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27話:理想と真実

「ラピスラズリ?」


キラは少女から聞いた名を呟いた。

その姿と名でジュエラーだということは容易に想像出来る。


「今日は確かめに来たの」


「……何を」


「エターライト…いえ、貴女の力を」


殺気を感じた瞬間、キラは反射的に変身する。


「変身!」




テルは目の前のジュエラーと睨み合っていた。

友好的でないのは当たり前として、とにかく探りを入れたかった。


「あなたの願いは何?」


「お前に言う必要があるとでも?」


まぁ確かにわざわざ自分の願いを明かす奴もいないかと考え、テルもそれ以上の追求はやめた。


「俺の願いの為だ……悪いが、死んで貰うぜ」


トパーズはテルに向かって殴り掛かる。

テルは素早くカードを使って応戦した。


《イリュージョンキラー》


テルは分身してトパーズの拳をかわし、四方から襲い掛かる。


「舐めるな!」


トパーズは右手の装甲にカードを差し込む。


《アームキラー》


トパーズの両腕の装甲が変化し、まるで角の様な形状になる。

次々とテルの分身を殴り、消滅させる。


全ての分身を倒した時に、テルがいないことにトパーズは気付いた。


「タツヤ君」


そこへ、アキラと対峙していたトパーズが話し掛けて来た。


「すまない。ガーネットは時間切れだったようだ」


「そうですか」


タツヤはもう一人のトパーズに頭を下げた。



「すいませんカツヤさん……こんなことに巻き込んでしまって」


カツヤはタツヤに頭を上げるよう促した。


「謝らなくていいよ。君の願いは僕の願いだ」






キラは迫り来る拳を受け流し、反撃に殴り掛かる。

しかし、ラピスラズリは軽く弾くとキラの腹を殴り付けた。


キラはお腹を抱えてうずくまり、膝をつく。

すかさず蹴り飛ばすとカードを胸のブローチに差し込み、ブローチがカードを吸収した。


《バーストキラー》


ラピスラズリの背中から大量の羽が勢いよく拡散し、無数の羽がキラに襲い掛かった。

キラの体に羽が当たる度に火花が散り、キラは吹っ飛ばされる。


キラは何とか起き上がると左手の装置をオオヌサに変えてカードを差し込んだ。


<《エターライト》>


キラがエターライトになるやいなや、ラピスラズリはカードを使ってキラに襲い掛かった。


《スラッシュキラー》


ラピスラズリの手に白色の羽や透明な宝石が散りばめられた白い剣が現れる。

キラは対抗してカードを使う。



<《スラッシュキラー》>


オオヌサの先から桃色のビームが伸び、キラはオオヌサを振るった。

しかし、ラピスラズリはオオヌサを何度も剣を弾いてゆく。


キラの剣の方が巨大だが、ラピスラズリの剣も全く引けを取らない。

見た目以上に力が凝縮されているらしく、次第にラピスラズリが押していく。


「貴女は、何が望みなの!?」


<《タイフーンキラー》>


キラの周囲に白い風が集まり、ラピスラズリを圧倒する。

ラピスラズリは一歩引くとカードを使う。


《オーラキラー》


ラピスラズリの体を白いオーラのようなモヤモヤが包む。

オーラに守られ、風を防ぎながら再び剣をぶつけ合う。


「世界の平和よ。ある意味貴女と同じかもね」


「なら、どうして!?」


どうして自分達が戦わなければならないのか。そう聞こうとした所でラピスラズリは話を続けた。


「決まってるじゃない。貴女のやり方が非現実的だからよ」


ラピスラズリの剣がキラの剣を打ち砕き、続けてキラに襲い掛かる。

キラは寸前で回避すると足払いでラピスラズリの体勢を崩そうとする。


ラピスラズリは後方へ跳んで回避して、持っていた剣を放り捨てた。


「ジュエラーが最後の一人になるまでこの戦いは終わらない。本当に人々を救いたいのなら他のジュエラーを殺さないといけない」


「でも…だからって、人を殺していいはずがない! 私達がモンスターを倒す為に戦えばそれで…」


《オフェンスキラー》


ラピスラズリの腕から巨大な一本の羽が伸びた。危険を感じたキラはすかさず防御のカードを使う。


<《ディフェンスキラー》>


キラの両腕に装着された装甲が何度も振るわれる羽の斬撃を防ぐ。



「そんな都合よく皆は動かないわ。それぞれの願いの為にしか誰も動かない……私もね!」


ラピスラズリの羽が限界を迎えて砕け散る。すかさずさっき捨てた剣を拾うと切り掛かって来た。

盾に剣が叩き付けられ、鈍い音が響く。


「私は決して犯罪が起こらず、人々が幸せに生きていける世界を願う。世界中の誰もが幸せになる素晴らしい世界よ」


「それを作りたいなら……人を殺したら駄目だよ」


「理想の為になら少数の犠牲は付き物よ。そのあとは決して犠牲なんてないのだから」


<《アームキラー》>


キラの両手に厚い装甲が装着され、ラピスラズリの剣を叩き壊した。

追撃を避けるためラピスラズリは距離を取る。


「本当は貴女に協力して欲しいんだけど……今日はお開きね」


キラがどういうことか聞こうとした瞬間、テルがスカイアメジストに乗って二人の間に割って入って来た。


「テル!」


キラはテルの側に駆け寄る。

その様子を見てラピスラズリは溜息を吐いた。


(アメジストがいるとダイヤモンドと話し辛い……アメジストとはどうやっても協力は無理でしょうね)


キラを仲間にしたいが、アメジストとは協力出来そうにない。ラピスラズリは勘でそう察していた。

契約したモンスター、ラピスフェニックスに乗って別れを告げる。



「私はラピスラズリ、田目クランよ。また会いましょう……倉四季キラ」


田目(たもく)クランはそのまま去って行き、キラとテルはその後ろ姿を黙って見るしかなかった。





「えっ……テルの方にもジュエラーが?」


テルは頷いた。

二人はひとまず落ち着けるようキラの家まで帰って、そこで今日の出来事を報告しあうことになった。


「トパーズと名乗っていたわ……アキラの側にもそっくりなのがいたけど、そっちの名前は分からない」


「一気に三人も新しいジュエラーが現れるなんて……」


「どう考えてもおかしいわね」


テルは目の前の紙に何か書き始めた。

キラは隣に移動して覗き込む。



「ジュエラーは全部で12人……私達が確認しているのは?」


「何人だっけ…」


「1はガーネット、2にアメジスト、3のアクアマリン…そのあと、ダイヤモンド、エメラルド、アレキサンドライト、ルビー、サードニクス、サファイア、トルマリン、トパーズ、トパーズのそっくり、そしてラピスラズリ」


「えっと、13人……あれ?」


テルはキラが自分の言いたいことを理解したので静かに頷いた。


「そう、何故か12人以上いるのよ……多分、トパーズがからくりでしょうね」


トパーズに何か秘密があるのは間違いないだろう。

いずれにせよ、恐らく全てのジュエラーが出揃い、この戦いも佳境を迎えたのは確実だ。


「テル、その……やっぱり、どうする?」


一体何の事かと思ったが、すぐに修学旅行のことだと思い至った。

テルは暫く考え込んだが、やがて顔を上げてキラに話し掛けた。


「状況を整理するためにも、戦いのことは忘れて息抜きしてもいいんじゃないかしら。疲れを癒すいい機会になるわよ、きっと」


「……旅行って、疲れたまりそうだけどね」


「何ですって?」


テルはキラの後ろに回り込むと両手で肩をぐりぐり押した。キラは逃げようと必死にもがく。


「痛い痛い!テル、マッサージ下手だよぉ!!」


涙目で抵抗するキラを見て、テルは思わず笑ってしまった。



キラの笑った表情を見たのは随分久しぶりかもしれない。こんな顔を奪ってしまい、キラの優しさを受け入れることは許されないジュエラー。

テルは、そんなジュエラーが酷く可愛そうに思えた。

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