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29話:思い、語り合い

「じゃあ、お休みー」


「お休み」


隣のベッドで寝始めたトモコを見守ると、キラはこっそりと携帯電話を取り出した。

寝ているトモコを起こさない様に、小声で通話を始める。


「テル、今大丈夫?」


「ええ、平気よ」




テルはベッドに腰掛けて電話に出ていた。


「同じ部屋の子が他の部屋にいっちゃってね……暇になったトコロ」


「そうなんだ」


テルとキラはとりとめのない話をした。

町を離れて戦いのない時間を過ごしたためか、二人はジュエラーと何の関係のないことばかり話し続けた。


「キラ、集合に遅れたりしんじゃない?」


「えぇ!? 何で分かったの……」


「だって貴女、ちょっと鈍臭いもの」


「ひどーい」


電話の向こうでプンプン怒るキラに声を大きくしないよう笑いながら注意する。


「嬉しいよ、私」


「何が?」


テルが尋ねると、キラは一息おいて語りだした。



「だって、テルとこんな話が笑いながら出来るんだもん。最初に会った時は、考えられなかった」


テルは始めてキラと会った時のことを思い出す。

モンスターに襲われたキラを助けたのが、二人の出会い。キラの戦いの始まりだった。


「あの日、貴女を助けることが出来て本当に良かった」


テルは心の底からそう思った。

キラと戦い、時には助け合ったあの日々は愚かしくもあったが、同時に輝かしくも思えた。


「貴女は私と、お母さんを救ってくれた。それは間違いないわ」


「そんな…」


きっと、キラが自分以外を救うことは出来ないだろう。

そう思っても、テルは黙った。

例え届かなくても、ジュエラー同士の戦いを止めるために戦うとキラは決めたのだ。それを見守る自分に、キラを止める権利はない。ただ、キラを支え、その行く先を見守るだけ。


「アキラさん、大丈夫かな……誰も、死んでないよね」


キラが不安そうに呟く。

町にいる皆が殺し合いをしていないか心配なのだろう。

いっそのこと一人二人減ってくれた方がキラが安全になるのだが、それは言えなかった。キラがそれを望んでいないのだから。



「皆、どうしてジュエラーになったんだろう」


「……叶えたい願いがあったのよ。奇跡に頼らなければ叶わない、それぞれの願いが」


ジュエラーになるのは、人の弱さなのだろうか。

それとも、戦ってでも己の願いを掴もうとする強さなのか。


「キラ、生き残りましょう。最後まで」


「最後なんて嫌だよ……私が最後の一人になるなんて。そうなる前に後一人が死なないようにする」


キラらしい答えだ。

だからこそ、やはりテルも死ぬわけにはいかない。


(最悪の場合、キラと私の二人だけになって……キラを、最後の一人にする。私が自害してでも)


キラが聞いたら怒るだろう。

それでも、キラには死んでほしくないのだ。


(私の願いがあるとすれば、キラが死なないことぐらいだもの)


「キラ……お休み」


「うん、お休み」


キラとテルは通話を切った。

お互いを仲間と信頼し、協力していても二人は心の奥底で考えていることは伝わっていない。

それでも二人が互いを支え合えるのは、もしかしたら仲間と言うものがそういうものなのだからかもしれない。





ケセランとパサランは夜空の月を見上げていた。

ジュエルワールドの空は、宝石が漂っている綺麗な景色が広がっていた。


「パサラン……そろそろ、あいつが目覚めるなぁ」


「ニューイヤーかい?まぁ、そうだね」


「この世の年末みたいなもんなのに、ニューイヤーなんて笑えるぜぇ……くっくっくっ」


ケセランはニヤニヤ笑いながら空中を浮遊する。

そして、クッションの上にぽふんと音を立ててくつろぐ。




「………誰が、生き残るかなぁ」


一際澄んだ少女の声だった。まるで幼稚園児のような小さな女の子が、クッションにもたれている。

ケセランは少女に話し掛ける。


「誰が生き残ろうが、関係ない気もするがなぁ」


「強い人だと、いいなぁ」


パサランは夜空を見上げ、この戦いの行く末を夢想した。

例え未来が決まっているとしても、何かを空想することは出来るのだから。


そして、それは稀に、奇跡を起こすのだ。

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