「キラ!!」


テルはキラに迫る人魂をスラッシュキラーで強化した剣で切り裂いた。

キラはバーストキラーで空中を飛び交うダイヤモンドを操って、迫り来るハエ型の小さなモンスターを消し飛ばしながらテルに話し掛けた。


「やるしかないよ。クランさんがやったように、あの蕾を」


「あれが弱点だと信じるしかないわね」


今まで空中からあらゆる部位を攻撃してきたが、あまり効果はなかった。

もう頂点の蕾が弱点だと信じるしかない。


「決めるわよ」


「うん」


<《ファイナルキラー》>

<《ファイナルキラー》>


エターナルドラゴンとスカイアメジストはバイク形態に変形し、空中を突き進む。

ニューイヤーは体内からクランやマリス、ゴウカ達の契約モンスターを吐き出してキラ達の妨害をする。


しかし、ドラゴン達の勢いは止まらず、モンスター達を突き飛ばして直進を続ける。

突き飛ばされたモンスター達は、体勢を立て直してキラ達を追いかけようとする。


《ファイナルキラー》


そこへ、地上からアキラが炎を爆発させた勢いで、爆炎を纏いながら飛び上がって来た。アキラは炎の拳を振るい、モンスター達を粉々に砕いた。



キラ達はニューイヤーの頂点を追い越すと、エターナルドラゴン達を元の姿に戻し、光弾を発射させた。迫り来るハエ型のモンスター達を粉々に打ち砕き、ニューイヤーまでのルートががら空きになる。

キラとテルは無言で頷き合い、契約モンスターから飛び降りた。


エターナルドラゴンとスカイアメジストは主を飲み込んで特攻し、光になるとキラ達を包んで強化した。


「だああああああああああああああ!!!!」


強化したキックがニューイヤーの蕾に激突し、ニューイヤーは全身から耳が張り裂けんばかりの悲鳴をあげながら崩れ落ちた。

ニューイヤーの中から出てきた大量のモンスターの魂を、ダイヤドラゴンとバードアメジストが捕食していく。




エターライトが解けたキラとテルは、疲れで倒れそうになった。

何とか耐えると、二人で支え合いながらフラフラと歩き始めた。結界の外がどうなっているのか急いで確かめなければならない。


そこへ、同じく疲れきった顔のアキラがやって来た。

キラとテルはアキラが生きていたことに安堵した。


「アキラさーん」


「ああ、今行く!」


そうして歩き出したアキラの腹を、誰かの腕が突き破った。




「は……?」


アキラは何が起こったか分からなかったし、キラとテルも呆然とするしかなかった。

アキラの腹を突き破った腕はそのままアキラのデッキケースを握り潰し乱雑に腕を引き抜いた。


アキラはバタリと地面に倒れ、全身がガーネットになったかと思うとそのまま砕け散った。

キラとテルはアキラを殺した者の姿を見て、愕然とした。

それは、ジュエラーにしか見えなかった。しかもその子はまだ幼い少女だった。


白銀と桃色の宝石の武装を纏った少女の側へ、ケセランとパサランが現れた。



「はぁーい、お二人ともおめでとさぁぁぁぁぁぁんぅ!」


「生き残りおめでとう」


ケセランとパサランがキラとテルに祝辞を告げるが、そんなものは二人にはどうでもよかった。


《レインキラー》


アキラを殺した少女は、空から水晶の雨を降らせてガーネットカンガルーを一瞬で葬り去った。

そうして、ニコニコ笑いながらキラに話し掛けた。



「待ってるよ。いつもの、あの場所で」


その瞬間、地響きがしたかと思うと、先程までニューイヤーがいた場所に様々な宝石で出来た塔が地面から生えてきた。

少女は、白銀と桃色の宝石で出来た翼の生えたドラゴンに乗って、ケセランとパサランと一緒に塔の最上階へと飛んでいってしまった。



キラは膝をついた。

訳が分からなくなり、何も考えられなくなってしまった。ただ一つ分かることは、アキラが目の前で死んだことだけだ。


キラの目から涙がこぼれ落ちた。

いつもより早く訪れた初日の出は、キラの涙をキラキラと輝かせた。

アメジストエターライト

デッキ構成


エターライト×1

スラッシュキラー

ディフェンスキラー×2

サイクロンキラー×2

ミストキラー×1

マッハキラー×3

イリュージョンキラー×1

オフェンスキラー×1

サモンキラー×1

ファイナルキラー×1

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