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34話:お茶会

クリスマスから五日後、キラとテルは二人で街を歩いていた。

モンスターが出ないか見回りする必要もあるし、二人で行動しなければならない理由もある。


「……マリスさんを殺したの、誰だろうね」


「さぁ」


クリスマスの翌日、ケセランとパサランが残るジュエラーが六人になったことを伝えに来た。

余計なことを、と思ったがいずれ分かることだ。


「彼女も人を殺していたし、覚悟はあったでしょう」


無論、だからと言ってマリスが死んでいい訳ではない。

キラは浮かない表情でいた。


「……あれ?」


突然キラは立ち止まり、テルは何かあったのかと話し掛けた。


「どうしたの?」


「あの人……」


キラの視線の先にはリリーがいた。

二人ともリリーに会ったことは無かったが、マリスの話から姉がいることは聞いていたし、顔つきが少し似ていることからリリーがマリスの姉だと言うのは予想がついた。


すると、リリーもこちらに気付き首を傾けた。


「……何か、用ですか?」




二人は自分のことを軽く話し、マリスが死んだことをリリーに告げた。

ごまかせることでは無いし、リリーも薄々気付いていた。


「私が甘えていたんです……もしかしたら、マリスと一緒にいられるかもしれないって」


家ではいつもマリスが姉を縛っていた。

しかし、本当に依存していたのはリリーの方だった。


「私がマリスに依存していたんです。あの娘が勝てばずっと一緒にいられるって、口ではやめるよういっていても本当はマリスが勝ち残ることを期待していたんです」


リリーの目から涙がボロボロこぼれ落ちる。自分が心の奥底で考えていたことを自覚すると、心底自分が嫌いになった。


「あの娘を本気で止められなかった……私のせいで、あの娘は………」


泣き崩れるリリーに、キラ達は何も言えなかった。




リリーと分かれたあと、二人は公園のベンチに座って休憩していた。

会話は無く、無言で俯く。


「これから、どうなるんだろう」


「キラ……」


戦いがいつ終わるのかも分からなかった頃とは違い、今は終わりが近付いていると感じる。


その時、二人の前にパサランが現れた。


「ちょっといいかい? ついて来て欲しいんだ」






パサランに連れられ、二人がやって来たのは綺麗な家だった。

テル程の豪邸ではないが、それでも綺麗に整えられた中庭などから家主の上品さが伝わる。



「ようこそ、お二人共」


二人に何者かが声を掛けてきた。そこにはクランが紅茶をいれながら、微笑んで立っていた。既に席にはアキラやテル、ユカリなどが座っていた。



「ラピスラズリ……」


「さぁ座って、お茶が冷めてしまうわ」


二人はとりあえず指示に従い、席についた。

ユカリはキラにニッコリ笑いながら話し掛ける。


「ダイヤちゃん、久しぶり!」


「う、うん」


キラは困った様子で応えた。ユカリ相手だと何を話せばいいのか分からない。




「それじゃあ、皆揃ったわね。始めに自己紹介といきましょう。私は田目クラン、ラピスラズリよ」


「俺達はもう互いの名前知っているぞ」


フウヤがキラ達を顎でしゃくって答えた。

確かに、この五人は既に見知った顔だ。



「知っているわ。念のためよ……ダイヤモンド、アメジスト、ガーネット、エメラルド、サファイア、ラピスラズリ。生き残ったジュエラー六人が今ここに集まった」


「私達を集めた理由は何だ?」


アキラがクランに問い掛ける。クランは視線を逸らして答える。


「それは彼らに聞きましょう。私も彼らから聞いた話だもの」



クランの視線の先には、ケセランとパサランが浮いていた。

ケセランがニヤニヤ笑いながら話を始める。


「お前らに良いこと教えてやる。12月31日の午後11時30分……ニューイヤーが現れる」


「ニューイヤー……?」


テルが独りでに呟く。

ケセランはそんな様子は気にもとめず、話を続ける。


「最大級のモンスターだぁ。今まで倒されたモンスターの魂が結集して生まれる最強の植物型モンスター……こいつを倒せば、もれなくハッピーニューイヤーじゃねぇかぁ? ギャハハハハハ!」


ふざけて笑うケセランと対称的に、ジュエラー達六人は静まり返った。

沈黙の中、テルがケセランに問い掛けた。


「そんなこと知っているということは、通常のモンスターもあなたたちの差し金だったと考えていいのかしら」


「あぁ。こういうシステムにしないと途中でリタイアかます奴が出て来るからなぁ」


ケセランは悪びれもせずにげらげら笑う。

キラは思わず抗議した。


「どうして!? どうしてそんな関係ない人を巻き込むようなことするの!?」


「こわこわぁ。そんな怒るなよダイヤモンドちゃんよぉ」


キラはギュッと拳を握り絞める。こんなシステムを思い付き、実行する非道さに怒りが込み上げて来る。

話が進まなくなると察したパサランが、話を切り出した。


「とにかく、年末にはニューイヤーが現れる。僕達が言いたいのはこれだけだ」


「……で、何で俺達をわざわざ呼び出したんだ? 別にそれだけなら集まる必要はないだろ」


フウヤがパサランに質問した。確かにニューイヤーは脅威かもしれないが、わざわざ全員を一カ所に集めて話す必要はないはずだ。

そこへ、クランが割り込んだ。


「皆を集めるよう頼んだのは私。というのも、ちょっと提案したいことがあってね」



「提案?」


テルがどういう意味か聞き返す。

クランは紅茶を一口飲んでから話し始めた。


「今聞いた通り、ニューイヤーは強敵よ。恐らく一人で倒すのは無理でしょうね……だからここは協力しないかって」


「一戦限りの共闘ということ?」


テルが確認すると、クランは静かに頷いた。

アキラも話に加わる。


「確かに、下手に争うとニューイヤーに全滅させられるかもしれないな。ニューイヤーを無視すればいい話だが……」


「出来ませんよ、そんなこと! 何としてもニューイヤーを倒さないと」


キラが力強く言った。

今まで倒されたモンスターの魂が結集したとなると、どんな規模になるか分からない。そんな危険なモンスターを放置するわけにはいかない。


フウヤも頷き、ユカリもニコニコ笑いながら賛成する。


「ニューイヤーと戦っている間はジュエラー同士で戦うなってことだろう?」


「何か面白そうだね!」


ユカリのズレた発言にフウヤは呆れ、アキラは舌打ちする。

クランが立ち上がり、皆を見回した。


「じゃあ、同盟結成といことで宜しく」


クランの言葉に皆が頷き、あくまでニューイヤーを倒すまでの同盟が結成された。

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