ミラクル☆ダイヤモンド

3話：戦士の理由

「きゃっ！」

キラはテルの刃に切り付けられると、のけ反って後ろに吹き飛んだ。

地面を転がるキラに、テルは続けて切り掛かる。

「ま、待って！どういうこと！？」

キラは剣を足で弾くと、空中に蹴り上がってテルと距離を置いた。

そして、テルの真意を尋ねた。

どうしていきなり襲い掛かって来たのだろう。

テルはキラの発言に、怪訝な顔をした。

「・・・・・もしかして、何も知らないの？」

「え？」

キラはテルに聞き返した。

「・・・知らないなら、それでもいいわ」

《スラッシュキラー》

テルは自分の剣に紫のエネルギーを纏わせる。

「えっと・・・」

キラはカードを引き、左手の竜に差し込む。

《ディフェンスキラー》

キラの周囲を光の竜巻が囲い込み、テルの斬撃を防ぐ。

「・・・」

テルは無言で次のカードを使う。

《サモンキラー》

空間が裂けると、そこからバードアメジストが現れ、竜巻に突撃した。

「うわっ！」

キラは突然の衝撃に驚き、地面に倒れた。

すると、竜巻が消えてしまった。

テルは再びカードを使い剣を強化する。

《スラッシュキラー》

《アームキラー》

キラもカードを使い、ダイヤの武装を手に装着する。

襲い来る刃を受け止め、再度テルに問い詰める。

「教えて！どうしてこんなこと・・・」

「知らなくていい」

テルはキラを押し倒し、キラの上に乗る。

剣を逆手に持つと、頭上に振り上げた。

キラは迫り来る刃を眺めることしか出来なかった。

「そこまでだ」

テルの剣を、アキラが掴んで止める。

テルは舌打ちし、キラは安堵のため息を吐いた。

テルはキラの上から降り、アキラの手を振りほどいた。

「こんな何も知らない子を殺してどうする」

「ジュエラーは、そういう物よ」

テルは剣を鞘に納めると、そのままどこかへ立ち去ってしまった。

キラは、呆然と成り行きを眺めていた。

「悪かったな、助けるのが遅れてしまって」

アキラはキラに謝罪した。

テルが去ったあと、アキラはキラを家まで送り届け、その道中で事態の説明をしようとしていた。

「あの、二宮さんはどうして私を？」

キラが自分が襲われた理由を尋ねると、アキラは頷いて答えた。

「ケセランの奴は、願いを叶えてやると言っていただろう？その願いを叶える方法というのが・・・・・他の全てのジュエラーを殺して、勝ち残ることだ」

キラは何を言われたのか、すぐには理解出来なかった。

やがて少しずつ理解していき、アキラに尋ねた。

「じゃあ・・・私、は」

「殺し合いに巻き込まれたんだよ」

アキラは静かに告げた。

ごまかしても仕方ない。そう考えていた。

「そんなの、私、全然・・・！！」

キラは震えた声で喋る。

「ああ、君が迂闊だったのもあるが、それ以上に奴らの手口が悪質だったんだ・・・君は悪くないよ」

アキラはキラを慰めるが、キラは俯いたまま動かなかった。

アキラはどうしたらいいか分からず、キラの背中をポンポンと優しく叩くことしか出来なかった。

翌日、キラは学校を出るとトボトボと家路についた。

いつもなら暖かい温もりをくれる太陽が今はジリジリと自分を焼いている気がした。

(ただ守りたいってだけじゃ駄目なのかな？)

キラはずっとジュエラーの事を考えていた。

キラにとって自分の為に誰かを殺すことは考えられないことだった。

それよりも、モンスターから人を守ることの方が余程大事だった。

「・・・皆の、叶えたい願いって何だろう」

キラは物思いにふける。

アキラからもテルからも、一体何のためにジュエラーになったのか聞いていない。

「もっとアキラさんに話聞けば良かった・・・」

昨日の自分の態度を後悔する。

ショックのあまり頭が回っていなかったのが悔やまれた。

「・・・まぁ、悩んでても仕方ない！・・・よね？」

キラは考えるのを中断し、ひとまず家に帰ってしまおうとした。

そして、回り角を曲がろうとする。

その時、誰かとぶつかってカードケースを落としてしまった。

「あ、ごめんなさい」

キラは相手に頭を下げるとケースを拾い、相手も何かを拾っているのに気が付いた。

どうやらキーホルダーのようだ。紫色のキラキラとした宝石が付いている。

綺麗だなー、とキラが眺めていると相手がキラに話し掛けた。

「ケースはこうやって何かに擬装した方がいいわよ」

「へ？」

一体この人は何を言っているのだろう、とキラは相手の顔を見た。

その顔には見覚えがあった。

特徴的な長い藍色の髪に、同性であっても思わず見とれてしまう整った顔。

「に、二宮さん？」

相手は昨日、一昨日と出会った少女、二宮テルだった。

キラはテルの服を見る。

当然昨日の様な鎧ではなく、学校の制服を着ている。

キラの記憶では、テルの着ている制服は日本でも指折りの優秀な私立校の物だった。

そんな立派な学校が同じ県にあるんだ、とクラスの友達と話していたのを思い出す。

テルはキラの横を通り過ぎ、去って行こうとする。

キラは慌てて呼び止める。

「ま、待って。どこに行くの？」

「家よ。悪い？」

テルはキラの腕を振りほどく。

キラはそういえばそうだったと思った。

テルの異能な所しか見ていなかった為、そういった普通なことが頭に浮かばなかった。

「じゃあ、もう失礼するわ」

テルはキラに背を向けて去って行く。

キラはその後を付いていく。

「付いて来ないで」

テルはそう言うが、キラは言う通りにはしなかった。

テルに聞きたいことが山ほどあるのだ。

テルは諦めたのか、何も言わず足を進める。

キラはその後を付いていく。