表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/40

22話:折れる心

トルマリンは沈黙を保ったまま皆を見下ろしていた。

その装甲は、手足は赤く輝いているものの、胸だけは紫、青、緑、黄色、褐色、ピンク、黒など、多彩な色で彩られていた。


「お前、何者だ?」


アキラはトルマリンに正体を明かすよう要求した。

しかし、トルマリンはそれを無視しし、ドラゴンヘッドを外してアキラに投げ付けた。

アキラは炎を纏った拳でドラゴンヘッドを焼き消す。


その瞬間、トルマリンは肩の差し込み口にカードを差し込んだ。


《スクリーンキラー》


トルマリンの胸の装甲に埋め込まれたレンズが輝き、カメラのフラッシュの様に辺りを眩しい光に包む。


すると、トルマリンの両手にアキラと同じ、赤い炎が纏われた。


「な!?」


アキラが驚くのも構わず、トルマリンはアキラに襲い掛かった。




「ま、また」


キラは新しいジュエラーの出現に動揺して気後れする。

すると、生き残っていたモンスターが現れた。

キラはモンスターを倒すためカードを使った。


《バーストキラー》


七色のダイヤが現れ、キラが手を向けるとダイヤがモンスター目掛けて一斉に向かった。



その時、アキラと交戦していたトルマリンが不意に下がって、ダイヤの射線上に入って来た。


「あ!?」


キラはダイヤの軌道を逸らそうとしたが間に合わず、ダイヤの一つがトルマリンの肩を掠めた。

そして、軌道を逸らしたせいでダイヤはモンスターを通り過ぎてゴウカの足元に着弾した。



「貴様、卑怯な!!」


ゴウカはキラに怒った。

戦いたくないだの言っておいて、騙し討ちをしたことが許せなかったのだ。


当然誤解のため、キラは否定する。


「ち、違う」


しかし、言葉が出ない。

否定したいはずが、何を言えばいいか分からない。


アキラは取り合えずモンスターを倒し、これ以上場が混乱しないようにした。



ゴウカはトルマリンに近付き、声を掛けた。


「大丈夫か?」


「ええ……」


トルマリンは肩を痛そうにしながら立ち上がる。

ゴウカはキラを睨みつけた。



「あいつ、あんな巧妙な騙し討ちをするとは……許せん」


「私も……正々堂々と戦いたいだけなのに」


トルマリンの言葉に、ゴウカは驚愕した。



「お前も、正々堂々とした世の中を望んでいるのか?」


「ええ」


「ならば、共に戦おうぞ!」


ゴウカはトルマリンと共同戦線を張り、共に戦おうと誘う。

トルマリンは頷き、二人でキラを見る。




《フュージョンキラー》


その瞬間、廃工場の壁が崩れ、外からカラージョンが乱入してきた。

そして、その背中からユカリが降りてきた。


「フウヤ君が遊んでくれなくて退屈なので、来ちゃいました♪」


ユカリは工場の中を指差した。


「やっちゃえ」


カラージョンは咆哮をあげ、強力なビームを乱射した。

工場のあちこちが爆破し、皆は命からがら逃げ出した。






「はぁ……はぁ……はぁ……」


キラはジュエルワールドを脱出して電信柱にもたれ掛かった。

疲れがドッと押し寄せて来る。

もう帰ろう……と思った所で隣にゲートが発生して誰かが出て来た。


「ったく何よあの女……頭おかしいわねやっぱり」


隣の少女はぐちぐちと文句を呟く。

その時、少女はキラの視線に気付いたのか、ジッと睨む。


「何?」


「いや、その……」


キラはどうしたらいいか分からず、呆然としていた。

恐らく、この少女が新しいジュエラーなのだろう。そう予測した時、ある疑問が浮かんだ。


「あの……」


「何?」



「肩、怪我してたんじゃ……」


この少女がトルマリンなら、キラのバーストキラーで肩を怪我したはずだが、少女はグルグルと肩を回している。

少女は深い溜息をついた。


「あのね、あんなの大した怪我じゃないでしょ。やっぱルビーって馬鹿だったわ。あんなに簡単に騙されちゃってさー」


キラは唖然とした。

どうしてこの少女は自分を嵌めるようなことをしたのだろう。


「どうして、あんなことを」


「いや、あんたの考えに他の誰かが賛同したりすると厄介だからね」


「そ、そんな理由で貴女……」


「私は十和(とおわ)マリス。騙したお詫びに教えてあげる」


マリスはキラに自分の企みを打ち明けた。



「私、どうしても叶えたい願いがあってね。取り合えず、今は騙し易そうなルビーと同盟組んで、裏切るつもり」


「そんな……」


キラは信じられなかった。

どうして彼女はそんな事を平気で言えるのだろうか。


「どうして、人の命をそんな簡単に扱おうとするんですか!?」


「叶えたい願いがあるの。私と、お姉ちゃんのために」


キラはマリスの言葉を聞いて、押し黙った。

もしかしたら、テルのように命に関わることかもしれない。



「大体おかしいよね。好きな人と結ばれないとか」


「……?」


「私、お姉ちゃんと結婚したいの。大好きだから」


キラはマリスが何を言っているのか分からなかった。

呆然とするキラを余所にマリスはその場を立ち去った。



「じゃ、ごめんねー。いつか殺すことになっても許して」


「何なの、え……?」


もうキラは何が何だか分からなくなっていた。

マリスの目的も、ゴウカとの誤解も、テルとのすれ違いも。

もう何もかもが嫌になってきた。


全てに疲れてしまった。

何も考えたくない。

キラは地面に膝を付き、倒れ込んだ。




アキラはキラの額に濡れタオルを乗せ、一息ついた。

あのあと、倒れたキラを家に連れていってベッドに寝かせたところだ。


「しかし、お前が助けを呼ぶとは随分と珍しいな」


そう言ってアキラは窓にもたれたパサランに目を向けた。

パサランは興味なさげに答える。


「キラにはまだ死んでもらっては困るからね」


「困る?」


アキラはパサランの意図の分からない発言をいぶかしげに疑う。


「キラの結末が気になるんだ。どんな終わりを迎えるのか、ね」


パサランはそれだけ言い残すと飛んで去ってしまった。




ゴウカは河川敷を歩いていた。そんなゴウカの心中は決して穏やかではなかった。


「ダイヤモンド……あやつ、戦いを好まないようなそぶりをしておったのに」


先日のことがまだ許せないでいた。

キラの考えは闘いを望むゴウカと一致しなかったが、少なくともゴウカはキラの信念を嫌ってはいなかった。

こんな殺し合いの中でも己の信念を貫く姿勢に敬服すらしていた。


「なのに、不意打ちなどとは…」


その時、誰かの泣き声が聞こえた。

ゴウカはすかさずその場へ向かった。


見ると、前に子供を虐めていた高校生達がまた同じことをしていた。



「貴様ら、いい加減にせんか!」


「げっ、お前は!?」


高校生達はゴウカの姿を見ると一目散に逃げ出した。

ゴウカはそのうち一人を捕まえ、反省させるつもりで思い切り顔面を殴る。


ただ、ゴウカはあることを忘れていた。

ジュエラーとして戦う事で、身体能力が飛躍的に上昇していることを、ゴウカは失念していた。


高校生の顔面に拳がクリーンヒットし、思い切り地面を転がった。

鼻や口から血が流れ出し、ぴくりとも動かない。


周りの高校生達は不審がって倒れた男に集まった。

そして、そのうち一人が悲鳴をあげた。



「お、おい、死んでるぞ!」


「ば、馬鹿な!」


ゴウカが慌てて駆け寄ると、残った高校生達と後ろから見ていた子供達が一斉に逃げ出した。


「ひ、人殺し!」


「い、嫌だあああああ!」


「ああああああああ!」


「ママーぁ!!」


全員が悲鳴をあげながらその場から逃げていく。

ゴウカはこの事態を飲み込めず、立ち尽くしていた。

自分が、人を殺してしまった……? それも、ただの一般人を。



「違う…違うんだあああぁぁぁ!!!」


ゴウカの叫びが、虚空に消えていった。

その叫びを聞くものは、誰もいない。






テルは携帯電話の通話を切ると、テーブルに置いた。

今知らされた事態に、テルは堪えられなかった。

自分を抑える、事態を解決する方法は、もう一つしかなかった。



「キラ……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ