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20話:藍、あるがまま

キラはどうしようか迷っていた。

もちろん、他の誰かを殺す気など微塵も無いし、モンスターが誰かを殺すことを見逃す気も無い。


ただ、そうやって戦うことに迷い出したのだ。

昨日テルに言われた通り、それは他のジュエラーの願いの妨害にほかならない。

それが身勝手な欲望ならともかく、テルの様な場合、どうしたらいいのか分からない。



「…………」


「倉四季」


俯いて歩いていると、後ろから誰かが話しかけてきた。

振り返ると、アキラが近付いて来た。


「どうしたんだ? 暗い顔して」


「あの、テルの願いが……」


そこまで言った所で、キラの口が止まった。

勝手にテルの願いを言い触らしてはいけないと思ったからだ。

何かを察したアキラが出来るだけ優しく微笑みながらキラに話し掛ける。


「テルの願いでも知ったんだろう? 私は知らないが……やむを得ない、身勝手な理由じゃないんだろう?」


キラは頷いた。

テルは、身勝手な人間じゃない。優しい人だ。


キラも、同じ境遇に立ったら……立ったら……

殺せるだろうか。

自分は、家族の為に数人の人間を切り捨てられるだろうか。



(出来ない……)


それは、前々からテルに指摘されたキラの甘さだった。

キラは、家族と見知らぬ他人を天秤に掛けられても、どちらも選べず両方救えずに一人で後悔する。

そんな甘い人間だ、とテルはいつも評していた。


途端にキラは自分が怖くなった。

どうして自分は、真っ先に家族を選べないのだろう。

今までそんなことは気にしたことも無かった。

自分は普通で、ただの中学生だと信じ込んでいた。

その幻想も、この戦いが始まったことで崩れ落ちた。



「アキラさん。私、おかしいですか?」


「……? いや、まぁ多分な」


アキラはいきなりキラが変なことを聞いてくるので戸惑った。

キラは今、改めて自分の異常に気が付いた。


(自分の願いも持たずに戦う私は、やっぱり異常なんだ)



その時、二人の頭にキーンとした高い音が響いた。

モンスターが現れたのだ。


「行くぞ!」


「……あ、はい」


いつもなら率先してモンスターを倒しに行くのに、今日は珍しくボーッとしているキラをアキラは不思議に思いつつ、ゲートを探す。

そして、ゲートの前に立つとジュエラーに変身した。


「変身!」


「……変身」





キラ達がジュエルワールドに入ると、既にルビーが数体のモンスター達と戦っていた。


「私達も行くぞ!」


「……はい」


そうして一歩踏み出した瞬間、キラ達の周囲を爆煙が襲った。

キラは足を止め周囲を伺う。


煙が晴れると、遠くにユカリが立っていた。

大型の銃を投げ捨てると、キラに向かってニッコリと微笑む。


「ダーイーヤーちゃん♪遊ぼっ」


《スラッシュキラー》


斧を持つと、キラ目掛けて突進して来る。

アキラがキラの前に立ち、カードを使う。


《サモンキラー》


ガーネットカンガルーが現れ、横からユカリに殴り掛かる。

ユカリは拳を斧で受け止め、引き抜いたカードを腰に下げた魔導書に差し込む。


《サモンキラー》


ラビットアクアマリンが現れ、ガーネットカンガルーを突き飛ばす。

そして、ユカリは再びキラ目掛けて走り出す。


《ディフェンスキラー》


キラの周囲を光の竜巻が囲い、ユカリの行く手を阻む。

ユカリは取り合えずがむしゃらに斧をたたき付ける。



《タックルキラー》


ゴウカのタックルが数匹のモンスターを倒し切り、そのままキラのディフェンスキラーにぶつかる。

そして、とうとう光の竜巻は消し飛んでしまった。


キラは吹き飛ばされ、仰向けに倒れる。

アキラはすぐさま起き上がるが、キラは倒れたまま動こうとしない。


その時、強い風が吹き、四人は不穏な空気を感じた。

キラも起き上がり、周囲を見渡す。



そして、見つけた。

恐らく、この空気を出している存在を。




テルは、一歩一歩皆に向かって近付いて行く。

ある程度の距離で立ち止まり、カードを引き抜いた。

そのカードの絵柄は、藍色に輝く翼。


そのカードを引き抜いた瞬間、アメジストの剣が砕け散り、代わりにテルの左手に小型だが頑丈な藍色の盾が装着される。

そして、テルはゆっくりと、盾の裏側にそのカードを差し込んだ。



<《エターライト》>


エコーの掛かった電子音声が響き、その瞬間、テルの体が光に包まれた。

そして、さっきとは比較にならない強さの風が吹き、ゴウカ達は身構える。


風と光が止むと、四人はテルの姿に目を凝らした。




そこにいたのは、確かにアメジストだった。

ただ、その姿は大きく変わっていた。

軽量であることに代わりはないが、以前よりも強固にされた装甲。


その姿は、正に毅然とした騎士だった。

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